インタビュー

強い人材紹介会社は、仕組みでつくる_株式会社AO・吉村直樹が語る、事業改善と新規事業立ち上げの勝ち方

強い人材紹介会社は、仕組みでつくる_株式会社AO・吉村直樹が語る、事業改善と新規事業立ち上げの勝ち方
PROFILE
株式会社AO 代表取締役社長
吉村直樹

キャリアの原点は、大学時代の就職活動にあった

私が人材業界に関わるようになったきっかけは、自身の就職活動でした。学生時代、外資系企業から早い時期に内定をいただき、比較的早く就職活動を終えました。一方、国内企業を中心に受けていた友人たちは、入れ替わるように就職活動が本格的に始まっていく時期でした。すると、「どうやって企業を選べばいいのか」や「面接では何を伝えればいいのか」、「どうすれば内定を取れるのか」など、友人たちから相談されることが増えていきました。

 

それをきっかけに学生向けの就職活動支援団体を立ち上げ、最終的には、約500人規模となりました。その団体では、大手企業の採用担当者30名ほどにも参加いただき、学生と企業が直接接点を持てる場を作っていました。これが、私にとっての人材業界との最初の接点でした。

 

その後、経営コンサルティングや人材ビジネスの事業責任者、取締役などを経験しながら、20年以上この業界に携わってきました。

20年以上の経験から見えてきた人材紹介業界の大きな課題

長く業界に関わっていく中で、非常に優秀なコンサルタントには何人も出会いました。彼らの特筆すべき能力は、候補者と少し話をするだけで、この人ならこの会社が合うと判断できたり、企業から求人を提示されれば、この求人なら、こういう人を集めれば決まるなどが直感的にわかっていたりするところです。

 

ところが、彼らに、「なぜ、そう判断したんですか?」と尋ねても、「経験ですね」や「なんとなくわかるんです」という抽象的な答えを返されることが少なくありません。言い換えるならば、人材紹介会社の競争力は、コンサルタント個人の経験やセンスに依存しているとも言えます。私はこのことが、人材紹介業界の大きな構造的課題だと考えています。

トップコンサルタントの「感覚」を「型」に変える

弊社では、「AOメソッド」と呼ぶ、大手人材会社などでトップクラスの成果を出してきたコンサルタントたちの知見を集めた「基本となる型」を活用しています。実際の事例を挙げますと、年間売上2,000万円の50代のコンサルタントにAOメソッドを伴走注入した結果、翌年度8,000万円の受注を達成し、トップクラスの受注実績へと変化しました。

 

「AOメソッド」を構築する際には、大手人材会社などでトップクラスの成果を出してきたコンサルタントたちが、候補者との面談の際に、何を聞くのかだけでなく、話を聞く順番をどう構成しているのかや求人紹介をするタイミング、さらには言葉選びはどうしているのか、どんな質問であれば候補者は本音を話しやすいのかに至るまで細かく分析しました。そして、それを再現性のある形式にまとめ、体系化させたことにより、現在では50以上に及ぶ人材紹介業務に関して活用できています。

 

しかし、汎用性の高いメソッドを活用する中で求めていることは、全員を同質化させることではありません。まずは、成果を出すための基本の「型」を身につけてもらいます。そして、その上に、ひとりひとりが自分なりの強みを加えていくことこそ肝心なのです。わかりやすく例えるなら、武道における「守破離(基本を身につけ、独自のアレンジを加え、オリジナルにしていくこと)」に近い考え方です。

次に挑んでいるのは「改善する力」そのものの仕組み化

AOメソッドを多くの会社に導入していく中で、もうひとつの大きな課題が見えてきました。それは、会社のどこに問題があるのかを見抜くこと自体が、コンサルタントの能力に依存していることです。

 

例えば、売上が伸びていない人材紹介会社があるとしましょう。その場合、一般的に考えると、面談数を増やしましょうやもっとスカウトを送りましょう、面談時のトークを改善しましょうなどの話になりがちです。しかし、まったく別のところに原因がある可能性も考えられます。例えば、扱っている求人がそもそも魅力的ではない、あるいは、企業の本当の魅力や採用背景を理解できていない、企業が求めている人物像を正しく把握できておらず、要件ギリギリの候補者ばかり集めている、候補者に懸念点があるにも関わらず、それを推薦文や企業への説明で払拭できていないなどのそもそもの問題点が隠れているかもしれないのです。つまり、それらを見落としたまま、目先の改善を施したところで、いくら面談数を増やしても成約に繋がらないという現状はそのままでしょう。要するに、本当に優秀な事業責任者やコンサルタントとは、全体の因果関係を見ながら、最初に直すべき場所はどこかを判断しているものです。

優秀なコンサルタントに見てもらわなくても改善できる会社を作る

現在、弊社が進めているのは、改善の判断そのものを仕組み化することです。もちろん、単に、会社の売上やKPI(ゴールに向けたプロセスの進捗度合いを評価するための中間指標)を見るのではありません。求人の内容や企業理解、候補者の集客状況、面談内容、推薦、選考通過率、決定率、担当者ごとの差などを横断的に見て、どこがボトルネックなのか、なぜその数字になっているのか、何から改善するべきなのかを判断できるようにするための枠組みを作るイメージです。言わば、トップクラスの人材紹介コンサルタントがおこなっている営業技術だけではなく、事業分析や課題発見、原因の所在を求人や企業理解、集客対象、面談、推薦などの各プロセスごとに見ていき、どこに問題があるのかまで掘り下げ、最も影響しているところから改善させていくための改善策の立案、実行後の効果検証に至るまでの一連の改善プロセスを体系化し、個人の資質に依存せずとも再現できる仕組みの構築を目指しているのです。

