インタビュー

地方を救うのは、AI×ECの力だ。販売の現場から見出した、ネットショップの可能性

PROFILE
株式会社ALL WEB CONSULTING 代表取締役社長
江守義樹

アパレルから EC へ、原点は地方の危機感

若くして社会に飛び込んだ理由

親も親戚も事業を営んでいる、いわゆる経営者一族のような環境で育ちました。子どもの頃から「自分もいずれは経営者になるんだろうな」という感覚がごく自然にあって、それなら早く社会を経験した方がいいと思ったんです。だから周りよりも一足先に、社会に出ました。

最初はアパレルの世界に入り、地方のアパレルショップで販売の仕事をしていました。でも、地方の実店舗はどこも同じ構造的な課題を抱えているんですよね。人口減少にともなって商圏が縮小し、市場そのものが少しずつシュリンクしていく。そんな状況でした。私がいた2010年ごろは楽天市場が急成長していた時期で、会社から「君に任せたい」と声をかけられ、ほぼいきなりEC担当になったんです。

EC との運命的な出会い

実際にやってみると、これが本当に面白くて。少人数で年商数億円を上げているようなショップさんと実際に話をしたり、現場を見せていただいたりして、衝撃を受けました。実店舗でも少人数で大きな売上をつくっているところはありますが、ECは少数精鋭で運営でき、しかも売上の天井がない。そこが何よりの魅力だと感じたんです。まわりにもECに取り組む先輩や知人がいたので、無料でコンサルのようなことを始めてみました。すると、売上を大きく伸ばす店舗さんが次々と出てきて。このとき、自分は一事業者としてではなく、事業者を支援する側に回りたいと思うようになりました。

ただ、当時の私はアパレルの業種しか見てきておらず、それ以外の業種のノウハウがありませんでした。正直、自分の視野の狭さを痛感していました。本気で支援する側を目指すなら、もっとさまざまな業種を知る必要がある。そう感じました。どうせ挑戦するなら、あらゆる仕事が集まっている東京で勝負したい——そう考えて、単身で上京しました。

AI×ECが切り拓く、新しい支援のかたち

スタートアップから独立へ

東京では、EC専門のコンサルティング会社にスタートアップメンバーとしてジョインしました。そこで300サイトほどの売上向上支援やデータ分析を経験し、多種多様な業種の成功事例に触れることができました。そうした経験を通じて、自分自身の提案力や支援スキルをかなり深められたと感じています。そして、自分の手でもっと直接、事業者の力になりたいという思いが強くなり、独立して当社を立ち上げました。

「リソースがない」という壁をAIで壊す

今、当社が最も注力しているのが「AI×EC」というテーマです。コンサルティングや支援をしていて多いのが、たとえば改善案をご提案しても、スキル不足やリソース不足で、なかなか実行に移せないというケースです。やるべきことは見えていても、それを形にする人手や技術が足りない。そんな店舗さんが多いですね。

たとえば、ある事業者さんでは、商品登録を1万点行わなければならないのに、1名で運営しているために、1ヶ月に30商品ほどしか登録できないという状況でした。それが、AIを活用することでほぼ自動化できたんです。ECサイトの分析も同じです。本来は多大な学習コストや時間を要しますが、AIを使えば、誰でも分析ができるようになりますし、アウトプットの質も一定になる。いわゆる属人化を防げるんです。こうしたところに、AIが切り拓くECの未来を強く感じています。今では月に3〜4回ほどAI関連のセミナーに登壇していますし、AIツールも複数開発して無料で提供しています。

現場を知るからこそできること

ECのAI活用っていうのは、タスクの解像度が高くないとそもそも使えないんです。やったことのない業務を AIに指示するのは難しい。当社の強みは、私自身がネットショップを現場で運営してきた人間なので、どのタスクをどう自動化すれば本当に効率化できるかを具体的に落とし込めること。クライアントさんの会社に伺って、一緒に作業しながらAIを導入していくというスタンスが、他社との違いだと思っています。

売り込まず、見つけてもらう

情報発信を起点にした出会い

新しいお客様との出会いは、ホームページからの流入や、代理店様経由でのご紹介など、いくつかの経路があります。共通しているのは、いずれもこちらから強く売り込んで生まれたものではない、という点です。

私たちが一貫して大切にしているのは、自分たちの名前で、自分たちの言葉で価値を届けたいという思いです。だからこそ、役に立つ情報を発信し続けることで、お客様の側から見つけていただける——そんな体制づくりに力を入れてきました。

必要としてくれる人に、必要な処方箋を

当社の基本的な姿勢として、自分たちから強引に営業をかけることはありません。私たちが目指しているのは、困っている方に、本当に必要な処方箋をお出しする「医者」のような存在です。価値を感じてくださった方に見つけていただき、自然に生まれたご縁を大切にする。サービスに自信があるからこそ、必要としてくださる方のもとへ、ご相談は自ずと届くと思っているんです。

