インタビュー

就活を辞めて選んだ道。二万円しかなかった日々を越えて、ウェブでビジネスに「愛」を届ける

就活を辞めて選んだ道。二万円しかなかった日々を越えて、ウェブでビジネスに「愛」を届ける
PROFILE
株式会社Lover 代表取締役
塙 愛斗

アフィリエイトから始まった、起業への道のり

大学時代はサッカー漬けだった

高校時代はずっとサッカーをしていて、全国出場を目指していました。起業のことなんて、まったく考えていなかったですね。関西の大学に進学したあともプロサッカー選手になりたくて、サッカーをするためだけに東京に出てきて、本田圭佑さんがオーナーを務めるチームに加入しました。

東京に来てから、少し景色が変わりました。街のキラキラした雰囲気やビジネスの熱気を肌で感じているうちに、ふと大学の時に仲良くしていた先輩の姿を思い出し、18年続けたサッカーではなくビジネスがしたいと思うようになったんです。プロの壁も厚く、一年でチームとの契約更新に至らず退団することになってしまって、その後の就職活動も思うようにいきませんでした。もうこれは起業するしかないなと思い、就職活動はそこでやめました。

先輩の生き方に触発された

思い返せば、起業に興味を持った最初のきっかけは、大学一年生のときに出会った同じ学部の一つ上の先輩の存在が大きかったです。その先輩は美容サロンや脱毛サロン系の事業ですでに起業していて、一年生のあいだずっと一緒に過ごしていました。こんな生き方があるんだ、こんな仕事があるんだと触発されて、当時から漠然と起業に興味を持つようになりましたね。東京でその記憶が蘇ったことが、最終的に起業へ踏み切る大きな後押しになりました。

お金がなくて始めたアフィリエイト

大学生でお金もなく、それでも自分で事業をしたいと思ったときに、一番手軽に始められたのがアフィリエイトでした。人も雇わず、自分の知識だけで発信できるビジネスなので、起業の勉強がてらやってみようと思ったのがきっかけです。

当時は日中ずっとサッカー漬けでしたが、練習後の夜中やオフの時間を削ってパソコンに向かい、大学時代からずっとアフィリエイトでメディアを運営していました。

そうして被リンクや広告まわりで露出が増えていくと、企業とのやり取りも増えていきました。法人化した方が信頼性も増すのではないかと思い、アルバイトで貯めたなけなしの30万円を使い、起業に踏み切りました。

正直にいうと、アフィリエイトの結果自体はまったく出ませんでした。生活費を稼げるところまでもいかなくて、ある意味勢いで法人化してしまったというのが本当のところです。ただ、アフィリエイトでのメディア運営は苦戦しましたが、そこで泥臭く培ったSEOやITの知見、検証のプロセスが、結果的に今の受託事業(クライアント支援)の強力な武器になっています。

自分が始めたころのアフィリエイトは、すでにジャンルによらず強い法人や大手メディアが参入していて、個人が稼ぐには限られた市場と戦うしかない状況でした。そこに労力を割くのは少しナンセンスだなという気持ちもありました。

制作とマーケティングを一気通貫で

現在の事業の柱

現在は、ホームページ制作を軸に、SEOをはじめとしたマーケティング支援、そしてウェブサイトの構築・運用までを手がけています。ウェブ制作については独学で身につけた部分が大きく、SEOやウェブマーケティングについては、今も下請けという形でSEOマーケティング会社と連携しながら、学びつつ実践している段階です。

制作とマーケティングの分断をなくしたい

これから力を入れていきたいのは、ウェブ制作とマーケティングの分断をなくすことです。ホームページ制作は作って終わりになりがちで、逆にマーケティング支援は数字には表れるものの、クリエイティブの部分に貢献できていないという課題を感じてきました。

数字だけ出ても、ブランドの魅力が伝わらなければお客さんにファンになってもらうことは難しいと思います。逆に、綺麗なサイトを作っても見られなければ意味がないと思うんです。だから僕は、両方をまるっと引き受けて『本当に魅力的で結果が出るもの』を「愛」を持ってお客様に届けていきたいです。

