東京理科大学発のスタートアップとして
大学3年で会社を立ち上げた
合同会社KeyExpress(キーエキスプレス)は、2024年4月に創業しました。東京理科大学の中から生まれた、大学の認定を受けたベンチャー企業です。私自身、大学3年生のときに会社を立ち上げていて、一緒に働いているメンバーも同じくらいの20代前半が中心です。もちろん自分で会社を起こすのは初めてだったので、やり方もまったくわからない状態からのスタートでした。
「バズらせ屋」への違和感
創業した2024年当初は、法人や店舗がSNSのアカウントを持ち、集客や認知に活かそうという流れが広がっていた時期でした。ただ当時は、とにかくインプレッションを取ってバズらせれば、たくさんの人に知ってもらえるという考え方が強かった印象がありますね。言葉はあまりよくないかもしれませんが、いわゆる「バズらせ屋」のような業者が乱立していたんです。
会社の資産になるSNS運用
そこで弊社は、SNSマーケティングの運用の仕方をあらためて定義し直そうと考えました。運用のなかでインサイトやデータを追い、それを分析しながら再現性のある施策を組み立てていく。いわゆるデータドリブンなやり方です。一時的な話題づくりで終わるのではなく、運用を通じて得られたデータやノウハウが蓄積され、1年、2年と続けるなかで会社の資産になっていく。そんなSNSマーケティングを実現したいという思いから、事業をスタートさせました。
代行ではなく「内製化」を軸に
お客様が自走できる形へ
弊社はSNSマーケティングに関わる業務を全般的に手がけています。そのなかでも特に重きを置いているのが、SNS運用の「内製化」です。運用代行は私たちが代わりに運用をおこなうやり方ですが、内製化はお客様自身が社内で運用を自走できるように支援するやり方です。
外部に任せきりにするのではなく、自社のなかにノウハウを蓄積していくことが、長期的には大きな強みになると考えています。弊社では創業当初からこの内製化を大切にして、研修や教育にも取り組んできました。
自社開発のSaaSが2本目の軸
最近とくに力を入れているのが、自社開発のSaaS事業です。現在は、Googleマップの店舗情報管理や口コミ返信、再来店促進などを支援する「KeyExpress Reply」と、店舗の売上や顧客データを簡単に可視化・分析できる「データパレット」の2つを展開しています。大きな括りでいえば、どちらもマーケティングに関わる事業です。私たちが直接お客様のマーケティングを支援する事業と、ツールやシステムを通じてお客様自身のマーケティングを支援する事業。この2つが現在の事業の柱になっています。
内製化のハードルを下げる
私たちが大切にしているのは、データを活用しながら、お客様自身がマーケティングを考え、実行し、改善していける状態をつくることです。そのためには、社内にノウハウを蓄積する「内製化」が欠かせませんし、最終的には自分たちで運用を回せる「自走」を目指してほしいと思っています。ただ、現場の人たちは日々の業務で忙しいですし、必ずしもマーケティングやデータ分析の専門知識があるわけではありません。そこで、AIやシステムの力を使って、そのハードルを下げていく。そうした考え方が、自社開発のSaaSにもつながっています。
就職経験のないまま経営者に
何でも自分でやる難しさ
苦労したことでいうと、ありきたりかもしれませんが、やるべきことの多さです。会社に就職すれば、営業職など、それぞれのポジションで自分の役割に集中できることが多いと思います。一方で起業すると、サービスをつくるところから、取引先との打ち合わせ、プレゼン、営業、事務作業まで、何でも自分でやらなければいけません。いろいろな仕事が五月雨(さみだれ)式にやってくるなかで、それを一つひとつ捌(さば)いていくのは大変でした。
仲間には恵まれてきた
人材の面でいうと、実はあまり困ったことがないんです。東京理科大学発の認定ベンチャーということもあってか、ありがたいことに、同世代の若いメンバーと一緒に働きたいと思ってくれる人たちが集まってくれています。私自身は一度も就職を経験しないまま、在学中に会社を興しました。大変だったのは仲間集めよりも、よくも悪くも自分自身の経験のなさによる部分が大きかったと感じています。
SaaSの販路拡大が次の課題