ありがたいことに、今は多くのお客様からご相談をいただける状況になっています。こちらから追いかけるのではなく、発信を通じて価値を知っていただき、必要なときに頼っていただける。そういう関係を、これからも大切にしていきたいと考えています。

地方の中小企業を救いたいという原点

後継者問題と向き合う現場

最近、地方で、ものづくりを手がけるクライアントさんのところへ伺ったんです。スタッフには高齢の方が多く、若い世代は都市部へ出てしまっている。経営者の方もご高齢で、事業を次の世代にどうつないでいくかという問題に直面していました。これは、地方の多くの中小企業が抱えている課題だと感じています。

だからこそ、人に依存しない仕組みを築くことで、少ない人数でも事業を続けられるようにしたい。そこに多少なりとも貢献できることが、当社の使命だと思っています。

日本のEC化率を、引き上げていく

ビジョンとして掲げているのは、現在10%程度と言われている日本のEC化率を引き上げていくこと。これこそが、当社の使命だと考えています。そのために私が目指しているのは、EC参入のハードルを取り除くことです。世の中には、スキルやリソースが足りなかったり、出店はしていても十分に運営できていなかったりする店舗さんが数多くいらっしゃいます。そうした方々の底上げをお手伝いし、ECを活用するプレイヤーを増やしていく。それによって、より便利な購買環境をつくっていきたいんです。

そうすることで、ユーザーの利便性が高まるのはもちろん、地方に埋もれている素晴らしい商品を、もっと多くの人に知ってもらえるようになります。それこそがECの持つ力であり、メディアとしての機能だと確信しています。いいものを持っていても、知られないまま埋もれているケースは本当に多い。課題を一つずつ解消し、適正に運営できる事業者が増えれば、自ずと日本のEC市場全体が成長していきます。まずは、ECを利用する人と流通額を底上げしていくこと。市場が大きくなることで、地方のECショップの売上がさらに伸びるという、良い循環をつくっていきたい。結果として雇用が生まれるなど、波及効果も大きいはずです。これは当社一社では成し遂げられないことなので、競合も含めた業界全体で大きなムーブメントをつくっていく。そうして、日本の未来を変えていける——今、私が最も力を注いでいるのは、そこなんです。

雇われなくても生きていける人を育てる

成長意欲がある人に全力でバックアップ

当社が社内向けに掲げている理念は、「雇われなくても生きていける人たちが集う場所でありたい」というものです。全員が経営者のように自立できる人を育て、ゆくゆくはそれぞれが独立しても、横のつながりで一緒に仕事ができる——そんなコミュニティをつくっていきたいんです。

だからこそ、成長意欲のある方には、セミナーの費用も書籍代もすべて会社で負担します。身につけたスキルは一生ものですから、そこには会社として惜しみなく投資しています。実際に、インターンから入ってそうした道を歩んでいるメンバーもいますし、インターン生が仲間になっていくという流れを、私たちはとても大事にしています。

若者へのメッセージ

若い方から、「どうすれば事業を起こし、会社として続けていけるのか」と聞かれることがあります。私が一番伝えたいのは、まず自分の理念を持つことです。私自身、お金儲けのために起業したわけではありません。自分たちの商品をいかに世界中の人に知ってもらうか——そこで課題を抱えている方々をサポートしたい、という思いが根っこにあります。理念や信念があると、それに共感してくれる人が集まってくる。すると、気がつけばいろいろとご相談をいただくことが増えたり、自然と仕事が舞い込んだりするようになるんです。

ただ、20代でいきなり「自分の理念は何か」と問われても、なかなか出てこないと思います。私がECに出会ったのも、30歳を超えてからでした。だから20代のうちは、とにかく数多くの打席に立つことが大事だと思っています。いろいろな人に会い、いろいろな場所へ行き、やりたいと思ったことにはまず挑戦してみる。大切なのは、その経験の量と質です。まず量をこなした人間だからこそ、質を高めていける。量をこなしていなければ、質は伴いません。多くの打席に立つなかで、自分が本当にやりたいこと、自分の理念や信念、そして果たすべき使命が、必ず見えてくる。私は、そう考えています。

編集後記

インタビューを通じて印象的だったのは、江守さんが一貫して「地方を豊かにしたい」という強い信念を持って行動されていることでした。アパレル店員として地方の実店舗の衰退を目の当たりにし、ECとの出会いによって問題解決の糸口を見つけ、今はAIという新しい武器でさらにその可能性を広げようとしている。「理念に人が集まる」という言葉を、まさに江守さん自身が体現していると感じました。就職活動を前に、何のために働くかを考え始めている学生のみなさんにこそ、ぜひ読んでいただきたいインタビューです。