インタビュー

「話す」より「売れる」を届けたい。テレビ通販の現場から生まれたプレゼン術、いまTikTokライブコマースへ

「話す」より「売れる」を届けたい。テレビ通販の現場から生まれたプレゼン術、いまTikTokライブコマースへ
PROFILE
合同会社富貴堂 代表者
相本さち子

マスコミを目指した学生時代から、テレビの世界へ

マスコミ一筋の学生時代

学生時代は、マスコミ志望だったんですよね。マスコミ系の授業を受講したり、三年生からはマスコミ予備校にも通ったりして、準備をしていました。それだけじゃなく、サークルにもしっかり入って遊んだり、友だちを増やしたりと、プライベートも結構充実していたと思います。

札幌テレビでアナウンサーに

大学を卒業してからは、札幌テレビという日本テレビ系列の北海道のテレビ局に就職して、アナウンサーを三年やっていました。そこから七ヶ月ほどオーストラリアに留学して、東京に戻ってからは、日本テレビの関連会社に所属して報道記者をやっていました。

「伝える」と「売る」は別ものだった

フリーから通販業界へ

日本テレビの記者を退職した後は、フリーランスのアナウンサーとして事務所に所属して活動していました。しかし、当時はなかなか思うように仕事に恵まれない日々が続いていました。その後、テレビ通販の会社へ就職してからは、現在に至るまで同業界での仕事を続けています。ショップチャンネルではテレビ通販のプレゼンターをしていました。

アナウンサーでも最初は売れなかった

もともとアナウンサーだったので、ものを伝えるのはうまいと思っていたんです。しかし、いざ通販の仕事を始めてみると、最初は全然売れなてなかったです。アナウンサーは説明はきちんとできるんですけど、説明を聞いただけでは人は「欲しい」とは思わないんですよね。うまく話すことよりも、欲しいと思ってもらえるポイントを作ることのほうが大事だと気づいてから、少しずつ売れるようになっていきました。

セミナー事業を起業したきっかけ

「見えない人にどう売るか」を聞かれ続けて

テレビ通販は生放送で、テレビの向こうにいる見えないお客様に、台本なしでその場で即興で商品を売っていく仕事なんです。その経験から、いろいろな方に「どうやって見えない人に売っていくんですか」と聞かれることが多くて。それを、どんな方でも汎用性高く使えるようなセミナーにして、一般の営業さんや接客業で販売をされている方にお伝えする事業を始めたのが起業のきっかけです。

ヒアリングを大切にする

セミナーを受けてくださる方は、状況も職種もキャリアもそれぞれ違うので、できるだけヒアリングをするようにしています。一方的にこちらが話すというよりは、受けてくださる方の状況やお悩みを聞き出しながら、その方に合った内容にカスタマイズするようにしていますね。

いま挑戦しているのは、TikTokライブコマース

中国で先行し、日本では根づかなかった市場

TikTokショップのように、ライブ配信でその場でものを買える仕組みが、ようやく日本にも浸透してきました。もともと中国をはじめとするアジアではライブコマースが盛んで、15年以上前から売れていたんです。中国は物流が日本ほど発達していなかったこともあって、ネットで買うと割とちゃんとしたものが届かないという環境があって、だからこそ「この人が言うなら間違いない」というインフルエンサー的なおすすめの買い方が浸透したと聞いています。一方、日本はお金さえ出せば買いたいものがきちんと届く環境だったので、なかなか定着しませんでした。

TikTokショップでようやく日本に定着

これまでもいろいろな会社がライブコマースにトライしていて、大手も参入してはすぐに撤退していました。TikTokショップは去年の6月30日に始まって、ちょうど一年ほど経ったところで、ようやく日本にも定着してきたところです。TikTokの普及そのものが進んでいることが大きくて、わざわざ「買いたいから見に行く」のではなく、TikTokを見ていたら気づいたら配信していて、クーポンが使えるなら買ってみようかな、という動線がとてもスムーズになっているんですよね。

育成と技術の体系化を支援

まだ最大手の企業さんはなかなか腰が重いようですが、若い企業からはスタートが増えています。しかしながら、誰でも売れるかというとそうではなくて、その人の力量によって売り上げも変わってきます。そこで、TikTok事業をスタートしたい方々に向けて、出演者の育成の支援を新しく始めました。アカウントの運用は自分にはできない部分なので、そこができる会社と提携しています。ある程度の技術が身につけば、才能というより仕組みの理解で売れるようになると思うので、そこは弊社の腕の見せどころだと思っています。

テレビ通販との違いはコメントのやり取り

テレビ通販とやり方は非常によく似ていますが、お客さまとのコミュニケーションの深さは全く異なります。 こちらではコメントを通じたリアルタイムの掛け合いが売り上げを大きく左右します。一方、テレビ通販ではそこまで双方向のやり取りができないため、この双方向性こそが一番の相違点です。

プレゼン力を、日本全体の底上げに

「伝える力」で就職活動もうまくいく

セミナーでお伝えしているのは、何かを伝える順番や、伝えたいことをよりわかりやすく伝えることなんですけど、その力が弱い方が多くて、もったいないなと感じています。学生さんでいうと、就職活動もある種の自分のプレゼンだと思うんです。すごくいいものを持っているのに、伝え方がうまくないせいで伝わらず、就職活動がうまくいかないということが結構起きています。日本全体のプレゼン力を底上げして、そこから日本を少しでも活性化していきたいというのが、いま持っているビジョンです。

学生へのメッセージ ―「いろんな大人と話す」特権を使う

学生時代は、同じカテゴリーの人とばかり一緒にいることが多いと思うんですけど、できるだけいろいろなジャンルの人、特に大人の人とコミュニケーションを取る機会をたくさん持つと、視野もすごく広がりますし、就職活動にも役立ちますし、就職してからも役立つと思います。なかなか大人になると構えてしまうところがあると思うんですけど、学生さんだったら「話を聞くよ」「一緒にご飯食べよう」と言ってもらいやすいので、その特権を使って、いろいろな大人とたくさんコミュニケーションを取っておくといいんじゃないかなと思います。ご親族の友人でも、サークルの先輩でも、卒業したOBの方でもいいと思います。一人の大人とつながると、そこからまた広がっていくので、怖がらずに話しておくことをおすすめします。

編集後記

今回のお話で印象に残ったのは、「説明できることと、売れることは別もの」という気づきです。私自身、就職活動でのプレゼンや面接を考えると、うまく話すことばかりに気を取られがちですが、相手が「欲しい」「会いたい」と思うポイントを作ることの大切さを教えていただきました。学生の特権を活かしていろいろな大人と話す、というアドバイスも、さっそく実践してみようと思います。貴重なお話をありがとうございました。