秘書からエンジニア、そして起業へ
専業主婦から社会へ
実は私、もともとは専業主婦をしていたんです。そこから自分の力で生きていけるようになりたいと思い、まずは仕事をしようと社会に出ました。そこで、たまたま入社したのがシステム会社でした。なので、最初からプログラミングをしようとか、エンジニアになろうとか、サービスを開発しようとか、そういう思いがあったわけではないんです。しかも一番最初は秘書として入社していて。置かれた環境のなかで、目の前のことにいろいろ取り組んでいました。
秘書なのにSQLを書く。 叩き上げでエンジニアへ
私はゴルフをするので、ゴルフ仲間や昔からの知り合いなど人脈が多くて、お客様を会社に紹介することが度々あったんです。秘書なんですけど、紹介にとどまらず「それなら自分で営業から提案までやってみたら」という話になって。調査や提案の準備のためにSQLを書くくらいは、自分でできたほうが早いなと思ったんですよね。それでプログラミング教室に通い始めました。最初から理系だったわけではなく、必要になったことを一つずつ覚えて、現場で身につけてきた、いわば叩き上げです。
2015年、独立の道へ
そこからの展開は自分でも早かったと思います。システム会社に入社して約3カ月後の2015年に独立してCORINを立ち上げました。創業時は基幹システム開発を手がけていて、そこで培った技術力や開発力が今の弊社の土台になっています。創業当初は、以前一緒に働いていた仲間たちに声をかけるところから始まりました。「一緒にやるよ」と言ってくれるメンバーが少しずつ集まり、現在は30名弱の組織になっています。
現場に足を運ぶ提案スタイル
1週間、倉庫に通った
基幹システムの開発をしていたころは、受注するかどうかもわからない段階で、1週間くらい先方の倉庫を見に行ったり、レジの中身を見せていただいてどんな運用をされているか確認したりしていました。細かい業務まで最初からヒアリングして、提案に落とし込む。いかにお客様に寄り添ってご提案するかを大事にしていたことが、お話を聞いていただけるきっかけになったと思います。パッケージや仕組みに業務を合わせていくという考え方もあるなかで、私たちは細かな業務まで理解し、お客様に合わせて提案することを大切にしてきました。こうしたお客様に寄り添う姿勢が、今のCORIN、そしてTENCOの原点になっているのかなと感じています。
アプリ開発の常識を変える「TENCO」
アプリ開発はハードルが高い
現在は、スクラッチによるシステム開発などの新規受注は行っておらず、アプリ開発パッケージ「TENCO(テンコ)」を事業の中心としています。アプリ開発って、実は面倒なことが多いんですよね。たとえばAndroid(アンドロイド)は端末もバージョンもたくさんあります。Webサイトなら公開ボタンを押せば済みますけど、アプリはGoogle(グーグル)やApple(アップル)のストア要件をクリアする必要があって、その要件も日々変わっていく。ほかのシステム開発よりもハードルが高いんです。
二極化する業界の中間に
今のアプリ業界は、テンプレートにはめていくパッケージ型の会社さんと、大手システム会社のように一からガッツリ作る会社さんとに二極化しています。弊社はその間のポジションです。裏側の管理画面やメニュー、処理を呼ぶ部分は共通化しつつ、アプリのフロントはお客様に合わせて自由に作っていける構成にしています。改修した部分のテストや品質担保は必要ですけど、最近はAIも活用しながら改修範囲・影響範囲をより詳細に調査し、お客様に合わせたアプリを作れる。そこが弊社の強みです。
売れるポイントは企業ごとに違う
この立ち位置を選んだのは、創業時からスクラッチ開発で培ってきた技術力や開発力、それに私自身がエンジニアとして現場で培ってきた経験を活かしたかったからです。アプリは、作ること自体が目的ではないと思っています。その企業らしさや、その先にいるお客様に何を届けたいのかまでアプリに落とし込んでいくことが大切です。だから、すべてをテンプレートにはめるだけではなく、共通化できるところは共通化しながら、それぞれのお客様にとって大切な部分はきちんと作り込めるサービスにしたいと考えました。弊社のお客様はアパレルが多いですけど、それ以外の業種やメーカーのお客様もいらっしゃいます。売上が上がるポイントも、その先のお客様がワクワクするポイントも、会社ごとに違うんですよね。基本は共通でも見せ方を変えて売上や利益を伸ばし、その先のお客様にもファンになっていただける。そんなサービスを目指しています。
