インタビュー

「5年後の自分を描いたら、答えは経営だった」エンジニアのキャリアに伴走する株式会社テックワークス・小野歩さんの原点

株式会社テックワークス 代表取締役 小野歩
PROFILE
株式会社テックワークス 代表取締役
小野歩

起業を知らなかった会社員時代

同期の起業が転機に

元々は大手SIerでシステムエンジニアをしていました。両親は公務員で、私自身も国立大学から大学院に進み、大手企業に就職しているので、起業はまったく考えていなかったんです。きっかけは、同期が起業したことでした。彼と自分の一番の違いは、将来設計をしているかどうか。当時の私は会社の目標のために仕事をしていたので、そういう道があると知ったことは本当に大きかったと思います。

ビジョンから逆算した経営

同期もそうですし、ご縁があった社長さんたちはみなさん、ご自身のビジョンや目標があって仕事を選んでいたんですよね。その姿がすごく魅力的で。じゃあ自分が5年後、10年後に求めているものは何なんだろうと将来設計を描いてみたら、経営でしか手に入らないものが多かったんです。そこから準備をして、27歳で1社目を立ち上げました。今の株式会社テックワークスは3社目です。ビジョンから逆算した結果が経営だった、という感覚ですね。

エンジニアのキャリアに寄り添う事業

3つの事業を展開

弊社では、システムの受託開発、ITエンジニア向けのスクール「tecUp(テックアップ)」、エンジニアコミュニティ「tecHub(テックハブ)」の運営をおこなっています。現在の売上・利益の軸はシステム開発事業です。スクールは個人向けに加えて、法人向けのリスキリング講座としても提供しています。AIが入ってきたことで、もともとのスキルでは案件にマッチしにくくなっているエンジニアさんもいるので、AIコーディングとヒューマンスキルの両面を学べる内容にしているんです。

20人の仲間から始まった

元々は、20人くらいのエンジニア仲間で集まって「何に取り組めるだろうね」と話したのが始まりなんです。そのとき、キャリアに課題感を持っている方がものすごく多かったんですよね。私がエンジニアだった頃も、社内のキャリアパスは見えても、5年後、10年後にエンジニアとしてどうなるのかは見えづらかった。先輩にも相談しづらいんです。「小野くん、辞めるの?」みたいな話になっちゃうので。

相談からスクールが誕生

とくにコロナ禍に入ってからは、社内でも上司に会うのが1年後だったというケースもありました。であれば、社外にリアルで集まれる場があったほうがいいよねと、まずはコミュニティをつくるところからスタートしたんです。いろいろな相談を受けるなかで、キャリア形成や転職、フリーランス転向についての声がすごく多かったので、そこからスクールが生まれました。今はそれを法人向けにも広げています。

現役フリーランスが教える

教育事業の強みは3つあります。1つ目は、現役のフリーランスエンジニアとしてキャリアを積んだ方が教えているので、プロのアドバイスが聞けること。2つ目は、提携している人材企業さんが多く、転職やフリーランスの支援を確度高くおこなえることです。そして3つ目が卒業後。コミュニティがあるので、卒業した後もフリーランスに転向した後も学び続けられるし、つながりがある。これはすごく大切なことだと思っています。

開発は伴走型が強み

開発事業では、テクニカルスキルとヒューマンスキルを兼ね備えた人材が多いことが強みです。お客さま自身が何を課題と思われているのか、そのヒアリングから入るので、ヒアリングに特化しているんですよね。ドメイン理解や業務理解にも長けているので、お客さまと伴走しながら開発を進められます。コンサルと開発の両方をおこなえるところは、すごく強みにしています。

チームづくりこそ面白い

仕事は結局「人」

創業して大変だったのは、やはりチームをつくることですね。弊社もまだ30名ですし、ほかの会社や事業も含めると、かなり多くの方と仕事をしています。今どれだけAIが進んでも、結局仕事って人なんですよ。どれだけ生産性のあるチームをつくって一緒に目標を達成していくのかは、今も昔もずっと課題です。逆に、そこが一番面白いところでもあるのかなと思っています。

方向性と価値観を重視

大事にしているのは、私や会社として求める方向性と、ジョインする方が求めているものが合っているかどうか。会社のためだけではなく、ご自身のためでもあり会社のためでもある。そんな目標や数字を追えるかどうかをすごく大事にしています。価値観の部分では、挑戦すること、そして自分や顧客、組織に誠実であることを大切にしていますね。

チームのために動ける人

弊社がとくに重きを置いているのは、チームで仕事をすることです。エンジニアであっても、個人の技術や個人のためだけに仕事をしていると、なかなか市場からの価値は上がりにくいんですよね。一方で、所属している組織やチームのために何ができるのかを「For Us」で考えられるエンジニアは価値が高い。そういう人材をより多く輩出していくなら、私たち自身が模範でなければいけない。そこはすごく大事にしています。

キャリア形成プラットフォームを目指して

教育事業を大きくしたい

今の軸はシステム開発事業ですが、今後一番思いを込めて大きくしたいのは、コミュニティと教育事業なんです。ここをキャリア形成プラットフォームとして大きくしていくことが今後のビジョンです。イベントには約7年で延べ3,500人くらいのエンジニアの方に参加いただいていて、昨年からはDiscord(ディスコード)のオンラインコミュニティも始めました。今は400人を超えたくらいです。

