インタビュー

夢に2度破れた私が、日本人が世界で輝く未来をつくろうと決めた理由

夢に2度破れた私が、日本人が世界で輝く未来をつくろうと決めた理由
PROFILE
永学堂株式会社 代表取締役
狩俣 慶人

俳優を夢見た20代前半

俳優になるため広告営業へ

私は俳優養成所で、舞台や本格的なお芝居をずっとやっていました。21歳の頃には、ロバート・デ・ニーロさんやアル・パチーノさんも学んだ「リー・ストラスバーグ」という演技メソッドの学校がニューヨークにあると知り、そこへ行こうと思ったんです。そのためにはお金を貯めなければいけないと考えて、23歳で広告代理店の営業会社に入りました。これが私のビジネスの一番最初のきっかけです。

28歳で2つの夢が破れた

営業はもちろん、マネジメントにも取り組んで、部下を増やしながらチームをつくっていきました。独立支援のモデルの会社で、成績優秀者が支店長になって独立していく流れだったので、お金を稼いでからアメリカへ向かう方が可能性も広がると考えていたんです。ただ、5年が経って28歳になると、年齢とともに芸能の可能性は少しずつ狭まっていきました。さらに、私自身もメンタルを崩し、その会社で独立する道も断念しました。

追いかけてきた2つの夢を同時に失い、これからどうすればいいのか、まったく見えなくなりました。

コーチングとの出会いが転機に

履歴書に書けることがない

大きな夢を描くよりも、ちゃんと就職しておけばよかったかなと後悔もありました。そこで、サラリーマンとして働こうと就職活動を始め、履歴書を書こうとしたのですが、資格の欄に自分を売り込めるものが何も書けなかったんです。

何をやるにしても資格は必要だなと思い、過去を振り返りながら、自分がどんな仕事をしたいのかを考えました。

営業ではトップセールスでしたし、マネージャーとして率いたチームの売り上げも高く、実績はありました。

人を育てる仕事を選んだ

ただ、自分が売るよりも、人を育ててできるようになってもらうほうが、自分もうれしいですし、成長した部下も喜んでくれます。そこで、人に教える仕事に就きたいと考えました。当時の私の知識だと、学校の先生やコンサルタント、NLPのような資格がありました。人の相談に乗るだけのビジネスが成り立つとは聞いたこともありませんでしたが、できたらいいなと思い、会社員をしながらコーチングの学校に通い始めました。

副業から独立、そして法人化へ

いくつかのコーチングの学校に通う中で、「これはすごい可能性があるな」と感じました。副業として続けるうちにクライアントがどんどん増えて、そのまま独立したのが一番最初のきっかけです。その後は、講座をおこなったり、自分でスクールをつくったりしながら、BtoBの企業研修にも広げていきました。会社にしようと決めて、2017年に法人化し、今年で10年目になります。弊社は業務提携や業務委託を中心に、少数精鋭で運営していて、対象がスポーツ選手や芸能人の方も多く、紹介と口コミで成り立っています。

トップアスリートと向き合う覚悟

結果にフルコミットする

アスリートのメンタルコーチングで、私が大事にしているのは、結果にフルコミットすることです。

もちろん、選手の気持ちに寄り添うことも大切です。その上で、トップアスリートの世界では最終的に結果が求められます。だからこそ、目の前に見えている課題だけではなく、その本質を捉え、望む結果につなげるために何が必要なのかを考え、徹底的に向き合います。

私自身も、選手と一緒に結果を目指す当事者であるという意識を持っています。選手が目指す場所にたどり着くために、自分にできることをすべてやる。その覚悟を持って関わることが、私のコーチとしてのスタンスです。

本質から問いを立てる

フィジカルを動かしているのはメンタルです。どれだけ技術や体を鍛えても、考え方や心の状態によって、本番で発揮できる力は変わります。だからこそ、メンタルも技術やフィジカルと同じように、トレーニングする必要があると考えています。

私が大切にしているのは、表面的に見えている課題だけで判断しないことです。「何が詰まっているのか」「本当の原因はどこにあるのか」と問いを重ねながら、本人もまだ気づいていない本質的な課題を一緒に見つけていきます。

レスリングの選手をサポートしたときも、最初は競技のルールを知らないところからのスタートでした。競技の枠にとらわれず、本質や原理原則から考える。それが私のアプローチです。

腑に落ちれば人は動く

本質的な課題が見えてくると、自分が何に取り組むべきかが明確になります。「なぜこれをやるのか」「何を変えれば成長できるのか」が自分の中でつながり、腑に落ちる。そこまでいけば、人は自ら動き始めます。

私が目指しているのは、選手を外から動かすことではなく、本人が納得し、自分の意思で行動できる状態をつくることです。

競技が変わっても、本質的な課題を見極め、必要な視点やアプローチを見つけ、結果につなげていく。この再現性も、私のコーチングの強みだと考えています。

日本人が世界で活躍する国へ

手段はコーチングでなくていい

私はコーチングそのものを広めたいわけではなく、日本人がもっと世界で活躍してほしいんです。スポーツに限らず、さまざまな分野で「日本人ってすごいよね」と言われる人が増えてほしいと思っています。そのために大切なのは、一人ひとりが持っている力を最大限に発揮すること。その手段のひとつがコミュニケーションだと考えています。問いかけによって考えを引き出し、自分で考え、自分で動ける人が増えていく。もっといい手段があれば、それでもかまいません。

