創業の経緯
バーテンダーから不動産業界へ
もともと大学では機械工学を専攻していました。理系学部を選んだんですけど、正直に言うと、入ってみたら機械にまったく興味を持てなくて。大学1回生の頃からアルバイトをしていたレストランバーでバーテンダーの仕事を続けていて、そのまま26歳までバーテンダーをしていました。
その後、マンション販売に特化した当時ジャスダック上場の不動産会社に就職しましたが、経理上の不正が発覚したことをきっかけとして業績不振となり、2年で退職を決意しました。
対法人不動産からJACへ
そこで、対法人営業の経験を積みたいと考え、2社目は法人向け不動産仲介会社に転職しました。
そこでは、賃貸オフィスの仲介業務をメイン業務としながら、並行して同社の海外事業室長(とはいってもメンバーは実質私だけですが…)として、O-BIC(大阪外国企業誘致センター)と連携し外資系企業の日本法人用オフィスの手配などを担当し、3年半従事しました。
実はここでのお客さまの1社が、次に転職することになるJAC Recruitment(ジェイ エイ シー リクルートメント)という人材紹介会社でした。当時、名古屋支店と三宮支店の移転を担当したのですが、その支店長に「同じ仲介をやるなら、もっと事業運営の核に近い人の仲介をしないか」と誘われ、人材紹介業界への転身を決意しました。
JACでは、製造業のなかでも化学に特化したチームに配属されて、2年ほどプレイヤーとして働いたあと、リーダー職・マネージャー職に移行しました。複数チームの立ち上げを担当し、最後はコンシューマー領域のチームの立て直しを任されていました。
大手紹介会社への疑問
創業の経緯としては、前職が人材紹介に特化した会社だったことが大きいです。
人材紹介という枠を飛び越えた人事組織のサポートを依頼されることが増えるなかで、人材紹介特化型の会社ではその声に対応しきれなかった、というのが1つ目の理由です。
もう1つは、大手紹介会社のあり方に対する疑問です。
私たちは中途領域における人材紹介をメインで担当していたのですが、大手紹介会社はどうしても利益追求型になってしまって、求職者や採用する企業がはたして幸せになるような紹介につながっているのか、非常に疑問に感じていました。
わかりやすく言うと、求職者に合わない会社やブラックな会社でも利益のために人材を斡旋してしまうことがあるんです。業界を細分化しているぶん、担当できる企業がある程度決まってしまうので、グレーな企業を担当している人はグレーな企業に紹介せざるを得ない構造になっているんですね。
SIEC創業へ
こうした課題を解消するために、求職者と採用企業の双方が幸せになるような人材紹介を進めたいという思いと、人材紹介にとどまらず人的課題の解消に向けたサービスを広く展開したいという思いから、2018年にSIECを立ち上げました。
事業内容と強み
人材紹介にとどまらない
弊社の事業は、中途領域における人材紹介をメインの軸としながら、ここ5年ほどで業界内でも需要が増えているRPO(リクルートメント・プロセス・アウトソーシング)を2つ目の柱として展開しています。クライアントの採用業務や人事業務の一部を代行するもので、オーダーによっては人事組織をより強化するためのコンサルティングやアドバイザリーに近い動き方をすることもあります。
3つ目の柱は、同業界である人材紹介会社向けのコーチングです。昨今はAIマッチングも当たり前におこなわれるようになっていて、機械的に求職者へ紹介がおこなわれるケースも増えています。その先には不幸な転職を減らしたいという思いがあり、1社でも質の高い人材紹介会社を生み出すために、このコーチング事業をおこなっています。
この3本を軸としながら、業務効率改善など様々なサービスを提供する企業とアライアンスパートナーの契約を結んで動くこともあります。クライアントの組織課題や経営課題の解消に向けたサービスを、HR(ヒューマンリソース)というカテゴリーのなかで網羅的に提供できることが、弊社の最大の強みだと思っています。人材紹介だけにとどまらないという意味で、「HRソリューションサービス」という呼び方をしています。
