大学中退、韓国料理店の開業
私が最初に事業を始めたのは、大学を中退した後の2012年でした。大阪で、韓国料理店をオープンしたんです。K-POPの流れもあって、いけるんじゃないかと思っていたんですけど、正直、事前の読みが浅かったんですよね。結局、ワンオペで2年ほど頑張ったんですが、続けられなくなって店を閉めることになりました。
失敗した後にITへ
店を閉めた後は、正直あまりお金もなくて。そこから始めたのが、ネットのビジネス領域でした。公式LINEを活用して、売り上げに直結するような運用代行やコンサルをするようになって、それがうまくいったので、2019年12月に法人化して株式会社INFLUを設立しました。
いまの37歳という年齢からすると、当時はまだスマートフォンが出たばかりの時期で、周りに詳しい人もほとんどいなかったんです。だから、そのあたりの知識は本当に独学というか、実際に手を動かしながら身につけていった感覚が強いですね。
LINE連動ECの「Lea」が、ものづくりを支える
いまは大きく3つの事業を柱にしています。1つ目が、公式LINEでネットショップをつくれる「Lea(レア)」というサービスです。LINEの友だち追加から注文、決済までを一つで完結できるのが特徴で、EC単体としての展開もできますし、実店舗との相性もいいんです。
たとえば飲食店や美容室では、公式LINEをあまり活用できていないことが多いんですよね。来店してくれたお客様にLINEで友だちになってもらって、商品を宣伝して買ってもらう。これがLINEを使うと、すごく簡単になります。また、SNSやDM、電話、FAXなど、いろいろなところから注文が来て管理が大変だった、という店舗さんも、Leaを一つ導入すれば注文が一元化されて、オペレーションが楽になるんです。
店頭受け取りの機能も強みの一つです。たとえば美容室なら、次回の来店のタイミングで商品を受け取ってもらう、という使い方もできて、次回来店を促すマーケティングツールとしても使ってもらっています。
こうした仕組みを大きな企業であれば自社で開発したり、複数のツールを組み合わせたりできるかもしれません。でも、個人店にはそんな予算はかけられないんですよね。自分自身が最初に店をやっていたとき、月1万円以上のコストを払うのがどれだけ大変だったかを知っているので、Leaは月額3,000円で利用できる形にしています。いいものをつくっている人たちに、しっかり届くツールでありたいと思っています。
SNS集客と「人づくり」
2つ目が、Instagramを軸にした集客のスクール事業です。ここは6年ほど関わり続けている領域でもあります。認知を広げても、それが集客にまったくつながらない、来店にまで結びつかない、という課題を抱えている事業者は多いんです。認知を広げた後、どうやってお客様に来てもらうか。そのためのマーケティング構築とデータの追い方から逆算して提案したり、実際に構築を手伝ったりする。ここまでできる会社は、そう多くないと思っています。
この事業でとくに大切にしているのは、マーケティングの考え方そのものをみんなに持ってもらうことです。認知が取れれば集客につながる、という考え方がベースにある人は多いんですが、そのあとリピートしてもらうところまでをセットで考えることが大事だと思っていて。人自身がマーケティングについての考え方を変えていく、いわば「人づくり」の授業だと捉えています。
心斎橋の「焼肉処 味来」
3つ目が、大阪・心斎橋で営んでいる「焼肉処 味来」です。心斎橋はアジアでも有数の繁華街で、これから伸びていくエリアだと思っています。和牛はインバウンドのお客様からも注目されていますし、焼肉は外食のなかでも大きなメイン市場です。この場所で自分のマーケティングをどれだけ試せるか、そこで出会う人たちとのコミュニティをどうつくるか。どちらかというと「地場づくり」という感覚でやっています。私自身、大阪で生まれ育って、最初に開いたのも韓国料理店で、在日というルーツもあるので、その恩返しのような気持ちも込めています。
Lea、スクール事業、焼肉処 味来。この3つは「ものづくり」「人づくり」「地場づくり」として、それぞれ意味を持たせながら展開しています。最近はここを土台に、企業様向けのAI活用の授業もさせてもらっていて、AIがこの3つの関係性やシナジーをより強めてくれたらいいなと思っています。
現場に売り上げが直結する提案を
LINEアカウントをつくれる、構築できるという会社はいるんですが、売り上げに直結する運用までできる会社は、なかなかいないんですよね。これはAIも同じで、AIを導入しましょうと提案できる営業力の強い会社はあっても、現場でどう活用して会社の利益につなげるかまで提案できる会社は少ないと思っています。これは、私自身がずっと一人でやってきた経験や考え方が、そのまま影響しているところだと思います。
楽しい地獄へようこそ
学生時代、宿題もろくにできないような学生で、エリートなキャリアを歩んできたわけでもありません。だから、成功法則に自分を合わせなくてもいいと思っています。やりたいことがあるなら、まずやってみたほうがいい。
私自身、学生の途中で店を始めて2年ほどで畳んでいるので、失敗しているんですよね。でも、22歳ぐらいで失敗できたことは、すごく大きかったと思っています。お金をどう回しながら売り上げをつくるか、お店が赤字でもお客様が支えてくれることがあるということ、市場調査やマーケティングの大切さ。これらは、あの経験があったからこそつかめたことでした。
失敗しないように成功を目指すというより、やりたいことがあるならリスクを取ってやってみる。次に同じ失敗を繰り返さないというルールだけ自分の中に持っておけば、積み上がっていくと思っています。大学での学びよりも、居酒屋でアルバイトしていたときのほうが学びが多かった、という感覚があるんです。現場だからこそ、自分で選んでいるからこそ、失敗も糧になるし、責任もモチベーションもついてくる。
最近は起業を目指す学生が多いと思うんですが、いつも同じ言葉を伝えています。「楽しい地獄へようこそ」と。起業はキラキラして見えるかもしれませんが、実際はとても大変です。休みもトラブルもありますし、人格を否定されるようなことも当たり前にある。それを楽しいと思える人でないと、なかなかチャンスは来ないと思っています。完璧でなくてもいいから、小さく始めてみて、現場でやってみる。それを積み上げていけば、うまくいくと思っています。
編集後記
今回のインタビューを通して、失敗を恐れずに現場で試し続けることの大切さを強く感じました。水戸さんご自身が22歳で経験した挫折を、その後の事業づくりの糧にされてきたお話は、これから挑戦しようとする学生にとって大きな励みになると思います。「楽しい地獄へようこそ」という言葉も、起業のリアルを的確に表していて印象的でした。私自身、学生起業を志す身として、成功のノウハウばかりを追いかけるのではなく、まず動いてみることの重要性を改めて学ばせていただきました。貴重なお話をありがとうございました。