飽き性だったからこそ、気づいたこと
間取り好きの飽き性学生
大学時代、私はとにかく「飽き性」でした。アルバイトも30〜40個ほど転々として、面接だけ受かって満足してそのまま行かなかったこともあるくらいです。そんなに真面目でもなく、だからといってやんちゃでもなく、どこかちょうど「ぼんやり生きている」感じの学生でしたね。
唯一ハマっていたのが、物件の間取りを見ること。それ以外はまあ、飲んで遊んでダラダラして、というごく普通の学生生活だったと思います。
内定後3ヶ月で辞めた理由
就職活動では、サイバーエージェントを受けたのですが、正直ほとんど準備をせずに臨んでしまい、当然のように落ちました(笑)。その後、某大手の不動産の会社では最終選考まで進んだのですが、最後に「この会社に入ります」と言い切れなかったこともあり、結果的にご縁がありませんでした。
最終的には、友人から紹介されたITコンサル系のベンチャー企業から内定をいただきました。ただし条件は「東京に出ること」。まずはインターンで実績を出せたら東京勤務を認める、という話だったので、そこは必死に頑張りました。その結果、新卒数十名から100名ほどいる中で全国2位の成績を取ることができ、念願だった上京を果たしました。
ただ、その会社は3ヶ月で辞めることになります。辛くて辞めたわけではなく、「ベンチャー企業での動き方が、なんとなく見えてきたな」という感覚があったんです。リストを作り、営業をかけ、数字を作っていく。そうした一定の型が見えてきたタイミングで、「これなら自分でもできるんじゃないか」と思ってしまったんですよね。
前職の案件を起点に法人化
新卒で入社した会社を退職した後、コールセンターのアルバイトとして別の会社に入りました。アルバイトという立場ではありましたが、当時の直属のマネージャーや役員陣と一定の関係性を築くことができていました。
そんな中で、社内にWeb制作や映像制作のニーズがあることを知ったんです。当時、Web制作ができる友人と、映像制作が得意な知人がいたので、「これを自分たちで受けられないか」と考えるようになりました。そこから直属のマネージャーに相談し、マネージャーから役員へ、役員から子会社の社長へ、さらに子会社の社長からホールディングスの社長へと話をつないでいただきました。
その結果、制作パートナーとして契約を締結することができました。これをきっかけに、いきなり法人化して事業をスタートしたことが、弊社の始まりです。
ブルーカラーへのピボット
IT事業からの方向転換
最初は、Web制作や映像制作を中心に事業を展開していました。ただ、事業を進めていく中で、「IT領域で新しいサービスを立ち上げ、継続的に戦っていくには、相応の資金力が必要だ」という現実を感じるようになりました。
仮に良いサービスを作れたとしても、資金力のある競合が参入してくれば、すぐに追いつかれてしまう。そう考えたときに、IT領域で新規サービスを立ち上げて勝負し続けるのは、自分たちの戦い方ではないと判断しました。
そこからは、助成金・補助金の代理店、不動産、訪問介護、美容サロンなど、さまざまな事業に挑戦しました。手広く動きながら、「自分たちはどこで戦うべきか」を探していた時期だったと思います。
ブルーカラー領域に可能性を見た
ブルーカラー領域に目を向けた理由は、正直に言うと、最初から明確な戦略があったわけではありません。少し後付けの部分もあります。ただ、実際に事業として関わってみると、軽貨物運送や電気工事関連、家電修理・家電設置といった分野等も含め、需要に対して人手が圧倒的に足りていないことがわかりました。一方で、業界全体のイメージは昔のままで、求職者に魅力が十分に伝わっていない。ここに大きなギャップを感じました。
そこで弊社では、そういった企業に対して人材や運営リソースを補填したり、新規事業の立ち上げや現場運営を支援したりする、BPOに近い関わり方をしています。現在、最も力を入れているのはこの領域です。
加えて、フランチャイズ系の美容サロン運営や、創業当初から続けているIT事業のナレッジ等も活かしブルーカラー事業者へのAIを用いた業務効率化支援や採用コンサルティングも並行して展開しています。
「人」と一緒に働くということ
リスペクトし合える関係をつくる
私が代表という立場にはいますが、「社長だから全員が私をリスペクトして当然」という関係は嫌なんです。たとえば私はホームページを全く作れない。でも弊社の役員や社員はそれができる。だから、そのスキルに対して私は本気でリスペクトしています。
逆に向こうにないものを私が持っているところもあるので、お互いにリスペクトし合える面を持てる関係でいたい。だから自分でホームページも作れるようになろう、とはあえて思わないようにしています。人に信頼して任せきる、そのバランスを意識していますね。
社内起業のような雇用創出を目指して
今後の展望として思い描いているのは、雇用に人を合わせるのではなく、人に事業を合わせていくような働き方です。
たとえば軽貨物のドライバーとして入ってくださった方に、ずっとドライバーをやってほしいわけじゃない。その方に「こういう新しい事業があるんですけど、一緒にやってみませんか」という声がけができる環境をつくりたい。みんなが社内起業しているような感覚で、いろんな可能性を広げていける会社にしていきたいと思っています。
若い人たちへ伝えたいこと
ラベルで仕事を選ばないでほしい
若い方と話していると、「ラベリング」で仕事を選んでいる人が多いなと感じます。「広告運用」「マーケティング」みたいなかっこいい肩書きに引っ張られて、でも年収は月 20 万という状況。一方でブルーカラー系の仕事をしていて、20代でも年収1,000万円を稼いでいる人もいる。
その年収1,000万円の人が将来独立しようとしたら、すでに3倍ほどの軍資金がたまっている状態なんです。つまり起業の選択肢自体が広がっている。かっこよさやラベルにとらわれず、現実的な目線でお仕事を選んでほしいというのが正直な気持ちです。
プライドを捨てた先に広がるもの
現場に出て体を動かす仕事って、机の前でパソコンをずっとやっているよりも、実際やってみたらすごくスッキリするんですよね。気持ちよく仕事できているという感覚があります。
プライドを捨てて、目の前の仕事に向き合える人は、絶対に将来的に強くなると思う。それが特定のジャンルへのこだわりではなく、「稼ぐ」という現実に向き合う姿勢だと思うので、ぜひ若いうちからそういう目線を持ってほしいなと思います。
編集後記
取材を通じて印象に残ったのは、金本さんの「人を起点に考える」というスタンスです。事業を多角展開しているように見えますが、その根底には一貫して「人が足りていない現場に、人とリソースを届けたい」という思想があります。ブルーカラー領域への参入も、流行り廃りに左右されにくいという合理的な判断から来ているのがよくわかりました。またリスペクトを双方向に持つという組織づくりへの考え方は、これから社会に出る自分にとっても刺さるものがありました。20代でこれだけ「人」と「現実」に向き合っている経営者は、なかなかいないと思います。