これまで弊社は、SNS運用代行や研修、継続的なマーケティング支援など、受託型のビジネスを中心に展開してきました。一方で、ここ最近は自社開発のSaaS事業にも力を入れていて、まさにこれから販路を拡大していきたいタイミングです。これまでとはビジネスの進め方も違うので、まだまだ試行錯誤している部分もあります。自社サービスをより多くのお客様に届けるために、どう販売体制を整え、事業を成長させていくかが今の課題ですね。
現場で働く人を楽にしたい
どんな局面にも柔軟に
弊社に限らずどの会社にも当てはまることだと思いますが、AIの進化によって、これからの働き方やビジネスのあり方は大きく変わっていくと思います。数年前には想像もできなかったことが、今では当たり前になっていますよね。だからこそ、特定の事業や今のやり方に固執するのではなく、時代の変化に合わせて柔軟に進化し続けられる会社でありたいと考えています。どんな局面が来ても、そのときに求められる価値を提供できるような組織をつくっていきたいですね。
マーケティングは現場のもの
もう1つは、創業以来大切にしている考え方に沿ったものです。マーケティングは、数字を叩いている上層部の人たちのためだけにあるのではありません。店舗で働くスタッフや、美容室でいえば一人ひとりの美容師さんなど、実際に現場で働く人たちにとっても、価値のあるものでなければいけないと思っています。例えば、データを活用することで日々の業務が楽になったり、お客様との関係づくりがしやすくなったりする。そうした現場への還元があってこそ、マーケティングには意味があると考えています。いうならば「現場至上主義」のようなものですね。
現場の「お助けグッズ」をつくる
自社でSaaSをつくっているのも、この考え方があるからです。AIやデータ分析の技術を活用して、これまで手間のかかっていた業務を効率化したり、専門的な知識がなくてもデータを活用できるようにしたりする。いわば、現場の人たちにとっての「お助けグッズ」や「便利グッズ」のような存在を目指しています。現場の人たちは、ただでさえ日々の業務に追われています。そうした方々の負担を少しでも減らし、本来の仕事にもっと集中できるようなサービスを届けていきたい。そして、その積み重ねの先に、会社としての成長があればいいなと思っています。
学生のみなさんへ
できるだけ多くの人に会う
学生時代にやっておいて良かったと思うのは、いろいろなことに取り組んでいる人の話を聞くことです。社会人はもちろん、同世代でも自分とはまったく違うことに挑戦している人って、世の中にたくさんいるんですよね。そういう人たちにできるだけ直接会って話を聞き、自分なりに考えて、実際に行動してみる。うまくいくこともあれば、失敗することもあると思いますが、そうしたトライアンドエラーの場数を踏むことが大事なのかなと思います。
考えるのはそれからでいい
私自身、今23歳なので、みなさんと年齢はほとんど変わらないんですよね。それくらいしか生きていない自分の考えが当たっている確率なんて、正直ほとんどないと思うんです。だからこそ、変に自分の考えに固執せず、うまくいっている人に「どうやっているんですか」と素直に聞いてみる。そうやって人とのつながりを若いうちから増やしていくことが大事だと思います。考えるのは、そこからで十分です。
頭でっかちにならない
正直、私自身が学生時代にそれを十分にできたわけではありません。ただ、お世話になった先輩たちは口をそろえて「頭でっかちになって考えても意味がないから、自分の思っていることを周りの人に話して試してみたほうがいい」と言ってくれました。今はAIに聞けば、ある程度の答えがすぐに返ってくる時代です。でも、だからこそ自分の足で動いて、人に会って、実際に試してみることの価値は大きいと思っています。何かに挑戦したいと思っている人には、ぜひそういう姿勢を大切にしてほしいですね。
編集後記
「バズらせ屋」が乱立するなかで、あえてデータと再現性にこだわる道を選んだ川井さん。大学3年で起業し、就職経験のないまま幅広い業務を担ってきたというお話に圧倒されました。とくに印象に残ったのは、マーケティングは現場の人のためにあるという考え方です。私も小さく事業に挑戦しているなかで、つい数字ばかりを追ってしまいがちでした。誰のための仕組みなのかを問い直す大切さを、あらためて教えていただいた気がします。「考えるのは人に会ってから」というメッセージを胸に、まずは行動量を増やしていきたいと思います。