文系学生が「この世界で働きたい」と決めた瞬間
営業以外の道を探して
大学は法政大学の経営学部でした。1〜3年生の前半まではバイトやサークルをしながら、ごく普通の学生生活を送っていました。
転機は3年の9月です。プログラミングスクールでプログラミングを始めてみたんですよね。文系だと「卒業したら営業に行くしかない」みたいな、そういう典型的なイメージがあって、それが嫌だなっていう気持ちがあったので、じゃあ何かやってみようと。
4年生に上がってちょうどコロナが流行ったタイミングで休学して、コインチェックという仮想通貨の取引所でインターンとしてデータ分析と広告運用をやりました。
コインチェックで「働き方」を知る
そこで初めて、スーツを着なくていいんだとか、出社時間がフレキシブルなんだとか気づいたんですよね。怒鳴られるイメージを持っていたけれど、そういう文化じゃないんだなって。仕事って、いろんな働き方があるんだって理解して、暗号資産関係で働きたいなと思うようになりました。
コインチェック自体もすごくて、創業者が学生起業のエンジニアだったりするんですよ。事件はあったものの、結局480億円ほどを返済していて、その後マネックスという上場企業に買収されてナスダックに上場するというスケールを見ていました。新しいテクノロジーの領域だと、大企業がまだ取り切れていない参入余地がある、ということも肌で感じていました。
就職先がなかなかなかったので、「じゃあ自分でやるしかないか」という流れで、2022年5月に起業したのが今の会社です。
「アフリカ×Web3」から始まった事業の変遷
ナイジェリアに友達100人
最初に起業した時は、アフリカで仮想通貨のコミュニティを作るというものでした。Web3が盛り上がっていた時期で、NFTゲームで稼いだ暗号資産が途上国の人の収入になるという「ギルド」というコミュニティが世界中に生まれていた時期だったんですよね。ベトナム、フィリピン、ブラジル、そしてアフリカにもそういうムーブメントがありました。
ナイジェリアは仮想通貨のユーザー数がインドに次いで世界2位で、人口も2億人以上います。2050年には4億人になって中国についで世界3位の規模になると言われている。これから成長するところに、自分がやろうとしていたことの親和性がある、参入余地があると思ったんです。実際にナイジェリアで友達を100人ほど作って、イベントも開催しました。
「日本から固める」という方針転換
ただ、自分のアイデンティティが日本にあった方が海外でも訴求できるとか、いろいろ考えるうちに「まず日本から固めた方がいい」という方針に変わっていきました。ハッカソン(あるテーマに対してソフトウェア開発の関係者がチームを組み、一定期間集中的にプログラムの開発やサービスの考案を行い、その成果を競うイベント)に出たら賞も取れたりして、開発にも力を入れるようになりました。
ブロックチェーンの市場が限定的になってきたという背景があるなかで、AIが普及すれば広がるという見通しもあったので、AI領域での発信や開発、コミュニティ作りも始めました。今はシステム開発と人材紹介が主な事業になっています。
建設・電気系のAIエージェントや仮想通貨決済
開発では、建設や電気系のAIエージェントを作ったり、仮想通貨決済できるECサイトを作ったり、ゲームやアプリを開発したりしています。AIとブロックチェーン周りに強みがあるので、そこを活かしています。
日本では法令に準拠した上でどう実装するかという話があって、その法的な論点って業界の中にいないと入ってこないんですよ。普段触っているからこそ、ディスカッションができる。実質コンサルみたいな形でフィーをいただくことも多いですね。
強みと、一緒に働く人への姿勢
「X3万フォロワー」と「ハッカソン優勝」
他のシステム開発会社に比べての強みで言うと、まず私自身がプログラミングスクールで教えていた経験や、コインチェックでのデータ分析の経験があります。ハッカソンでで優勝したこともありました。
もう一つは、AIコミュニティの運営と発信です。X(旧 Twitter)で3万フォロワーのアカウントを持っていて、100〜200人規模のイベントも開いています。プロダクトを作った後のプロモーションまで、多面的に動けるのが強みだと思っています。
「怒られないようにする」が一番もったいない
チームで仕事をする上でいちばん意識しているのは、メンバーが「怒られないようにする」状態にならないようにすること。高圧的にされると、怒られないための動きにリソースが取られて、本来の実力が発揮できなくなるんですよね。その人の強みが出せる状態を保ちたいと思っています。
起業して気づいた「本来の自分」
ナイジェリアで初めてイベントを開く
起業してやりがいを感じているのは、やりたいことが自分でできるということです。もともとイベントを開くという経験すらなかったんですよ。友達を誘ってイベントをやるとか、そういうことも一回もやったことがなかった。
起業家って、学生時代から生徒会をやっていたとか、高校でなんちゃらをやっていたとか、そういう人が多い印象じゃないですか。私はそういうタイプじゃなかった。でも、一発目のナイジェリアのイベントをやってみたら意外とできたし、楽しいじゃんって思えました。
本来やりたかったけど知らなかった自分、みたいなものを知れるのがやりがいだなと思っています。去年は海外10カ国に行ったりしましたが、それも起業したおかげで繋がりができていたからです。仕事を一緒にするだけじゃなくて、シンプルに仲良くなる繋がりも広がっているのが楽しいですね。
AI×リアルイベントで、次のステージへ
ピックルボールイベントとメディア連携
今後はAI領域をもっと大きくしていきたいですね。ただ、AIをやっているとリアルの繋がりも大事だなとも思っています。AIで業務改善・生産性向上を実現しながら、リアルのイベントとも組み合わせたものができたらと考えています。
実はピックルボールというスポーツのイベントも企画しています。16人規模で、スポンサーをつけて開催するんですよ。お笑い芸人のバッテリィズと女優の二瓶有加がピックルボールのチャンネルを運営していて、そこに運営協力してもらっています。経営者を集めてスポーツとビジネスを掛け合わせたイベントにしていく、というのも構想中です。
もう一度、海外へ
以前やっていたアフリカや海外展開にも、また挑戦したいと思っています。そのための仕込みをいろいろしている段階です。
学生へのメッセージ
学生の時はいろんなことに挑戦した方がいいと思っています。「学生だから」って許されることって、意外と多いんですよね。失敗しても「その経験を活かして就活します」って言えてしまうくらい、リスクがほぼない。だから未来を良くするために、どんどん行動した方がいいと思います。
私も見た目が学生っぽく見られることがあるんですけど、年齢を言うとちょっと反応が変わる。「しっかりしなきゃいけない」フレームに入っていくんですよ。学生のうちにしかできないことを、ぜひやり切ってほしいです。
編集後記
インタビューを通じて印象的だったのは、小宮さんが「なんとなく嫌だった」という感覚を起点に行動し続けてきた点です。文系だから営業しかないというイメージへの違和感が、プログラミングを始めるきっかけになり、コインチェックでのインターンが「こっちの業界で働きたい」という確信に変わり、就職先がなかったことが起業へと繋がりました。ネガティブに見える状況を、すべて次の一手に変えてきたプロセスが、話の随所に見えました。AIとブロックチェーンを軸にしながら、リアルのイベントや海外展開まで見据える事業の広がりが、これからどこに向かうのか楽しみです。