クリエイティブやブランディングで魅せながら、数字の面でも集客支援ができる。制作からマーケティングまでを一気通貫で引き受けられる体制を、これからもっと充実させたいと思っています。

キーワード対策からプロンプト対策へ

AIの発展は、間違いなくこの業界の働き方を変えていると感じています。SEOはすでにLLMO(大規模言語モデル最適化)に移り変わりつつあって、これまで主流だったキーワード対策から、ユーザーがどんなプロンプトを投げるかを逆算したプロンプト対策に変わっていくと考えています。

どれだけAIを有効活用して制作にいかせるか、そしてAIが担う部分と人が見るべき部分のバランスをどう取るか。効率も含めて考えていかないといけないテーマだと感じていますね。

全財産が二万円になった日

家賃も払えなかった駆け出し時代

創業前後で一番苦しかったのは、間違いなくお金です。就職活動をやめて大学を卒業したあとは、アフィリエイトをしているとはいえほぼ無職のような状態で、自分で家賃を払えなくなり、親に借金をしました。マーケティングで稼ぐと言っていたのに稼げていない、そんな状況を正直に伝えて頭を下げましたね。アルバイトを何個か掛け持ちしながら、空いた時間で自分のビジネスを続けていました。

全財産二万円、十日後には家賃

会社を作ってからも、お金の悩みは尽きませんでした。全財産が二万円になり、十日後には家賃を払わなければいけないという状況も経験しています。そのときはとにかく営業をしまくって、ホームページを制作する前提で着手金をいただき、なんとか生き延びるということもしていました。

この経験から、一円単位でお金を気にするようになりましたし、お金の大切さを本当の意味で実感しました。

制作事業と自社サービスの二本柱

元請けの案件を増やしながら、並行して自社サービスも作っていきたいと考えています。今のところSaaSのような形を想定していますが、自分が実働しなくてもLoverを通じてお客さんに価値を提供できる、プラットフォーム側に立つサービスを育てていきたいですね。制作の事業と自社サービス、この二つを両輪で回していくのが今後のビジョンです。

現在は従業員を雇わず、一人で数社の保守運用を含めた案件を回している状態です。そろそろ人を雇わないといけないとは思いつつ、今の規模であれば一人でも十分に回せる範囲だとも感じています。

学生へのメッセージ|自分の心に従った先に後悔はない

就職活動をやめて、新卒カードも手放しました。周りからはほとんど反対されましたが、それでもやりたいことをやってきて、今、決して大きく成功しているわけではないものの、自分の人生を自分で決めてきて良かったと心から思っています。

もし周りの意見を聞いて就職していたら、嫌なことが起きたときにきっと人のせいにしてしまっていたと思うんです。逆に、自分で選んだ道であれば、大変なことが起きても自分の責任として受け止められる。人のせいにせず自責で捉えられることは、自分にとって大きな意味があったなと感じています。

正直、しんどいときには「就職しておけばよかった」という考えがよぎることもあります。とくに何かに失敗したときは本当によぎります。それでも次の日になると、これでよかったなと思えるんです。だからといって、全員に就職をやめた方がいいと言いたいわけではありません。就職が向いている人も間違いなくいますし、わざわざいばらの道を選ぶ必要はないと思っています。ただ、自分の心に従って選んだ道であれば、どんな結果になっても納得できる。そう思いますね。

編集後記

今回、株式会社Loverの塙様に取材をさせていただきました。就職活動という一般的な選択肢を手放し、お金に苦しみながらも自分の意志で道を切り拓いてきたお話が印象的でした。とくに「自分で選んだ道なら、嫌なことがあっても自責にできる」という考え方は、進路に迷う学生にとって大きなヒントになるのではないかと感じます。制作とマーケティングを一気通貫で担う体制づくりや、AI時代を見据えたプロンプト対策への言及からも、常に一歩先を見据えて挑戦し続ける姿勢が伝わってきました。今後の株式会社Loverのさらなる発展を、心より応援しております。