インタビュー

1,718市町村をたった1人で。ユーグレナ共同創業者が「地方発、日本再生!」に挑む理由

1,718市町村をたった1人で。ユーグレナ共同創業者が「地方発、日本再生!」に挑む理由
PROFILE
株式会社ニホンノチカラ 代表取締役
福本 拓元

日本再生への原点

アメリカで感じた悔しさ

学生時代はアメリカで過ごしたんですけど、外から見ると、日本の物や人の質、自然や文化の豊かさがよくわかります。その一方で、国力ではアメリカに遅れをとっていることに、強い悔しさを感じました。いつか日本を再生したい。その思いが、ずっと私の原動力になっています。弊社が掲げる「地方発、日本再生!」というミッションにも、そのころからの思いが込められているんです。

全国営業で見た地方の現実

帰国後、ユーグレナの創業前後に営業で全国を回るなかで、地方が抱える厳しい現実を目の当たりにしました。少子高齢化や若者の流出、そして後継者不足。これは日本全体が直面している課題でもあります。ただ、地方には優れた技術や特産品、情熱を持った人たちという「隠れた宝」が無数にあるんです。それを掘り起こして世界とつなぎたいと思い、株式会社ニホンノチカラを立ち上げました。

1,718市町村を巡る挑戦

月の半分は地方へ

いま取り組んでいるのが、全国1,718の市町村をすべて訪ねる「1718ニホン探索」です。1ヶ月のうち2週間ほどは地方を回っていて、目標は月15市町村。週で言うと7〜8カ所、1日あたり1〜2カ所のペースです。2月にスタートして、9ヶ月弱で106の市町村を訪問しました。平均すると、月12カ所程度は行けている計算になります。

10年で全市町村へ

目標の月15カ所ペースで1年回ると180市町村なので、すべて回りきるには最低でも10年かかります。ただ、全部を早く回ること自体に意味があるというよりは、これを本気でやろうとしていることに、意味があると考えているんです。結果、ブランディングにも繋がると確信しています。その姿勢をおもしろいと思ってくれたメディアや企業、行政と一緒に、プロジェクトを進めていくイメージですね。

写真も取材も自分の足で

訪れた市町村のことは、すべて記事にしてサイトにまとめています。写真も基本的に自分で撮っていて、取材も自分自身で行っています。天気が悪かったときなどは、画像を購入したり提供いただいたりすることもあります。自身のブランディングでもあるので、記者が代わりに回るのではなく、代表である私自身が全部行っていることを大事にしています。役所の前で自撮りをして、ちゃんと私が足を運んでいることを示しているんです。

訪れた町を1曲の歌に

さらに、訪問した市町村を1曲ずつ歌にしているんです。歌詞は私とAIのコラボでつくり、曲も他のAIで制作しているのですが、いまでは106曲あります。最近はいろいろな市町村から「イベントやお祭りで使いたいので、データをもらえないか」と声をかけていただくようになりました。実際にお祭りで使ってくださるところも、少しずつ出始めています。

歌が記憶をよみがえらせる

月10~15カ所も回っていると、だんだん記憶がごちゃごちゃになってくるんですよね。でも、映画のワンシーンの音楽って、忘れないじゃないですか。音楽には人の脳を刺激する力があって、自分が訪問して取材したことを歌にしているので、曲を聴くとその場所とシンクロして記憶がよみがえるんです。曲として残すことで、私のなかの記憶を薄れにくくする役割も果たしてくれています。

テクノロジーで1人を可能に

対談も発信もすべて1人で

ときどき市長や町長と対談させていただいていて、その様子はYouTubeで配信しています。せっかく訪問しているので、Instagramのリール動画でも各地の様子を届けているんです。特徴的なのは、これらをすべて1人でやっていることです(You Tube動画の編集のみ外注)。取材から発信、サイトにアップする作業まで、自分でおこなっています。

更新作業は自動化した

サイトはClaude Codeにコーディングしてもらい、ブログを1本アップするだけで、日付や訪問数のカウンターが自動で変わるようになっています。地図も同じで、記事のなかに「札幌市(北海道)」のように市町村名と都道府県名を入れておくと、それに反応して地図に反映されるんです。市長や町長という言葉を入れておけば「首長対談」のタグも自動でつき、対談の記事だけをまとめて見られます。

