「24時間戦えますか」の世界から、教育の道へ
――まずは、これまでのご経歴を教えてください。
森山博暢(以下、森山): 大学卒業後、ゴールドマン・サックスに新卒で入社し、21年間勤務しました。仕事内容は、国債などの債券を売買するトレーダーで、国の借金という巨大なマーケットを相手に、銀行や生命保険会社などの運用者の反対側に立って取引を成立させる役割を担っていました。
――21年! まさにゴールドマンの生き字引ですね。退職を考えたきっかけは何だったのでしょうか?
森山: 20年も同じ仕事を続けていると、ある種の「やり切った感」が出てきたんです。45歳という年齢を考えたとき、そのまま金融業界の「お偉いさん」になる道もありましたが、それは自分のキャリアの延長線上にすぎない。もっと「お金にならなくてもいいから、自分が本当にしたいこと」だけを抽出して生きてみたいと思ったのが始まりです。
「意思決定」を学ぶ場。Identity Academyの挑戦
――現在は「教育」の分野で活動されていますが、具体的にどのようなことを?
森山: 「Identity Academy」という、若者が「意思決定」を学ぶための場を運営しています。金融やビジネスを題材にしていますが、本当の目的はそこではありません。私がゴールドマンで得た最大の資産は、知識よりも「コミュニティ」の価値でした。
――コミュニティの価値、ですか。
森山: はい。ゴールドマン出身者が各界で活躍しているのは、厳しい環境を生き抜いたという共通の信頼があるからです。それと同じような、高い志を持つ若者が集まる「現代の寺子屋」のような場所をゼロから作りたい。模倣困難な、持続性の高いコミュニティを構築することが今の私の挑戦です。
若者に贈る「生存戦略」。プロフェッショナルであることの本質
――今の大学生や20代は、どのような意識でキャリアを築くべきだと思われますか?
森山: 自分が何をアウトプットし、価値として何を得るのかという「プロフェッショナルとしての思考回路」を徹底的に鍛えることです。ゴールドマンのような環境では、それが365日体感できます。また、一つのことを決めてやり抜くだけでなく、あえて嫌な思いをするような競争環境に身を置く経験も大切です。
――最後に、これから社会に出る方々へメッセージをお願いします。
森山: 現代はAIが正解を教えてくれる時代ですが、だからこそ「経験値を持つ人間の言葉」や「泥臭い人間力」が問われます。今の20代は、AIや発信活動という強力な武器を使いこなせる世代です。若いうちにしっかり自分のアップデートを続け、いつか「やりたいこと」が見つかったときに、それを実現できるだけの力を蓄えておいてください。
【編集後記】
「最強の男」と呼ばれた森山氏が語る言葉は、論理的でありながら、次世代への熱い想いに溢れていました。エスカレーターを逆算して歩くほどストイックな彼が、あえて「流されてみる」という自由を楽しんでいる姿が印象的です。彼が作る「コミュニティ」から、未来のリーダーが生まれる日はそう遠くないでしょう。