「金と肩書き」が欲しかった。学生起業の挫折から学んだ「土俵」の選び方
――まずは、GSに入社された経緯を教えてください。
田中 渓(以下、田中): 実は学生時代にシェアハウス事業で起業したんですが、そこで「土俵」を間違えたことに気づいたんです。不動産の世界は結局「金」と「肩書き」がモノを言う。大学生がプロデュースだけで入っても、古い文化のおじさんたちには相手にされず、薄い利益しか残らない。そこで、「一番早く肩書きと金が手に入るところ」を探して行き着いたのがGSでした。
――面接を53回も受けたというのは本当ですか?
田中: 本当です。僕は東大卒でも海外大卒でもない。採用側からすれば「本当に大丈夫か?」というリスクがある。だからこそ、部署全員と会う勢いで何度もチェックされました。当時は金融の知識なんてゼロでしたが、「何があってもやりきる覚悟」だけは示し続けましたね。
「自由」の裏側にある「責任」。42歳でエリートの椅子を捨てた理由
――GSで17年、最後は共同統括まで務められましたが、なぜ独立を?
田中: 会社が大きくなると、コンプライアンスやスピード感の欠如といった「見重(みおも)」な部分が出てきます。42歳という「中年の危機」に差し掛かり、「人生、金稼ぎだけでいいんだっけ?」と自問自答したのがきっかけです。今は独立して、自由な舵取りができるようになりました。でも、「自由の反対側には常に責任がある」。これを受け入れる覚悟さえあれば、前の会社では絶対に許されなかったメディア活動や趣味の音楽を活かしたラジオなど、やりたいことを全てビジネスに繋げられるようになります。
AI時代の生存戦略。20代は「SNS発信」を筋トレだと思え
――今の若者が、田中さんのような「強い個」になるためには何が必要でしょうか?
田中: 「発信活動」と「AI」は、絶対に20代のうちにやっておくべきです。 僕らおじさん世代は経験値はありますが、新しいツールを使いこなすスピードでは若者に勝てません。今の時代、日記でも何でもいいから毎日発信を続けること。これを僕は「筋トレ」と呼んでいますが、信用力やフォロワーという資産は、小出しにせず貯め続けると、いつか「やりたいこと」を実現するための巨大な武器になります。
――最後に、これからキャリアを築く若者へメッセージをお願いします。
田中: やりたいことが分からなくてもいい。まずは「非日常」な環境に飛び込んで、そこで徹底的にプロフェッショナリズムを叩き込まれる経験をしてください。特に今の時代、少しだけ人より長く働いたり、少しだけおじさん世代に可愛がられる工夫をするだけで、あっという間に目立てます。「まっすぐ、やりきる」。そんなシンプルな姿勢が、実は一番の近道だったりしますよ。
【編集後記】
圧倒的なエリート街道を歩みながらも、その根底にあるのは「泥臭い努力」と「冷徹な市場分析」だった田中氏。「53回の面接を突破する執念」と「SNSを筋トレと捉える継続力」。この二つを兼ね備えた者にこそ、真の「人生の舵取り」が許されるのだと感じさせられるインタビューでした。