インタビュー

演劇青年は実演販売の「プロ」になった。夢を追う人を支え続ける、コパ・コーポレーションの挑戦

演劇青年は実演販売の「プロ」になった。夢を追う人を支え続ける、コパ・コーポレーションの挑戦
PROFILE
株式会社コパ・コーポレーション 代表取締役社長
吉村 泰助

学生時代に出会った実演販売

サークル伝統のアルバイト

学生時代は演劇研究会に所属していました。サークルには先輩から後輩へ代々引き継がれているアルバイトがあって、そのひとつがJR秋葉原駅にあった「秋葉原デパート」での仕事だったんです。今はアトレになっていますね。店頭に5つほどブースが並んでいて、実演販売をしている方のお手伝いをするというものでした。その一角に、演劇研究会を卒業した先輩が営業として就職していて、その方がつないでくれたことで伝統のアルバイトになっていたんですよね。

「プロにしてほしい」と直談判

ちょうどバブルが崩壊するかしないかの頃で、当時の学生は正直、世の中をなめていたと思います。私も冗談まじりに言えば勉強が好きすぎて、大学には2年ほど長く通いました。いわゆる留年です。3年生の後半には「4年では卒業できないな」とわかっていたので、仕送りをもらいつつ自分でも稼がなくてはと思い、先輩に「手伝いではなく、プロとして挑戦させてください」とお願いしたんです。当時は完全歩合制でした。「実演販売士」という言葉すらなかった時代に、実演販売員としての道を歩み始めました。

30歳で会社を設立

演劇の夢と法人化

会社を作ったのは30歳のときです。孔子の言葉に「三十にして立つ」とありますよね。親から離れてちゃんと独立する、そんな感覚でした。当時の私はまだ演劇の道も諦めていなくて、劇場運営や興行プロデュース、俳優のプロダクションなどにも挑戦したかったんです。ただ、お金がない。そんなときに私が仕入れた商品がたまたまヒットして、税金対策の意味もあって法人化しました。なので昔の定款では、会社の目的の半分が実演販売&卸、もう半分が劇場経営などの演劇系だったんですよ。

役者が夢を諦めないために

役者を目指す人たちは、就職して仕事と両立するということがなかなか難しいのではないかと思っていました。だから実演販売をしながら役者を続け、芝居もやって、いずれ有名になってもらえたらと考えたんです。夢を追いかける人たちが仕事を理由に挫折しなくてもいい環境をつくってあげたい、というのがこの会社の一番最初のきっかけでした。

演劇事業はいったん休眠

とはいえ、プロデュース公演をやってみたら、お金がどんどん溶けていくんですよ。「これはきつい」と感じて、演劇系の事業はいったん休眠させました。そこからはずっと、実演販売&卸をメインにやってきています。ただ、近年久しぶりに「劇団劇コパ」として小劇場で公演をおこないました。

「作る」と「売る」のプロ集団

本体は卸売業

実は、表向きに「実演販売の会社」というカテゴリーは世の中に存在しないんです。小売業でもないので、弊社の本体は卸売業になります。メーカーさんから商品を仕入れて、販売店に卸すという形ですね。販売チャネルはいろいろあって、たとえばハンズやロフトのような、弊社が「ベンダー販売」と呼んでいるところもそうです。実演販売といえばテレビ通販のイメージもあると思うので、テレビ通販の会社さんとも取引をしています。

主な販売チャネル

さらに、楽天やYahoo!(ヤフー)、Amazon(アマゾン)といったECサイトにも、出始めの頃から取り組んできました。当時はネット通販もまだメジャーではありませんでしたが、早い段階から販路を広げてきたんです。ベンダー販売、テレビ通販、ネット通販という3つの販売チャネルを持ちながら、そのなかでもメインはやはり実演販売。そこは今も変わりません。

AIと人の共創を目指して

実演販売自動生成器を開発中

今はすっかりAIの時代ですよね。私は2025年がAI元年だったと思っています。学生さんもかなり活用しているのではないでしょうか。昔のAIは正直まだまだでしたが、最近はそんなことを言っていられないほど進化していて、アプリのコードも私がいじれるくらいです。今まさに開発しているのが「実演販売自動生成器」で、外部企業向けにサービスとしての開発を進めています。

実演販売はなくならない

弊社の通販サイト「わくたんMarket(マーケット)」では、すでに「実演販売ページ」として展開しています。今後はクライアントさんに提供して、クッションページやランディングページのプラットフォームを構築していこうと考えているんです。ただ、AIはAIでいいんですけど、人による実演販売はなくなりません。だからこそ両軸で、AIと人との共創を目指しています。

新旧の狭間にいる今

今はちょうど、古い時代と新しい時代の狭間にいると感じています。大きい会社だと、AIを導入したら従業員はどうするのかという話になりますよね。ルーティンワークはAIに奪われてしまうかもしれない。数百人、千人規模の会社では、そこで揉めることもあると思います。弊社は早い段階から少数精鋭の体制に移行していたので、むしろ対応しやすいんです。AIには推進派で、社内にも「どんどん使ってほしい」と伝えています。工数が減りますからね。

