インタビュー

「好きなことだからこそ、一歩踏み出せる」MOTA代表・佐藤大輔が語る、二度の起業と再建の物語

「好きなことだからこそ、一歩踏み出せる」MOTA代表・佐藤大輔が語る、二度の起業と再建の物語
PROFILE
株式会社MOTA 代表取締役
佐藤 大輔

「MOTA車買取」サービスサイト:https://autoc-one.jp/ullo/
note公式アカウント:https://mota-note.com/

起業家になるまでの道のり

祖父の背中に憧れて

祖父が会社をやっていて、それを見て育ったので、起業したいという思いは幼少期からありました。自分主体で何かをつくって、リーダーシップを持ってやっていくというのが、結構好きだったんですよね。面白いものを見つけたら「これ面白いよ」とみんなに紹介するのも好きで、そういうところも影響しているのかもしれません。

一歩踏み出せなかった学生時代

学生時代は、ちょうどWindowsが出てきて、インターネットの普及とともに、将来の巨大なITベンチャー企業が次々に台頭してきた時代でした。発明すればいけるんじゃないか、というような雰囲気があり、私もアイディアをいろいろ考えていたんです。しかし、簡単なコードでWebをつくるくらいはできるのですが、プログラミングのハードルが高かったのと、どうやって営業したらいいかわからなかったのです。そこで一歩踏み出せずにいた学生でした。

内定前に企画書を送り続けた

大学では金融ゼミにいたので、周りはみんな銀行に行くという流れでしたが、私は「絶対に違う道に進みたい」と考えていました。将来の起業に繋がるような環境を探していたところ、2001年、インターネット世代の「新卒第1期生」を募る求人があり、そこへ飛び込む形でキャリアをスタートさせました。

内定式では「企画の部署で、Webビジネスの基礎を学びたい」と伝えたのですが、「入社後3〜4年は営業をやってもらう」と言われてしまいました。数年も待てないと思った私は、内定式後の懇親会で役員の名刺をいただき、入社までの半年間、数十回以上企画を送り続けることに。もちろん役員の方から返信はありませんでしたが、入社後の研修を経て、6月末の配属発表で希望の企画部門に入れてもらうことができました。

紙媒体の広告モデルに衝撃

企画部門に入って驚いたのが、当時紙だった求人媒体のビジネスモデルです。雑誌1冊まるまる広告のようなもので、1ページ数百万円。それが何百ページもあるので、巨額の資金が動いていました。ネットで課金するというモデルが、これから当たり前になっていくと感じて、改めて自分でも会社をつくろうと思うようになりました。

二度の起業と売却経験

バイク好きが集まって起業

大学時代の友人で、1人は人材系企業に、もう1人は私と同じ会社で働いており、そこにエンジニアも加えた4人で会社をつくりました。最初は人材や飲食店系のサービスなど、いろいろなアイディアを検討したのですが、なかなか一歩を踏み出せなかったです。

事業に対して想いがないと起業する熱量が生まれない、ということに気が付いたんですよね。そこで「自分たちが心から熱中できる体験」を原点に探した結果、注目したのが4人とも乗っていたオートバイでした。自動車のメディアは当時からありましたが、オートバイのメディアはほとんどなかったんです。夜中までサイトをつくり、バイクで営業に回って、という日々の中で、最初の受注が1,000万円ほど取れました。その後、黒字にもなり、外国のオートバイメーカーからメディアの立ち上げ依頼も来るようになりました。

28歳で会社を売却

事業が大きくなってきたころ、ベンチャーキャピタルやファンドから買収の話が来るようになりました。最初は「大切な事業を売りたくない」と思っていたのですが、条件を聞くうちに、自分たちだけで事業を大きくしていくのか、それとも学びやシナジーの多い企業と組む方がよいのかを考えるようになりました。実績のあるファンドだったので、そこから学べることも多いだろうと思い、28歳のときに売却を決断しました。

大企業を経て、二度目の起業と事業売却

売却後もそのファンドの会社に残り、200名ほどの組織で100名規模のチームを任せてもらいました。上場を目指していたのですが、リーマンショックが起きたことで断念。その後、もっと大きなフィールドで挑戦したいと思い、私自身は人材系の大手企業に転職し、大きな金額を動かす事業を学びました。数年経ち、もう一度起業しようと、インバウンド向けの宿泊マッチングサービス「トラバース」を立ち上げました。

これがなかなかうまくいかず苦労もしましたが、広告事業なども始めて、ようやく黒字化しました。そのタイミングでまた買収の話が来て、37歳のときに二度目の売却をしました。

MOTAへの参画と再建

累積赤字数十億円からの再建

二度の売却を経験したことで、どこか慢心し、失敗を恐れて小さな挑戦に逃げていた時期がありました。そんな状況に物足りなさを覚えていたとき、当時のオートックワン(現MOTA)から経営に携わってほしいという話が来たんです。40代からの人生後半戦で、何かを変えられるラストチャンスかもしれないと思い、引き受けることにしました。

とはいえ、実際は大変なスタートでした。累積損失はおよそ数十億円、毎年数億円の赤字が続いていて、社員数も年々減少傾向。前任からの引き継ぎで、社内では「佐藤大輔って誰ですか」という反応からのスタートでした。

特別派手なことはせず、地道に黒字化を目指す方針を決めていきました。また、以前から信頼していた方にもパートナーとして入ってもらい、着実に実績を積み上げてくれたことで、就任初年度から黒字化を実現できました。黒字になると社内の空気も変わり、そこから優秀な人を少しずつ呼び込めるようになっていきました。