「思想駆動型」で描く未来
頭脳は人の経験から生まれる
TENCOが掲げているテーマの一つが「思想駆動型」です。AIによって効率化できる部分は、これからどんどん増えていくと思います。一方で、「この会社は何を大切にしているのか」「その先のお客様にどんな体験を届けたいのか」といった根っこの部分は、人の経験や対話から生まれるものだと思っています。だからこそ私たちは、技術だけを先行させるのではなく、お客様の考えや想いを引き出し、それをサービスに落とし込むことを大切にしています。その部分を人が担い、AIやテクノロジーで実現するスピードや品質を高めていく。そんなものづくりを目指しています。
選ばれる存在を目指す
これまでさまざまな企業のアプリ開発・運用に携わってきました。今のところ、ほかの事業に手を広げることはあまり考えていません。まずはTENCOをより多くのお客様に使っていただき、「アプリを作るならCORIN、TENCO」と思っていただけるポジションを確立したいと考えています。提供の仕方も、アプリ、LINE(ライン)ミニアプリ、その両方という3つがあります。両方作りたいお客様には両方構築しますし、LINEミニアプリで十分ということであればLINEミニアプリをしっかり作る。お客様に応じて柔軟に展開していきたいですね。
学生のみなさんへ
カトリック校のギャルだった
私は小学校から大学までカトリックの学校に通っていました。学校はすごく厳しかったんですけど、学生時代はいわゆる昔のギャルでした。茶髪がダメと言われたらオレンジにしてみたり(笑)。決められた枠にそのまま収まるタイプではなかったと思います。でも今振り返ると、カトリックの学校で学んだ、他者への誠実さや丁寧さ、人が見ていないところでも努力することは、自分のなかにずっと残っていました。大人になって仕事をするようになってから、こういうことが大事なんだなと思い出しながら身につけていきました。
軌道修正は自分次第
どんな方向に振れても、結局は自分次第で軌道修正できると思っています。反対方向に行っていた自分も、カトリックの真面目さも、全部自分の糧になっているので。今思っていることややりたいことは、やるべきだと思います。ダメだったら、また軌道修正すればいい。仕事に限らず結婚でも何でも、まずは挑戦してみないと始まりません。自分で0を1に変えて、ダメなら次に切り返せばいいんです。そういう姿勢を大事にしながら進んでいけると、いいんじゃないかなと思います。
全力で挑める場所を選ぶ
弊社はこれまで少数精鋭で経験者採用を中心にしてきましたが、今年初めて新卒採用をおこないました。経験者の場合はスキルに加えて、途中で投げ出さないか、最後まで誠実に対応できそうかを重視してきました。新卒だと経験がないのは当然ですけど、誠実に取り組めるか、最後まで逃げない・諦めないかは同じように大切にしています。学生のみなさんも企業を選ぶ立場なので、面談で少しでも自分に合わないと感じたら、ほかの企業を目指すのも一つの選択肢です。大切なのは、自分が全力でコミットできる環境を見つけること。もし第2・第3志望の企業になったとしても、まずは全力で目の前の仕事に向き合ってみることが、自身の成長につながると思います。
編集後記
専業主婦から秘書としてシステム会社に入り、必要に迫られてSQLを学んだという中村さんのお話に、キャリアは一直線でなくていいのだと勇気をもらいました。私自身、学生起業に挑戦するなかで、専門外の領域にどこまで踏み込むべきか迷うことがあります。中村さんは「何でもやってみるタイプ」とおっしゃる一方で、受注前から1週間倉庫に通うような地道な行動を重ねてこられた方でした。カトリック校のギャルだった学生時代の経験が、今の「寄り添う姿勢」につながっているのも印象的です。自分の可能性に蓋をせず、まず0を1にしてみる。その言葉を胸に、私も挑戦を続けたいと思います。