インタビュー

「デジタル化のラストワンマイル」をつなぐ。フィリピンでの原体験から始まった創業ストーリー

「デジタル化のラストワンマイル」をつなぐ。フィリピンでの原体験から始まった創業ストーリー
PROFILE
株式会社テクルーズ 代表取締役社長
大野 喜士

ITとの出会いは、フィリピンでの原体験から

ネットが止まる現場でITの大切さを知った

もともと私は、キャリアの原点としてインフラ系のエンジニアをしていました。ITの業界に入ったきっかけは、大学を卒業した後にフィリピンに渡ったことです。現地の日系企業に採用していただき、そこでインターンのような形で働かせていただいたのが最初でした。

当時のフィリピンでは、ネットが2日間ぐらい使えなくなってしまうことも珍しくありませんでした。そういった不安定な部分が、仕事にもかなり影響していたんですよね。その頃の私は、ほぼ素人のような状態でパソコンの管理などを担当していたんですが、いろいろな仕事をするうえで、ITインフラはどの業界であっても必要になると実感しました。

どんな職業であっても、ITがなければ仕事ができないくらい、世の中に浸透しているものです。だからこそ、自分もこの分野に仕事として携わりたいと思うようになりました。

身近な相談から見えた、届いていない現場

父や友人からの「ITの相談」が原点に

帰国した後は、実際にエンジニアとしてキャリアをスタートさせました。普通に事業会社で会社員として働いていたのですが、自分の父親も含めて、周りで起業する人間や会社を始める人間が沢山いました。

そうした人たちからITに関して「どうしたらいいんだろう」といった相談をもらうことが増えていきました。私からすると簡単な話であっても、専門でない人からすると難しいことがたくさんある。そこに、意外と大きな需要があるんじゃないかと感じるようになりました。

大企業のデジタル化はどんどん進んでいく一方で、中小企業や個人事業主のところまでは、なかなかそれが回ってきていない。そう感じていたので、まだ手が届いていない部分にこそ、IT化や業務効率化を浸透させていきたいと思うようになりました。大きい会社と小さい会社が取引をする際に「うちは紙じゃないとできません」となってしまう場面も、デジタル化できれば全体が効率化していく。そうすれば世の中がもっとよくなるんじゃないかと考えて、その思いで創業したのがきっかけです。

デジタル化のラストワンマイルをつなぐ

システム化されずに残ったアナログ業務に向き合う

弊社は「デジタル化のラストワンマイルをつなぐ」ということをミッションに掲げています。少しわかりにくい表現かもしれませんが、システム化できていない、最後まで残ってしまっているアナログな業務のところをデジタル化することで、業務全体が一貫してデジタル化され、より効率的になるんじゃないか。そういう思いを込めています。

提案するだけでなく、自分たちも手を動かす

弊社の強みとしては、コンサルティング的な立場で新しい企画やシステムの提案をおこなうこともありますが、それだけでなく、実際に自分たちが手を動かして作業もするというところがあります。そういった現場主義な部分や、他部署との調整のような、少し泥臭い部分も行っているのが強みです。

ITの専門の人がいなかったり、総務の人が兼務でやっていたりする会社は結構あります。私自身も、会社になって初めて専門の担当者として入社したような経験があるのですが、そういった現場ではどうしても人のリソースが足りていません。だからといって、会社の人員計画としてすぐに人を増やせるわけでもない。そうしたなかで新しいツールやシステムを導入していく際に、私たちが実際に手を動かして対応できることが、いちばんバリューを発揮できるところだと感じています。

紙文化が残る現場にこそ届けたい

対象となるのは、規模で言うと100名くらいまでの企業です。業種は基本的に問わないのですが、どちらかというと建設系やメーカーが多い印象です。まだサーバーが会社の中にあって、クラウド化できておらず、メンテナンスが大変になっている会社さんも多くあります。そういった会社は、やろうと思っていても人手が足りず、そこまで手が回っていないことが多いんですよね。

