「レッドオーシャンでは戦わない」東大卒・元銀行員が選んだマイナー思考
――石坂さんは東大から興銀という、誰もが羨むキャリアを歩まれていましたよね。
石坂: たまたま受験勉強という分野が得意だっただけですよ(笑)。銀行員時代は優秀な先輩や同期に恵まれましたが、28歳の頃にITの波が来ているのを感じて、この技術をベースに起業したいと考えたんです。
――そこで選んだのが「婚活」だったと。当時はまだ市場として未成熟だったのでは?
石坂: 当時は「婚活」なんて言葉もなく、結婚情報サービスは「怪しい」と思われていました。でも、だからこそ良かった。人材や不動産といった巨大なマーケットは大手競合がひしめくレッドオーシャンです。僕は 「人があまり目をつけない古い分野」や「日知(ニッチ)な分野」でナンバーワンを目指したい というマイナー思考なんです。
マッチングアプリの限界を見抜き「仲人」をプラットフォーム化
――IBJは現在、年間1万7,000組以上の成婚を生み出していますが、他社との決定的な違いは何でしょうか。
石坂: 多くのアプリは「マッチング」が目的になっていますが、実はそれだけでは結婚まで至るのは一部です。僕は、昔ながらの 「仲人のサポート」をITプラットフォームに乗せる という仕組みを作りました。
――アナログな「仲人」をDX(デジタルトランスフォーメーション)したわけですね。
石坂: その通りです。全国にある小さな結婚相談所をネットワーク化し、会員情報を共有できるプラットフォームを提供しました。これにより、1人で開業した相談所でも、最初から数万人規模の会員ネットワークを使ってお見合いを組むことができる。今では毎月100社近くが新規開業するほど、再現性の高いビジネスモデルになっています。
「孫正義」から学んだスピード感と、若者が成功するための「素直さ」
――かつてはYahoo! JAPANグループにいた時期もあったそうですね。
石坂: 3年間、Yahoo!の子会社の社長を務めました。そこで間近に見た孫正義さんのスピード感や、ダメだと判断した時の撤退の早さは大きな学びになりました。「くじを引く回数を増やす」ことが、成功への近道だと痛感しましたね。
――最後に、これから独立や起業を目指す若者へアドバイスをお願いします。
石坂: 若い人は賢いですが、経験値が足りない。だからこそ 「素直さ」が武器になります。 変なこだわりに囚われてブレーキをかけるのはもったいない。まずは現状を素直に受け入れ、組織や仲間の中でノリよくやっていく。それが結果的に、最短で経験値を高めることにつながります。
【編集後記】
石坂氏の戦略は、一貫して「市場の穴」を突き、そこに強固なプラットフォームを築くというものでした。 「AIや最新技術に群がるのではなく、農業やヘルスケアのような古い分野を最新技術でアップデートする方が勝機がある」という彼の言葉は、「競争を避けて勝つ」 ことを信条とするビジネスマンにとって、一つの究極の解と言えるでしょう。