「世界中に、もっとフェア・トレードを。」

「フェア・トレード」の意味

世の中には「買う」サービスがたくさんあります。ECモールも通販サイトも、旅行予約サイトも基本的には買う体験を提供するものです。一方で「売る」という体験は、あまり整備されていません。最近はネットオークションサイトやフリマアプリのようなサービスもありますが、家を売るのにフリマアプリを使う人はいないですよね。車や不動産のような大きなものは、一括査定などのサービスがあっても、まだユーザー側にとって不便や不利益が残っていると感じていました。

もう一つ、私がずっとWebとマッチングの領域をやってきて思うのは、「ユーザーファースト」を突き詰めすぎると、今度は参画してくださる企業が付いてこられなくなるということです。例えばユーザーの利便性ばかりを追求して企業側の負担を強いると、良い事業者が撤退してしまいます。結果として選択肢やサービスの質が落ち、最終的にはユーザーも離れていってしまう。ユーザーと企業、両方にとってのバランスが大切で、それを目指すのが「フェア」という言葉に込めた思いです。

現場の声が経営を変える

私たちが大切にしているのは、社内で「チェンジマネジメント」と呼んでいる考え方です。お客さまの声が経営を動かし、会社を変えていく。この循環を、社員の成長にもつながる仕組みとして大切にしています。
もう一つ、「ミッションマネジメント」という考え方もあります。現場で聞いたお客さまの声を自分の使命として経営に伝え、商品やサービスの改善につなげていく。これが、私たちが実践しているミッションマネジメントです。

経営者としての哲学

「視野の集中と拡張」を使い分ける

事業で大切にしているのは、まず「やりきる」ことです。途中で投げ出さない。そしてもう一つ、新規事業で特に大事だと思っているのが、「視野を狭く持つ時と広く持つ時を使い分ける」ことです。

形になっていないアイディアは、ツッコミどころだらけです。iPhoneですら「物理キー(数字を押すボタン)が必要でしょう」と言われていたとのことです。スタート時から100%のアイディアは実現しません。だからこそ最初はリーダーの熱狂的な思い、視野狭窄が必要だと思います。その一方で、ローンチ後に顧客の声が届き始めたら、今度は視野を広げて柔軟に改善していかなければなりません。この切り替えができずに、立ち上げた事業への思い入れが強いあまりに視野を狭めたまま突き進んでしまうことで、事業が伸びなかった例を見てきました。

これからの展望

売上1,000億円へ、新たな挑戦

ビジョンとして掲げているのは、2030年に売上1,000億円という目標です。現在の100億円から数年で10倍にしていく必要があります。これまでの自動車領域に加えて、2024年からは不動産にも進出しました。そして今後、私が新卒時代から挑戦したかった人材領域にも参入していきます。

不動産を選んだ理由は、自動車と市場の構造が似ているからです。家を売るという経験は人生に一度あるかどうかで、適切な金額を知らないまま売却してしまう人がいる一方、買い手である不動産会社は日常的に取引を行う『プロ』です。ここに明確な情報の非対称性があり、解決したい課題だと感じています。人材領域も同じで、私自身、年間多くの方と面接をする中で、求職者の方にも企業側にも、できる限り情報の透明性を高めていきたいと感じています。

学生へのメッセージ

起業家の近くで働く意味

将来、事業や経営、起業に関わりたいと思うのであれば、起業家の近くで働くことをおすすめします。大企業で学べることもたくさんありますが、起業家の近くにいると、どのように挑戦し、いかに柔軟な意思決定を下していくかを間近で見ることができます。大きな組織では、意思決定に多くの人が関わる分、判断に時間がかかりやすい面があります。決める立場にいても、なかなか決められないというのは、本人にとってもつらいことだと思います。

好きなことを仕事にする

自分のやりたいことがわからないという学生は多いと思いますが、私自身、若いころは仕事のことも、起業の仕方もよくわかっていませんでした。だからこそ、まず一歩踏み出してみることが大事です。

もう一つ伝えたいのは、得意なことより好きなことで選んでほしいということです。得意なことで起業しようとすると、周りの評価が気になってしまう。私がバイクで起業しようとしたときは無謀だと言われることもありましたが、少しも迷うことなく、意志を持って事業を推進することができました。なぜなら、失敗を恐れていなかったからです。好きなことであれば、多少の批判があっても一歩踏み出せます。好きなことは仕事にならないと思い込んでいる人も多いかもしれませんが、私はむしろ、好きなことこそ仕事にすべきだと思っています。

MOTAは今、急成長していて、新しいポジションがどんどん生まれています。社員の中にも「社会貢献度が高い」と感じている人が多く、フェア・トレードという理念を愚直に追いかけている実感を持てる会社だと思います。自分の仕事に意義や手ごたえを感じたいという人には、きっと合う環境です。

編集後記

今回のインタビューを通じて、一番印象に残ったのは「視野を狭めたり広げたりする」という言葉でした。自分は今、学生起業に挑戦している身として、新しいアイディアを前に進めるときの「信じ切る強さ」と、うまくいかないときに「素直に軌道修正する柔軟さ」の両方が必要だと痛感しました。また、「得意なことより好きなことで選ぶ」というお話は、就職活動を控える多くの学生にとっても、大きなヒントになるのではないかと感じています。貴重なお話をありがとうございました。