弁護士を目指した学生時代から、経営に近い銀行員へ
部活から一転、勉強に打ち込んだ
高校まではずっと部活を頑張っていました。でも高校二年生くらいから、ちゃんと進学したいという気持ちが強くなって、部活を辞めて勉強に集中するようになったんですよね。もともと弁護士になりたいという思いがあったので、それを目指して大学に進んで、司法試験の勉強を頑張っていました。
銀行を選んだ理由
司法試験は残念ながら受かりませんでした。ロースクールに行くかどうかはすごく悩みました。ただ、一回働いてみて、それでもロースクールに行きたいと思ったらまた行けばいいかなという考えもあったので、まずは就職する道を選んだんです。弁護士もそうですけど、経営というものにもすごく興味があったので、経営者に一番近い立場で仕事ができる場所として、銀行に興味を持ちました。三菱UFJ銀行に新卒で入行して、そこで経験を積もうと思っていました。
事業承継の失敗と、家族から離れる決断
「来年から社長をやれ」で歯車が狂った
私の場合、少し変わった経緯があって。父が会社を経営していたんですが、銀行で八年ほど働いたあと、その会社に戻ることになったんです。それから五年ほど事業承継の準備を進めていたんですが、あるとき父から「来年からお前が社長をやれ」と言われたタイミングで、歯車が狂ってしまいました。もともと仲は良かったのに、経営のことで揉め始めてしまって。プライベートや家族にも影響が出てしまったので、このままでは家族の環境も崩れてしまうと思い、一度自分から離れる決断をしました。
上場準備を経験して見えてきたこと
家業を離れたあとはスタートアップに入り、上場準備の責任者やコーポレートの役員のような立場で仕事をしていました。その会社が無事に上場して、プロセスが一通り終わったタイミングで、自分のキャリアを振り返る機会があったんです。もう一度あの会社に戻るという選択肢もあったんですが、事業承継に失敗した経験や上場プロセスで得た経験を活かして、自分で事業をつくったら面白そうだと思うようになりました。東京と地方とでは情報やリソース、お金にも大きな差があるとずっと感じていたので、地元に戻って起業するという形を選びました。
事業承継の本当の壁は「親子関係」
ビジネスとプライベートは分けられない
私の周りにも二代目、三代目という後継者はたくさんいるんですが、やはり親子間の関係が承継の大きな障壁になっているケースはとても多いと感じています。私自身、それなりに大手企業に勤めていたので、ビジネスとプライベートは分けられるものだと思っていました。でも実際は家族というものは分けられなくて、分けようとすればするほど、その深みにはまっていくということがわかってきたんです。だからこそ、第三者が間に入ること、冷静で客観的に見られる人がつなぎ役になることが、承継を円滑に進める大きな秘訣になると思っています。
承継前に、一度自分で事業をやってみる
もう一点大事にしているのが、後継者が承継の前に一度自分で事業を経験しておくということです。私自身、事前に起業を行ったうえで、再度父親の会社の承継にもチャレンジしています。
先に自分で経営をしてみることはすごくいいことだと思っています。ゼロからいちをつくっていく苦しさを経験しながら、同じ経営者という立場で目線を合わせて承継を進められるためです。そういった他社承継前の後継者候補のみなさんを、すごく応援しています。今は、そうしたメンバーをグルーピングして集まれる場をつくれたら面白いなと構想しているところです。
トップの意思にこだわる理由
経営はやはりトップで決まる部分が大きいと思っています。事業承継や経営のグロースをご支援する中でも、結局はトップがどうしたいか、どうありたいかがすべてです。だから私たちは何でも仕事を受けるというより、社長がどうしたいのかをちゃんと聞いたうえで、そのビジョンに共感して、一緒に実現したいと思える方々とお仕事をするようにしています。それが弊社のこだわりであり、スタイルです。
HundRedsが目指す、地域と地域をつなぐ未来
私たちはグループとして、地域社会の課題を解決することを理念に掲げています。私が代表を務めるHundRedsでは事業承継や地域企業のグロースを支援していますが、グループ全体で見ると地域創生や地域の発展にも取り組んでいます。今のフェーズとして目指しているのは、地域と地域を結ぶ連携です。単独では生存が難しい過疎地域や地方の行政などをつなぎ、協力し合いながら生きていくモデルをつくりたいと考えています。無医村でのオンライン診療や、使われなくなった廃校を取り壊すのではなく宿泊施設として活用するビジネスなど、行政と一緒に進めている取り組みもあります。
経営の原動力は「社会に必要とされること」
もともと銀行や大企業を辞めているので、自分のやりたいことをやろうという思いをずっと持ち続けています。ただそれが独りよがりであってはいけなくて、社会に役立つことだからこそ必要とされるんだと思っています。売り上げというものも、社会から必要とされた量の結果だと捉えているので、自分のやりたいことをやり続けながら、それがどう社会に貢献できるかを考え続けて経営していきたいと思っています。
クライアントファーストや信頼というのは、当たり前のことかもしれません。それでもお客さまがやりたいことをどう一緒に実現するかを一番大事にしていて、私たちの意思よりもお客さまがどうしたいかを重視し、その実現に力を尽くしています。信頼を積み重ねる行動を続けてきたことで、コンサルティング業務としては数年単位で続くお取り引きも多く、お客さまが伸びれば私たちも伸びるというビジネスモデルを一緒につくっていけていることが、評価いただけている理由なのかなと感じています。
学生に伝えたいこと
もし今の自分が学生に戻ったら、当然勉学もありながら、学生だからこそできる挑戦を果敢にやってみると思います。起業もそうですし、投資の勉強をしてみるのもいいかもしれません。大学や勉学という枠組みを超えた挑戦をしてみることは、社会に出たときにすごくいい経験になるはずです。自分のやりたいことを探すうえでも、社会と交わるような体験をしていくことは、とても良いことだと思います。
私自身、一度事業承継に失敗しています。しかし、現在は起業を経て、再度父親の会社の事業承継にも挑戦しています。ぜひ、学生のみなさんも色々なことに挑戦してみてください。
編集後記
事業承継という言葉の裏に、これほど個人的な痛みが伴うとは知りませんでした。野口さんの、親子だからこそ分けられなかったという言葉が、いちばん印象に残っています。失敗をそのまま終わらせず、次の世代のための仕組みに変えていく姿勢に、経営者としての強さを感じました。地域と地域をつなぐという発想も、日本各地の課題を見てきたからこそ生まれたものだと思います。私自身もいつか経営に携わりたいと考えているので、今回のお話はとても励みになりました。貴重なお時間をいただき、ありがとうございました。