会社員もフリーランスも

この人数を増やしながら、さらに広げていきたいと考えています。エンジニアのキャリアは、中長期的に学び続け、考え続けるものだと思うんです。会社員、フリーランス、法人化している方を問わず、弊社のコミュニティを一緒につくりながらキャリアについて学び合える。そして具体的な転職やフリーランス、法人化の支援までおこなえる。そんなプラットフォームとして、より機能させていきたいですね。

広告ゼロ、口コミで拡大

これまでコミュニティやスクールのメンバーは、基本的に口コミやリファラルで増えてきました。広告はゼロです。コミュニティなので、ある程度の質も担保したいんですよね。WebやSNSで一気に集めるよりも、紹介で「これよかったよ」という方が集まるほうが、コミュニティとしてはよくなると思っています。

キャリアに特化した場

エンジニア系のコミュニティは、日本のなかでも東京が一番多いんです。コロナ明けからオフラインのイベントも復活して、さまざまな企業や団体がコミュニティをつくろうとしています。ただ、技術コミュニティはたくさんあっても、キャリア形成に特化したものはあまりないと思っていて。オープンにキャリアについて学び合えるところが、弊社の差別化ポイントです。そこがよかったという方がリピートしてくださったり、お友達と一緒に参加してくださったりして広がっています。

転職はゴールではない

未経験からエンジニアに転職したい方や、現役エンジニアの方の相談を受けていると、転職やフリーランス転向がゴールになっているケースが結構多いんです。大学生の方なら就職がゴール、という感じですね。でも、それらは全部スタートライン。その先どうなりたいのか、どこに向かうのか。キャリアビジョンがあるかどうかがすごく重要だと考えています。

願望は知識から生まれる

キャリアビジョンをどう描くかは、やっぱりインプットしかないと思うんですよ。願望って知識なので、知らないものにはなろうとも思わないじゃないですか。社内にしかいないと、社内のモデルしか知らない。いろいろなエンジニアと触れることで「もっとこうなりたい」「こういう道もあるのか」と思えるんです。参加した方の視野が広がるイベントやコミュニティであるかどうかは、すごく大事にしたいですね。

学生へのメッセージ

働き出すと視野は狭まる

キャリアビジョンを描くことは、私個人としても今の経営にすごく生きています。キャリア支援をしていても、ビジョンがある方はまっすぐ進むんですよね。ない方はどうしても積み上げになってしまう。とはいえ私自身、キャリアビジョンを描いて社会に出たタイプではないので、社会に出る前に描かなければいけないわけではありません。ただ、働き出すと目の前のやるべきことに集中して、意外と視野が狭くなっちゃうんです。

若いうちから軸をつくる

気づくと、大学生の時のほうがいろいろな人と知り合ったり、いろいろなものを読んだりして、インプットが多かったんですよね。就職したとしても、そこがすべてではありません。1年目、2年目の若手のうちから社会とのつながりをつくったり、コミュニティに参加してみたりしてほしいです。ひと昔前なら「3年も経ってないのに早いよ」と言われた時代もありました。でも今はAIがあって、どの仕事も保証はない。自分の軸があれば柔軟に変化に対応できますが、軸がないと行き当たりばったりになってしまう。若いうちから、自分の軸になりうるものを決める努力をしてみてください。

インプットは質が大事

インプットのなかでも大事なのは質だと思います。今の20代前半の方は、SNSからの情報がめちゃくちゃ多いと思うんです。ただSNSはすべてが事実ではないですし、誤情報や偏向情報も多い。動画コンテンツって基本的にビジネスなので、それをもとにするのはちょっと危険かなと。だからこそ、リアルで会ったり、勉強会に行ってみたりしてほしいですね。ご縁やチャンスは人から来るものだと思っていて、それは学生時代以上に、社会に出てからのほうが重要になると思います。

学ぶ人と場所を決める

描いたビジョンを実現するには、学ぶ人と学ぶ場所を決めることです。学業やスポーツなら、塾に通ったり、プロを目指すなら基準のあるチームに入ったりしますよね。でも起業系になると我流の方が多いんです。おそらくSNSや起業系の動画の影響が強いんだと思います。実際はアイデアだけで事業はできないですし、起業は簡単でも経営が難しい。私にもメンターがいて、20代から経営を学ぶ場所に入っています。経営者でもエンジニアでも、どの仕事でも学ぶ人と学ぶ場所は大事ですね。

書籍からのインプットも

少し宣伝になっちゃうんですけど、私は本を3冊書いていて、日経BPさん、講談社さん、インプレスさんから出しています。学生さんにも、ITの業種でエンジニアになった方にもすごく合う内容になっています。執筆だけでも3カ月くらいかかりますし、本だと適当なことは書けないので。リアルな人と会うことと、書籍からのインプットはすごくおすすめです。

編集後記

「願望は知識」という言葉が強く印象に残りました。私自身、学生起業に関わるなかで、身近な人のモデルしか見えていないと感じることがあります。就職や転職をゴールにせず、その先を描くためにインプットの質を上げる。SNSの情報に頼りがちな自分にとっては、耳の痛いお話でもありました。「起業は簡単でも経営は難しい」という言葉からは、メンターや学ぶ場所を選び続けてきた小野さんの積み重ねが伝わってきます。まずは勉強会に足を運び、リアルなつながりからインプットを増やしていきたいと思います。