経歴と創業の背景
サッカー漬けの毎日から、バブル崩壊後の「超氷河期」へ
私の学生時代ですか?もう30年以上前になっちゃいますけど、一言で言えば「サッカー漬け」でしたね。大学の体育会サッカー部に所属していて、当時はまだ昭和の名残があるというか、かなり厳しい環境で打ち込んでいました。
起業なんて当時はこれっぽっちも考えていなくて。「普通に卒業して就職するんだろうな」と。ただ、僕らの世代はいわゆる就職氷河期だったんですよ。バブルが崩壊して、同期の3分の1が就職浪人するような、今では考えられないくらい厳しい時代でした。そんな中で「なんとなく華やかそうだな」という浅はかな理由で、大和証券に決めたんです。
会社がなくなる経験と、予期せぬ「巻き込まれ型」起業
その後、外資系証券会社やアメリカ留学を経て、GMOペイメントゲートウェイに入社したのが決済業界との出会いでした。そこからベンチャーに転じるんですが、ここからが結構壮絶で(笑)。
実は、起業したくてしたわけじゃないんですよ。当時いたベンチャーの代表が大きな金銭トラブルを抱えていて、僕らも巻き込まれてしまったんです。急に作られた子会社の代表を頼まれて、引き受けたら出資金が消えていたり、勝手に印鑑を使われて訴えられたり……。
40歳を超えて、結婚したばかりなのに半年くらい給料が出ない時期もありました。でも、出資してくれた方への責任もあるし、この事業を続けなきゃいけない。そんなトラブルの嵐の中で、結果的にスピンアウトする形で生まれたのがアクルなんです。
事業モデルと成長の要因
EC事業者を「チャージバック」の脅威から守る
弊社がやっているのは、主にクレジットカードの不正利用対策です。今の時代、他人のカード番号で勝手に買い物をして転売するような不正ユーザーがすごく増えているんですよね。
これ、被害を受けるのは実はお店側(EC事業者)なんです。カード会社から売上を取り消される「チャージバック」という仕組みがあって、商品は送ったのに代金は入ってこないという最悪の状況になる。僕たちは、それを未然に防ぐ「ASUKA(アスカ)」という不正検知サービスを主力として提供しています。
国内最大級のネットワークが最大の武器
弊社の強みは、なんといっても国内ナンバーワンと言えるネットワークの規模感です。今、4万5,000以上のサイトに導入いただいています。
不正検知って、実はネットワークの経済性がすごく重要なんですよ。一社だけで対策するよりも、多くの会社が参加することで「あそこでアタックした奴がこっちに来た」という情報が共有される。一人が攻撃を受けても、その情報を活かして残りのみんなが助かる。このネットワークが広がれば広がるほど、サービスの価値がどんどん上がっていくのが弊社の強みですね。
組織・採用と今後の展望
「おっさんベンチャー」に新しい活力を
弊社はもともと、僕も含めて役員が同年代だったので「おっさんベンチャー」なんて言われていたんです(笑)。でも、やっぱり変化の激しい業界なので、これからは若い人の力が必要不可欠だと思っています。
最近は新卒採用にも力を入れていますが、求めるのは「変化を楽しめる人」ですね。ベンチャーなので安定はしていないかもしれないけれど、その分、失敗できる余地もたくさんあります。僕自身、30代で会社がなくなる経験を2回もしていますが、若い時の失敗って後から振り返れば全部「特権」なんですよ。その経験が今の僕の原動力になっていますから。
決済のあらゆる課題を解決するインフラへ
今後は不正対策だけでなく、ECの売上を最大化するためのマーケティング領域にも踏み込んでいます。決済時にユーザーが離脱してしまうのを防ぎ、コンバージョンを最適化する。
「決済」って地味でかっこよくないイメージがあるかもしれませんが、経済には欠かせない重要なインフラです。キャッシュレス化が進む中で増え続ける「負」の課題を、一つひとつ地道に解決していく。それが社会貢献につながると信じて、これからも突き進んでいきたいですね。
編集後記
今回、近藤社長のお話を伺って一番衝撃を受けたのは、その「起業のきっかけ」です。キラキラした志から始まったのではなく、壮絶なトラブルに巻き込まれ、逃げずに責任を果たそうとした結果が今につながっているというお話は、ビジネスのリアルな厳しさと、それを乗り越える覚悟の重要性を教えてくれました。
「若い時の失敗は特権」という言葉も、今の私には深く刺さりました。失敗を恐れて安定を求めるのではなく、変化の激しい環境に飛び込んで、そこで得た経験を自分の糧にしていきたい。近藤社長のような「しなやかな強さ」を持った大人になれるよう、今のうちにたくさん挑戦し、たくさん失敗しておこうと強く思いました。
(早稲田大学 文系学部3年)