12万字の記憶をAIに渡す

とはいえ、月15本の記事を1人で書いていたら、時間がいくらあっても足りないですよね。そこで、覚えている限りの子どものころからの出来事や経験をすべてメモしていきました。2年程かけて12万字ほど、私の記憶を文字にしたんです。AIはそのパーソナルデータを踏まえたうえで、取材内容や役所の方、首長との会話も反映して記事にしてくれます。

記事1本は30~60分で完成

たとえば、私の出身地の隣にある市を訪ねた記事には、少年時代から何度も訪れてきた場所だという話が自然に入ってきます。だから、かなりパーソナルな記事に仕上がるんです。このやり方なので、記事1本の投稿にかかる時間はトータルで30~60分ほどです。リアルで人と会い、自分の目で見る泥臭い部分は大事にしながら、テクノロジーを駆使して効率よく進める。テクノロジーがなければ、1人ではとても実現できていないと思います。

出会いを軸に旅程を組む

会食とイベントが起点

訪問先を決めるときは、夜の会食や首長との対談、イベントといった主要な予定を先に決めています。1718ニホン探索そのものをマネタイズするつもりはないので、役所を訪問するだけで終わってしまうと、単なる旅行になってしまいます。だから夜はだいたい地方の経営者と食事をして、ビジネスのパートナー候補と出会う場にしているんです。たとえば仙台で登壇イベントがあれば、それに合わせて仙台に入り、周辺の市町村を回ります。

予定に合わせて全国へ

石垣島のイベントに登壇したり、山口の地方創生交流会で登壇したりと、予定はさまざまです。広島に滞在している途中で岡山の予定が決まれば、新幹線で移動しながら周辺の市町村を取材していきます。新居浜市の学校で講演を依頼されて、山口から愛媛へ渡る予定もあるんですよ。そのぶん、東京にいる2週間をどう過ごすかも、ビジネスのうえではとても重要になっています。

地方の会社を次の世代へ

経営者の移住で事業承継

今後は、いくつかの事業を手掛けていく予定ですが、特に力を入れたいのが、後継者のいない地方産業を担っている企業の承継M&Aです。そして、仲間の経営者や東京の優秀な人材に地方へ移住してもらい、社長として会社を経営してもらいます。地方に化学反応を起こすことで、街づくりにも貢献していきたいと考えています。また、地方企業の経営者をパートナーとしたサービスサプライプラットフォームも準備しています。こうした事業を中心とした地方創生ベンチャーとして、いまは本格始動に向けて準備を進めている段階です。全国を巡るなかで出会う地方の経営者の方々は、そのパートナー候補でもあるんです。

学生へのメッセージ

挑戦する側に立ってほしい

いまは20代前半で会社を売却して、20代半ばでさまざまな会社に投資し、なかには地方創生に取り組んでいる人もいる時代です。AIもあるし、テクノロジーの幅も広いので、やる気さえあれば一気に大きなチャンスをつかめます。私はチャレンジャーをたくさん生み出していきたいと思っています。この記事を読んでいる行動力のあるみなさんには、ぜひ勝つ側にいてほしいですね。

もし学生に戻ったら

もしいま大学生に戻れるなら、AIを使う側として、徹底的に勉強すると思います。AIをフル稼働させて使いこなし、誰よりも情報を知っている人間になる。いまなら、それでたぶん何でもできるはずです。AIに仕事を任せられる範囲は、これからも広がっていくと思います。だからこそ、使われる側ではなく使う側に回れるかどうかが、大きな分かれ目になるんじゃないでしょうか。

変化はすでに始まっている

AIによって仕事のあり方が変わるのは、アメリカではすでに起きていることなんです。エンジニアになれば将来安泰だと考えて工学部に進んだ学生が、なかなか就職できない状況も生まれています。AIを活用すれば、システム開発の初期費用を無料にして、売上の一部を10年かけて回収するようなモデルも成り立ちます。日本の就職環境も変わりつつあるので、早いうちから変化に向き合ってほしいと思っています。

編集後記

1,718の市町村を1人で巡り、写真も記事も歌も自分で生み出している福本さんのお話に、最初から最後まで圧倒されっぱなしでした。とくに印象に残ったのは、12万字分の記憶をAIに渡し、記事1本を30~60分で仕上げているという仕組みです。テクノロジーで手間を省くだけでなく、自分にしか書けない文章を生み出すために使っている点に、AI時代の働き方のヒントがあると感じました。私も学生起業をしている身として、「使う側」に回るための勉強を、いまから本気で始めたいと思います。