憧れが連鎖する国にしたい

世界で活躍する日本人が増えれば、その姿を見て憧れる人も増えていくと思います。スポーツでも、ビジネスでも、芸術でも、同じ日本人が世界で活躍している姿を見るとうれしくなりますよね。若い世代が「あんなふうになりたい」と思い、その姿に刺激を受けた大人も「自分もまだやれる」と思う。誰かの挑戦や活躍が、次の誰かを動かしていく。そんなふうに憧れが連鎖し、挑戦する人が次々と生まれる国にしていきたいと思っています。

アスリートから教育現場へ

アスリートとアーティストの影響力

いまはアスリートのメンタルコーチングを中心に、世界で活躍する選手たちをサポートしています。同時に、俳優やモデル、クリエイターといったアーティストのサポートにも広げています。アスリートとアーティストでは、影響を与える層も少し違います。それぞれの分野で活躍する人たちが変化し、結果を出すことで、その先にいる多くの人にも興味を持ってもらえると思っています。

トップから社会へ広げていく

実績が積み重なると、そこから企業にもつながっていきます。実際にスポンサー企業などから、経営者や幹部にも取り入れたいと声をかけていただくことがあります。影響力のある企業がコーチングやコミュニケーションの価値に注目し、組織の中に取り入れていく。そうした動きが増えることで、少しずつ社会にも広がっていくと考えています。

コミュニケーションを義務教育の教科に

その先に描いているのが教育です。最終的には、国語、算数、理科、社会と同じように、コミュニケーションを学べる環境をつくりたいと思っています。それは人との関わり方だけではなく、自分自身とのコミュニケーションも含みます。自分と向き合い、夢中になれるものや本気になれるものを見つけ、自分の力をどこに向けるのかを考える。社会に出てから必要とされる力だからこそ、もっと早い段階から学ぶ機会があっていいと思うんです。

子どもたちが自分の力を未来に向けられるように

コミュニケーションを学ぶことで、自分の気持ちを理解したり、相手のことを考えたり、困ったときに「助けて」と言えたりする子どもが増えていく。自分が夢中になれるものを見つけ、そのエネルギーを未来に向けられるようになれば、いじめや自殺といった問題にも、いい影響を与えられるのではないかと考えています。

そんな未来をつくりたいと話していると、共感して協力してくださる方が増え、新しいつながりも生まれています。

就活に悩む学生へ

1社目で人生は決まらない

いい大学に入ったのに就職がうまくいかず、人生が終わったように感じてしまう人もいるかもしれません。私も大学生の頃はそうでした。でも、社会に出て10年、15年経ってから「ここじゃなかった」と新しい道を選ぶ人もいます。20代は何度でもチャレンジできる時期です。今の状況で人生がすべて決まってしまうと思っている人がいたら、そんなことはないと伝えたいです。

入社をゴールにしない

大切なのは、どの会社に入るかだけではなく、そこで何をしたいのかだと思います。「就職できた」という喜びがあっても、その先にやりたいことがなければ、いつか迷うときが来るかもしれません。途中で辞めることも、別の道を選ぶこともあります。今まさに挫折感や自信のなさを感じていたとしても、そこから人生を変えていくチャンスはいくらでもあります。

朝顔が教えてくれたこと

挫折やネガティブな経験は、できれば避けたいものです。でも私は、そういう経験も後から人生を豊かにしてくれると思っています。朝顔は、ずっと光を当てているだけでは花を咲かせず、夜の暗さや気温の変化を一定時間経験することで、花を咲かせる準備が進むと言われています。光だけが成長に必要なのではなく、暗闇の時間にも意味がある。人も同じで、うまくいかない時間があるからこそ、その後に見えるものがあると思うんです。

挫折も人生の面白さになる

映画や物語も、最初から最後までずっと成功しているだけでは、心を動かされる物語にはなりにくいですよね。人生も同じで、うまくいかなかった時間は、過去のマイナスではなく、いつか自分の人生をつくる大切な要素になる。私自身、そう思えるようになったのは30代になってからでした。20代の頃にはわからなかった「好きなことをやった方がいい」という言葉も、今ならよくわかります。

「やってみたい」と「やり続けたい」は違う

やってみたいことと、やり続けたいことは違うと思っています。私は俳優を本気で目指しましたが、今から俳優として売れるチャンスが来ても、おそらくやらないと思います。振り返ってみると、私にとって俳優は「やり続けたいこと」ではなく、「やってみたかったこと」だったんです。

でも、あのとき挑戦していなかったら、今でも「あのときやっておけばよかった」と言っていると思います。実際にやったからこそ、自分にとって何が大切なのかもわかりましたし、その経験も今につながる大切なピースになっています。

人生は、小さなピースが積み重なって、いつか一枚の絵になっていくものだと思います。だから、何かに心が動いたら、まずはやってみる。その経験がどこにつながるかは、ずっと後になってからわかることもあります。そんなピースを、20代のうちにたくさん集めてほしいと思っています。

編集後記

就職活動を前に、周囲と自分を比べて焦ってしまうことが増えていた私にとって、狩俣さんの「20代は何度でもやり直しがきく」というお話は、肩の力が抜ける言葉でした。俳優の夢にも営業での独立にも一度は破れた経験が、今の「やり続けたいこと」につながっているというお話には、とても説得力がありました。朝顔のたとえも印象的で、うまくいかない時間は無駄ではなく、花開くために必要なのだと感じました。私も挑戦する中で壁にぶつかる日があると思いますが、衝動を大切にしながら、面白い人間になれるようさまざまな経験に挑戦していきます。