早期離職0の理由
労働者数が減少していくこと自体は、もう当たり前のように認知されていることだと思います。そのなかで各社にとって重要になってくるのが、獲得した人材が短期で離職してしまうことをいかに防ぐか、という点です。人材そのものがより希少になっていくぶん、この点は今後さらに重要になってくると思います。
人材紹介業界では、紹介した人材が早期で離職してしまった場合、返戻金(返金)を 人材紹介会社が支払うケースが多いんですけど、弊社では返戻金の対象になる6か月以内の早期離職が、創業以来0件です。もちろん業界によって離職のしやすさに違いはありますが、労働人口が減っていくなかでも中長期的な就業を実現できれば、私たちが目指す世界観は担保できるのではないかと考えています。
実態を伝える徹底ぶり
早期離職を防ぐうえで一番わかりやすいのは、働き方の実態をしっかり伝えることだと思います。
不幸な転職につながってしまう原因の1つに、紹介会社が働き方の実態や配属先の上司がどんな方なのかについて、あまり説明していないケースがあることが挙げられます。解像度が低いまま入社・配属されて、合わない上司に当たれば、誰でも辞めたくなりますよね。
良い悪いというよりも、実態をきちんと伝えることが大切だと思っています。
たとえば体育会系の組織も、好きな人にとってはプラスですし、苦手な人にとってはマイナスになる。そこは人によって受け取り方が変わる部分なので、私たちのようにあいだに入る立場の人間が、実態をしっかり伝える必要があると思うんです。
あわせて力を入れているのが、クライアント企業の業界内での立ち位置や競合との違いを徹底的にリサーチすることです。求人票を渡すだけの紹介会社が多いなか、求人票だけでは見えてこない事業の独自性や魅力を訴求できることも、弊社の強みだと思っています。
めざす未来
組織課題のハブになる
今後は、HRソリューション型のサービスをさらにブラッシュアップして、組織課題を感じたタイミングで弊社に相談さえいただければすべて解消できる、という状態を目指していきたいです。
地方にも正しい雇用を
もう1つ、特に地方企業では正しい雇用が生まれる機会自体が少なくなってきているので、そうした仕組みをつくっていきたいという思いもビジョンとして持っています。労働人口の需給バランス自体を変えるのは難しいことですが、就業が継続する場を増やすことで、その状況に対応していきたいと考えています。
学生へのメッセージ
表層ではなく商流をみる
弊社にこれまで来てくれた学生インターンにもよく伝えているんですけど、雰囲気やキーワードだけで企業を選ばないことが大切だと思っています。対象の企業がどのようにお金を得ているのか、どんなサービスをどんな顧客に展開している会社なのかを正確に把握することで、自分が本当に興味のあるカテゴリーが見えてくるはずです。
商流をきちんと理解しないまま、サービスの表面だけを見て入社してしまうと、入社後にお客さまへの興味が持てなかった、ということが起こり得ます。たとえば一見テックのサービスを展開していて華やかに見える会社でも、実際のお客さまは地方自治体などの官公庁がメインだった、というようなケースです。動きの遅さなど、思っていた仕事や事業とのギャップが生まれてしまう原因になりかねません。
そのビジネスの潮流がどう動いているのかをしっかり理解することが、就職活動の1つのきっかけになるのではないかと思います。
編集後記
今回のインタビューを通じて、企業選びで大切なのは「見た目」ではなく「中身」なのだと改めて感じました。私自身、就職活動ではキラキラした言葉に目を奪われがちですが、立岡さんの「商流を理解する」という視点は、まさに本質を見抜くための考え方だと思います。早期離職0件という数字の裏にある「実態を伝える」姿勢にも、企業と求職者の双方に誠実であろうとする覚悟を感じました。就活生のみなさんにも、ぜひ企業のビジネスモデルまで踏み込んで見る視点を持ってほしいです。