人材紹介会社の改善会社から「事業を作る会社」へ

実際に、上場企業グループによる新たな人材紹介事業の立ち上げ支援にも取り組んでいます。例えば、地域に強固な顧客基盤を持つ企業であれば、そのネットワークや地域で培った信用力を人材紹介事業の競争優位性に転換できます。弊社では、こうした既存事業の強みを踏まえ、事業戦略の策定から営業・集客の仕組みづくり、人材育成、KPI管理までを一貫して支援しています。

人材紹介会社を作ることと、勝てる人材紹介会社を作ることは違う

人材紹介事業は、許可を取得し、人を採用し、求人を集めれば始められます。しかし、事業を始めることと、継続的に利益を生み出せる人材紹介会社を作ることは、まったく別のものです。誰に対して転職支援をするのか、あるいは、どのような企業を顧客にするのか、どこの領域であれば、自社の既存事業とのシナジー(相乗効果)が生まれるのか、はたまた、求人をどう獲得するのか、企業から何をヒアリングするのか、候補者をどう集めるか、面談で何を確認するのか、どのタイミングで求人を紹介し、どのように推薦するのか、何をKPIとして管理するのか、未経験で入社した社員をどう育成するのかなどの要点をはじめから設計しておかなければなりません。

人材紹介業界に20年以上携わってきたからこそ最初から知っていれば避けられる失敗が分かる

実際に、既存の人材紹介会社様を支援していく中では、創業時にこの設計をしておけば良かったという問題を数多く目にします。

 

例えば、売上が大きくなってから教育制度を作ろうとする、トップ営業のやり方を何年も個人の資質任せにさせてしまう、数字だけを追いかけ、求人の質や企業理解を管理していない、担当者によって面談や推薦の品質がまったく違うなどです。しかし、これらの問題を会社が大きくなってから直そうとすると、かえって非常に大きなコストがかかります。だからこそ、新しく人材紹介会社を作るのであれば、最初から強い会社の構造で作っておくことが重要です。事実、既に何百人規模になった会社を変革することよりも、はるかに実現しやすいのは間違いないでしょう。これも、弊社が現在、人材紹介事業の立ち上げ支援に力を入れている理由のひとつです。

AIを入れれば、人材紹介会社が強くなるわけではない

人材業界でもAI活用が急速に進んでいます。スカウトメールや推薦文を書かせる、面談内容を要約させるなどのAIを使った業務効率化は、今後当たり前となっていくでしょう。しかし、私はAIを導入するだけでは、人材紹介会社は強くならないと考えています。

 

例えば、そもそもの求人の魅力を理解できていない会社が、AIにスカウトメールを大量に書かせたとしても、本質的な問題は解決しないでしょう。事実、企業の募集要件を正しく理解できていなければ、どれだけ面談を効率化させたとしても、決定率は上がらないと言えます。つまり、大切なのは、AIを導入すること自体ではなく、何を改善すべきかを正しく判断できることです。そのためには、業界トップクラスのコンサルタントが持つ専門知識や判断基準、実際の改善事例を体系化し、AIがそれらを参照・活用できる状態を作ることが重要です。AIの性能だけでなく、そこに組み込む専門性こそが、企業の競争力を左右すると考えています。要するに、「AIは判断と実行を高速化させるための道具」だと思っているのです。

目指しているのは、特定の天才がいなくても強い会社

私が最終的に作りたいのは、弊社がコンサルティングしなければ改善できない会社ではありません。むしろ、特定の天才的なコンサルタントがいなくても、業界トップレベルの改善思考を使える状態です。私がこの業界で20年以上に渡って蓄積してきた経験やトップコンサルタントたちの知見、さらには、各社で実際に行った改善事例を蓄積していくことで、それを実現させたいと思っています。トップ営業の営業力を型にしたのが、これまでの「AOメソッド」だとすれば、これからは、トップクラスの事業責任者やトップコンサルタントの会社を改善する力そのものを型にしていくことだと考えています。それが実現できれば、人材紹介会社の成長の仕方を大きく変えられるとも思っています。

 

強みのある人材紹介会社を増やしたい

日本には非常に多くの人材紹介会社があります。しかし、会社数が増えること自体に、大きな意味があるとは思っていません。弊社が増やしたいのは、候補者から信頼される会社であり、企業様からは採用について最も相談したいと思われる会社であり、社員が成長できる会社であり、きちんと利益を出し、長期的に事業を続けられる会社です。言わば、「強みのある人材紹介会社を増やしたい」のです。

編集後記

今回のインタビューで特に印象的だったのは、既存企業の改善だけでなく、新規での人材紹介事業立ち上げに対する支援をおこなうなど、自身の経験や知識をいかに活用させるかという姿勢でした。

 

「AOメソッド」としてトップコンサルタントの感覚を独自の「型」に落とし込むだけでなく、その先まで含めた改善のノウハウを誰しもが使える「再現可能な仕組み」にすることで、仕組みを活用することで強い人材紹介会社を作りたいという強い気持ちが伝わってきました。