農学部からデータの道へ
動物好きで農学部へ
小さい頃から動物や生物が好きで、学生時代は農学部で学んでいました。将来は農学に関わる仕事がしたいと考えていたので、データや分析とはまったく関係のない分野にいました。今の仕事と学生時代の学びは、正直なところ結びつかない部分も多いと思います。就職先も、最初は農学系の会社を選びました。そこで出会ったのが、マーケティングという分野でした。
マーケティングに魅了された
農学系の会社で働くなかで、マーケティングがとても面白くなっていきました。人に物を売るにはどうすればいいのか、どんなことをすれば物が売れるのか。そういったことを考えていくうちに、どんどん興味が湧いてきたのです。マーケティングをさらに進めようとすると、どんな人が買っているのか、どの時間帯に何が売れるのかなど、データを基に判断する必要が出てきます。そうした研究を施策に生かしていくうちに、今のデータの領域にたどり着いた感じです。
会社員を経て念願の起業
会社員として10年以上働いてきたなかで、いつか起業してみたい、経営者として自分の舵で会社を動かしてみたいという憧れがずっとありました。その思いから独立を決意し、2022年から個人事業として活動をスタートしています。そして2023年に法人化し、株式会社キューバリューを立ち上げました。社名は、Quest(探索・探求)とValue(価値)を組み合わせた造語です。データの価値を探索し続けるという思いを込めています。
データで企業の意思決定を支える
伴走型のデータ分析支援
弊社の事業には2つの柱があり、いずれもデータを活用するという軸が根底にあります。ひとつ目は、専門的な伴走型のデータマーケティング・データ分析支援です。企業様の顧客理解を深めるための顧客分析やCRM、施策の検証、それにあわせたPDCAの運用など、データ起点でのマーケティング活動を支援しています。データを基にした事業上の意思決定を円滑におこなえるよう、環境やデータの構築もサポートしているのです。
分析の民主化をAIで
2つ目が、AIを活用したデータ分析の民主化支援です。DXを推進しなければ、AIを活用しなければといった命題は、多くの企業様が抱えていると思います。とくに、データを専門に扱うエンジニア部門ではない、マーケティングや事業企画の担当者など、非エンジニアの現場でもデータを基に意思決定したいというニーズは多いです。そうした現場に向けて、チャット形式のAIを使って簡単に、しかも高い精度でデータ分析ができる環境の構築をお手伝いしています。
生成AIの進化と向き合う
創業期はすべてを1人で
正直なところ、起業してからは苦労の連続でした。基本的には苦労しかなかったと言ってもいいほどです。創業当初は、営業や現場での業務対応はもちろん、採用や経理、会計といった社内環境の整備まで、あらゆることを1人で行ってきました。量的な面でもかなり大変でした。
AIに代替される危機感
生成AIが爆速で進化し、企業も積極的に事業へAIを取り入れるようになりました。AIを実務で十分に使えるレベルになってきたことで、データアナリストやデータサイエンティストといった職種の専門領域の一部が、AIで代替できるようになっているのです。完全ではないものの、おそらく2、3年後には、今のアナリストやデータサイエンティストの業務内容の基礎領域は多くの部分でAIで完結してしまうと見ています。
事業ドメインを再構築する
これまでの延長線上のアプローチでは、自分たちの存在価値や弊社のプレゼンス意義がなくなってしまうのではないか。そのような危機感が生まれました。だからこそ、早めに事業ドメインを再構築し、AIとどう向き合って付加価値を出していくのかを早急に考える必要があります。お客様の現場感を常に意識しながら、外部環境にあわせて事業ドメインをつくっていく。こうした動きの速さへの対応力、つまり変化力が、今の課題のひとつだと考えています。
データ人材の確保も課題
もうひとつの課題は人材です。この領域の人材はもともと少ないうえに、AI自体もデータがエネルギー源になるため、データ活用を担う人材の存在はますます重要になっています。そのため、弊社のような中小企業ではなかなか採用しきれないという課題があるのです。現在はデータサイエンティストやデータエンジニアの職種採用に取り組んでいます。
横浜から輝ける企業へ
AIと協働する分析へ
今後は、AIの選択や組み合わせをしっかり見極めたうえで、AIと協働するデータ分析アプローチを進めていきたいと考えています。目指すのは、クライアントの現場で誰もが高品質なデータ分析をおこなえる環境づくりです。これまではデータを分析し、その結果をお客様にお渡しする形がメインでした。ただ、簡単な分析はもうAIが出してくれる時代です。これからは、その環境自体の構築をデータの専門家としての視点でお手伝いする方向へシフトしていけたらと思っています。
地元・横浜とともに成長
弊社は横浜に本社を置いています。その横浜を起点に、地元の企業様と一緒に成長し、地域経済を盛り上げていきたいですね。そんな輝ける企業になることを、ひとつの目指すべき姿として描いています。現在も所属団体が主催する交流会などに参加し、地元企業とのつながりを少しずつ広げているところです。お客様としてはまだ都内の企業様がメインですが、今後は横浜での取り組みもさらに深めていきたいと考えています。
学生へのメッセージ
答えの裏にある本質を探る
AIの登場で、学生の皆さんを取り巻く環境も、企業環境も圧倒的に変わってきています。基本的なことはAIに聞けば簡単に答えを出してくれます。一方で、少し違和感もあります。答えがどんどん先に出てしまうので、その裏にある課題の本質がわからないまま物事が進み、暗黙知が暗黙知のままになってしまう危機感を持っています。
日常から「本質」を意識する
学生時代は、現場での授業やさまざまな体験などで、人と直接関わる機会が多いと思います。目の前で起こる物事や、相手が話している悩みについて、「この話の本質は何だろう」「根底にある問題点は何だろう」と意識しながら聞いてみてください。答えだけを求めるのではなく、その背景を考えることを日常生活から意識していただけると、良いのかなと思っています。
編集後記
農学部から始まり、マーケティングを経てデータの世界へたどり着いた磯部さんのキャリアは、興味を持ったことを一つひとつ深めてきた結果なのだと感じました。とくに印象に残ったのは、AIの進化を自社の危機として正面から受け止め、事業ドメインの再構築に取り組む姿勢です。私自身、学生起業に挑戦するなかで、AIに答えを求めることが当たり前になっていました。「答えの裏にある本質を考える」というお話にはっとさせられ、日々の活動でも課題の根底を意識していきたいと思います。横浜から輝ける企業を目指すキューバリューの今後に注目です。