インタビュー

生き残るために商売を始めた。100年続く事業を目指すアドバンの「本質的な経営」

更新: 2026年5月5日
PROFILE
株式会社アドバン 代表取締役社長
田中 勇輝

サバイバルだった幼少期と「商売」の原体験

自分の力で生きていくための「生存戦略」

実は、僕の起業のルーツは幼稚園のころまでさかのぼるんです。当時は親が厳しくて、小学校の低学年なのに家に入れてもらえず、冬の夜にマンションのボイラー室で暖を取って野宿する……なんてこともありました。そんな環境だったので、「親の機嫌に左右されず、自分の力で好きなものを食べて生きていきたい」という思いが人一倍強かったんですよね。

中学校は「市場」だった

中学時代は、勉強よりも商売に夢中でした。たとえば、昼休みにコンビニへカップラーメンを買いに行く同級生のために、スーパーの特売品を仕入れて転売したり、ほかにもクラスメイトから集めたクーポンを金券ショップに売ったりしていました。このころに「商売の原理原則」を肌で学んだ気がします。

圧倒的な成果と「作る側」への転身

月収50万円を稼いだ新聞営業時代

中学を卒業してからは、水商売などいろいろなアルバイトを経験しました。20歳のときには新宿で新聞営業を始めたのですが、これが肌に合っていたみたいで。3ヶ月目には全国1位になって、そこから1年半以上トップを維持していました。月収で50万円くらい稼いでいた時期もありましたが、ふと「他人の作ったものを売るだけでいいのか」と疑問を持ったんです。自分でものを作る側に行きたい、そう思って一度すべてをリセットしました。

引きこもり生活から独学でプログラミング

退職してからの1年間は、実は引きこもり生活を送っていたんです。FXとオンラインゲームに没頭して、月2〜3回しか外出しない日々。FXで大金を失ったりもしましたが、この時期にタイピングが爆速になったり、独学でプログラミングを習得したりしました。その後、自分でライブチャットサイトを立ち上げたのですが、全く集客できず1年でサイトを閉じることにしました。そして当時業界1位だった企業に「誰よりも頑張るので入れてください」と直談判して入社しました。

 

株式会社アドバンの創業と事業の広がり

2年間の猛烈な成長と起業

入社した企業では、集客や広告マーケティングを担当する子会社の新入社員として、死ぬ気で働きました。20年のキャリアの中でも、あそこが一番成長した時期ですね。ただ自分の成長に伴い、新しい施策の稟議を出しまくるものの全部が全部通らないので、段々と「本当はやったほうがいいのに貯金」がたまってきた実感がありました。「自分のリスクで、責任を持って新しいことに挑戦したい」という思いが抑えられなくなり、2年で退職して株式会社アドバンを設立しました。

「目の前の課題」が事業になっていく

今の弊社の事業は、投資教育アプリやマーケティング支援、オウンドメディア事業など多岐にわたりますが、最初から狙って立ち上げたわけじゃないんです。自社アプリを10年、15年と持続させるために試行錯誤していたら、そのノウハウを求めてクライアントが集まってきた。お客様のアプリを支援したら自社以上に成長して、弊社への予算が増え、気づけばそれが大きな事業の柱になっていた……という感覚ですね。

勝つまでやめない。100年続く会社へのビジョン

失敗は「改善中」にすぎない

僕はサッカーのベッケンバウアーの「強いものが勝つのではない、勝ったものが強いのだ」という言葉が好きなんです。結局、本人が失敗だと思わなければ、それはただの「改善中」なんですよね。IT業界って、短期間で爆発的に成長してIPOを目指すみたいなイメージが強いですが、僕はどちらかというと、200年続く老舗の和菓子屋さんのような、長期的な持続性に惹かれるタイプです。

本質的なビジネスで100億円の壁へ

創業から15年かけてようやく売上10億円の壁を突破し、現在は13人体制で13億円ほどまで成長しました。これまではマーケター集団として営業マンがいなかったのですが、今後は組織を拡大し、100億円の壁を目指したいと考えています。規模が大きくなれば、集まるメンバーも、提供できる価値も変わってくるはずですから。

15年経営をしてきて、「不安」に思ったことはあまりないですが、「危機感」だけは創業当初から変わらず持ち続けています。

この違いは大きいと感じています。不安は止まる理由になりますが、危機感は動く理由になる。上手くいけばいくほど、この感覚は強くなっていきます。だから現状に満足しないし、焦りすぎもしないという状態が、これまでの15年でした。

若い世代へ伝えたいこと

SNSを捨てて、目の前のことにフルコミットしてほしい

今の学生さんを見ていると、SNSのせいで「隣の芝生」が青く見えすぎて、迷っている人が多い気がします。やりたいことがないなら、鉛筆を転がして決めたバイトでもいいから、まずは本気でやってみてください。中途半端にいろいろ手を出すより、一つを全力でやるほうが、自分に向いているかどうかが早くわかります。相談する前に、まずは一歩踏み出してみる。その積み重ねが、結果的に自分らしい道につながっていくはずですよ。

編集後記

今回のお話を通じて、「執着心」と「本質」の重要性を強く感じました。幼少期の過酷な環境を生き抜くための商売が、今の経営哲学につながっているというストーリーは圧巻でした。特に「失敗は存在せず、成功するまで改善し続けているだけ」という考え方は、何かに挑戦する際に抱きがちな恐怖心を払拭してくれる力強い言葉だと思います。

ビジネス未経験の私にとって、IT企業は「スピード感」や「効率」ばかりを重視するイメージがありましたが、田中社長が語る「200年続く和菓子屋のような持続性」という視点は非常に新鮮でした。目の前の課題に全力で取り組んだ結果が事業になるというお話も、まずは自分の持ち場で100%を出し切ることの大切さを教えてくれました。私も将来、何かに迷ったときは「まず全力でやってみる」という姿勢を忘れないようにしたいです。