インタビュー

研究者になるより、社会に実装する道を選んだ

研究者になるより、社会に実装する道を選んだ
PROFILE
AeroFlex株式会社 代表
堀井 樹

筑波大学から生まれた挑戦

学問は人の役に立ってこそ

私はもともと、筑波大学の工学システム学類に所属していました。将来は研究者になりたいという思いがあって、そういった志を持って入ったんですけど、我々が専攻する工学という分野は、研究の場というよりも、人の役に立って初めて学問になるという側面が強いんですよね。

社会貢献というところに重きを置くと、研究者というよりも、こういうスタートアップという形で新しい技術を世の中に実装していく橋渡しをした方がいいんじゃないかと気づきまして、大学3年生のときに会社を立ち上げて、今に至ります。

大学のうちから研究を積んでいた

もともと大学の専攻が機械工学なので、基礎的な部分は大学で勉強しつつ、会社を立ち上げる前から研究活動のようなことはしていました。学会で発表したり、論文を投稿したりということは、大学1、2年のうちにも始めていたんですよね。そこで基礎的なところを身につけつつ、実務的な部分は会社を立ち上げてから、お客さまと接するなかで身につけていったという形になります。

次世代モビリティをつくる

プロペラ型だけがドローンじゃない

弊社がメインでやっているのは、次世代モビリティという分野です。平たく言うとドローンやロボットなんですけど、普通ドローンというと、プロペラがいくつも付いたものをイメージすると思うんですよね。我々が開発しているのは、飛行機型やヘリコプター型といったもので、どちらかというと直接的に人の役に立つところを目指しています。

現状お取引をいただいているのは建築現場などで、今すぐに使えるところをメインに製品開発を行っています。そのほかにもJAXA(宇宙航空研究開発機構)と連携して、火星で飛ぶドローンなど、将来的な技術開発にも積極的に取り組んでいます。

実証実験で終わらせない

弊社の理念は、社会実装をきちんと行うことです。研究や実証実験で終わらせるのではなく、現場まで導入して、そこのサポートをきちんと行い、実装するというところが最終的なゴールになっています。

「動く」と「使われる」の間にあるもの

資金繰りに苦しんだ最初の日々

最初はやっぱり資金繰りが大変でした。会社法人になると人件費がかかったり、研究開発費だけでもかなりの金額がかかったりして、それが1回だけでなく毎月かかっていくものなので、最初にお客さまがつくまでは大変な部分もあったかなと思います。ただ、お客さまの要望に応えつつやっていくと、業界のなかで信用が徐々に蓄積されていくんですよね。一つひとつ課題をこなしていったところ、資金繰りの課題も徐々に解決していきました。

開発現場の成功と現場の成功は違う

実は、我々が思っている「動く」とお客さまの現場で「動く」は、少し違うんですよね。我々は実験室や開発の現場で動いた段階で、一度は成功したという感覚になるんですけど、実際はお客さまが使えるかどうか、そのあとも使い続けられるかどうかというところで、開発者と使用者のあいだにギャップがあります。その部分を埋めるのに苦労しました。

これからのビジョン

依頼される仕事から、自分たちの製品へ

直近の課題は、お客さまを増やしていくことです。現在は大手の自動車関係や重工関係など、さまざまなお客さまがついてくださっているんですけど、そういった会社から依頼を受けて、モビリティに関する技術を開発していくのが主なスタイルになっています。ただ、言われた仕事を引き受けるだけでなく、自分たちの思想を持った製品を世の中に出していくところが次の課題かなと思っています。

学生時代とメッセージ

ごく普通の大学生だった

やっていることが専門的でマニアックだったというのはあるんですけど、ごく普通の大学生でした。友達と遊びに行ったり、サイクリングで数十km走りに行ったり、バイクでツーリングしたりと、普通の学生でしたね。そのかたわらで、モビリティのシステムや航空といった分野が自分のなかで面白かったので、勉強も続けていました。

一つのことをやり抜いてほしい

いろいろな道があるので、私たちのような、こういうやり方で起業した先輩がいるということを知ってもらえると、ある意味それがモデルになったりする部分もあると思っています。この業界に限らず、チャレンジしていく人たちの模範になれる存在でありたいですね。

大学に入るときに、自分の好きなことがまだ見つかっていない人も多いと思うんですけど、一生かけてもやれることを一つ見つけてもらいたいなと思います。そして、それを進めていくなかで困難があっても、一度は後先を考えずにやり続けて、やり抜いてみることを突き詰めてほしいなと思います。

弊社は日本ではほぼ珍しい、ロボットやモビリティを一貫してつくっている会社です。ドローンやロボットのベンチャーは、実証実験がやっと終わったところで止まってしまうことが多いんですけど、我々は重工や自動車メーカーなど、いろいろなお客さまがいるので、お客さまの手に渡るところまで仕事として行うことができます。エンジニアとして何かにチャレンジしてみたいという方には、かなり面白い環境だと思うので、おすすめです。

編集後記

「研究者になるか、社会実装をする側になるか」という選択を、大学3年生という早い段階で決めた堀井さんのお話が印象的でした。実験室での成功と、現場での成功がまったく違うという気づきは、技術者としての視点だけでなく、事業をつくるうえで欠かせない視点だと感じます。資金繰りの苦労を一つひとつ乗り越えながら、依頼された仕事から自分たちの思想を持った製品づくりへと進もうとする姿勢に、これから挑戦する私たち学生も学べる部分が多いと思いました。