全国展開を目指すなかで見えている課題

地方企業にこそサービスを届けたい

こういったサービスを展開していくうえで、今後は地方の企業もターゲットになっていくと思っています。全国的に見ても「やりたいけれどできていない」という会社さんは多いはずなので、そういったところにどんどんサービスを提供して、全国展開していけるような形を目指していきたいと思っています。

認知の低さと、ITへの投資意識

課題は大きく2つあります。1つ目は、私たち自身がまだ地方での認知を上げられていないことです。企業から見ると、そもそも存在をあまり知られていないという状況です。もう1つは、企業自身がitに対してお金をかけようというマインドをあまり持っていないケースが多いことです。

変えなくても、今のところは何も困らずにやれている。そう感じている企業も多いと思うのですが、実際はもっとこうすれば楽になるという部分がたくさんあります。とくに都心の企業だと情報も入ってきやすく、なんとなく前に進めていけるものですが、地方の場合はそれが難しい。だからこそ、ただ営業してサービスを売り込むというよりも、業務における相談というところから入っていきたいと思っています。

就職活動をする学生へ

やりがい探しより、一緒に働く人を見てほしい

今の学生さんは、就職自体はしやすい環境にあると思います。新卒の条件や待遇もよくなってきていて、ハラスメント対策なども進み、いわゆるブラックな企業は減ってきている。だからこそ「いい企業」に入りたいと思う人も、その分増えてきていると思うんです。

そのなかで何を基準に選ぶかというと、私は一緒に働く人を見たほうがいいと思っています。事業内容や条件ももちろん大事ですが、結局は人と人とが働くものです。経営者はもちろん、面接の途中で出てくる若手社員や部署のトップの様子から、少しずつその企業のイメージが見えてくると思うんですよね。企業が掲げているポリシーや理念といった企業文化・風土は、面接でもあらわれます。そういった雰囲気を感じ取りながら、なるべく自分に合う会社を選んだほうが、長く働くという意味では大事なんじゃないかと思います。

やりがいから会社を探すのは、正直なところ難しいと思っています。仕事は基本的に、自分がやりがいを得るためというより、お客さまのためにするものです。そこが自分のためという方向にずれてしまうと、会社の本来の目的ともずれてしまう。やりがいは、後からでも見つけられるものだと思うので、学生時代からよく聞く「やりがい」という言葉に、あまりとらわれすぎなくてもいいのかなという気もしています。

リーマンショックが教えてくれたこと

大学1年のときに、アメリカでリーマンショックがありました。それまでは団塊世代の定年退職が増えて、新卒が入りやすいと言われていた時期だったのですが、4年生の先輩たちが内定取り消しを食らう姿をたくさん見たんです。大学さえ出ていれば普通に就職できるものだと思っていたので、その光景を見て、当たり前だと思っていたことは当たり前じゃないんだと感じました。

それなら、好きなことをもっとやりたいと思うようになって、大学在学中に海外旅行やボランティア活動をするようになり、そのなかで海外に住むことや人と関わることに興味が出てきました。絶対に就職しなければという思いもなかったので「行けるときに行っておくか」というくらいの気持ちで、卒業前に行き先を探していたところ、たまたまフィリピンの日系企業で募集があり、参加を決めたのが始まりです。かっこよく聞こえるかもしれませんが、あの不遇な就職の時代に、周りで頑張って就職を決めていった人たちのほうが、本当はすごいことだったと思っています。

編集後記

今回のインタビューを通して、原体験から生まれた課題意識がそのまま事業に結びついている点が、とても印象に残りました。とくに「やりがいより一緒に働く人を見る」という視点は、自分自身の就職活動にもすぐに取り入れたいと感じています。リーマンショックという時代の転機を、行動のきっかけに変えていったお話からも、大きな学びをいただきました。貴重なお話をありがとうございました。