テストと目視が重要に

課題を挙げるなら、時間がほしいですね。AI時代に何が大事かというと、コードを書くことそのものはClaude Code(クロードコード)やCodex(コーデックス)でできるようになりました。そのぶん、テストと目視がすごく大事になってくるんです。その時間がかなり取られるので、アプリが完成するまでの時間はそこまで劇的に短くはなりません。ただ、そのぶん解像度が上がった状態でサービスをローンチできるのではないかと思っています。

夢を追う人を応援したい

コパ奨学財団の設立

上場してから、一般財団法人コパ奨学財団を始めました。私が代表理事を務めていて、給付型の奨学金を提供しています。とくにコロナ以降は、奨学生の審査などを通じて学生さんと触れ合う機会が増えましたね。大学とは少し違いますが、実演販売士の募集という面でも若い人たちと出会う機会があります。学生さんとの接点は、弊社にとってもすごく注目しているところなんです。

門を叩くには度胸がいる

弊社では実演販売士のオーディションをおこなっています。ただ、いきなり「実演販売をやりたい」と門を叩くのは、なかなか度胸がいるんですよね。参加の応募はしたものの、連絡もないまま不参加になってしまう人もいます。それくらい度胸が必要な世界です。とはいえ志望者がゼロになることはなく、定期的に応募してくれる人がいます。爆発的に増えるわけでもないところが面白いんですよね。

夢を追い続ける選択肢

芸能事務所の多くはアカデミーを持っていて、専門学校と同じくらいの費用がかかります。でも、卒業したら全員が芸能人になれるかというと、そうではありません。一度夢を目指した人が芸能以外の仕事に就くとなると、やっぱり諦めきれないと思うんです。そういう人たちに「実演販売をしながら夢を追いかけてみては」と提案する取り組みを始めていて、弊社では「アカデミー組」と呼んでいます。

「売の極意塾」で人を育てる

実演販売士の育成講座として「売の極意塾」も長く続けています。3日間の講座を3回、計9日間というもので、私が校長を務めているんです。こうしたことを本来は学生のうちに学べると、就職活動でも有利に働くと思うんですよね。私自身、学生時代から実演販売をやってきたので、その大切さは身をもって感じています。

文化系の体育会系が向く

実演販売士は誰でも挑戦できる仕事です。ただ、店頭で通行人を相手に話すので、ボソボソ話していては声が吸収されて届きません。そのためオーディションでは声の大きさではなく、声の「強さ」を見ています。滑舌や話す姿勢まで含めると、運動部出身で大学から演劇や落研(落語研究会)を始めたような「文化系の体育会系」が一番向いているんです。昔は学生サークルを狙ってチラシを配っており、それがきっかけで入社したのが商品開発課のラショーモン亀山です。彼は3か国語を話せるとあって、中国語や英語での実演販売もこなせる優秀な人材ですよ。

学生へのメッセージ

夢と目標を宣言しよう

とにかく夢と目標を持ってほしいです。しかも、目標や夢の設定にはテクニックがあるんですよ。みんなそれを知らない。教えてあげたいくらいです。ダラダラ過ごして、かっこよさそうなことを言っているだけでは、その人が何をする人なのかまったくわかりません。親友や仲間を増やしたいなら、「私はこれをやる人です」と宣言しないとダメなんです。そうすると自然と応援してくれる仲間ができて、夢が別々でも励まし合えるんですよね。

教養は今しか得られない

世の中を変えてやろうと思ったら、勉強するはずです。ここでいう勉強は、単位を取れということではありません。私も単位はあまり取っていないので人のことは言えないんですけど、本だけはとにかく読みました。夢や目標を形作るうえでは、教養がすごく必要なんです。それに取り組めるのは学生時代しかありません。こうしたことは大学でもなかなか教わらないと思うので、ぜひ意識してほしいですね。

夢を語り合える友は一生もの

仲間とお酒を飲みながら話すとき、一番盛り上がるのはお互いの夢の話です。間違いなく一番の酒のつまみになりますよ。コロナ禍ではサークル活動もできず、お酒も飲めなくて本当にかわいそうでした。夢や目標を語り合った学生時代の友達は、一生の友達になります。実際、弊社の社員にも学生時代に知り合った仲間がいますし、離れても定期的に会うものなんですよね。学生時代を大切に過ごしてほしいです。

目標は修正しながら進む

就職しても、どちらにしろ1回や2回は転職するものです。今は転職サービスも使いやすくなっていますからね。目標をずっと一貫できれば一番いいんですけど、私だって何度も修正しています。その都度点検しながら夢や目標を修正していく生き方は、これからもっと増えていくはずです。ただ、その土台になる教養は、本当に学生時代にしか得られません。メッセージとしてはそれに尽きますね。

編集後記

「実演販売士」という言葉すらなかった時代に、学生の身でありながら「プロにしてください」と飛び込んだ吉村社長。そのエピソードから、まずは行動してみることの大切さを改めて感じました。特に印象的だったのは、夢を追う役者が挫折しないための仕組みとして会社を立ち上げたというお話です。事業の原点に「誰かの夢を支えたい」という思いがあり、それが奨学財団やアカデミー組の取り組みにもつながっているのだと感じました。AIを積極的に取り入れながらも「人による実演販売はなくならない」と語る姿勢からは、変化の時代にあってもぶれない軸を持つ強さを学びました。私も「これをやる人です」と胸を張って宣言できるよう、まずは1冊の本を手に取るところから始めてみます。