インタビュー

「代わりはいくらでもいる」その悔しさが、未経験を育てる会社をつくった

「代わりはいくらでもいる」その悔しさが、未経験を育てる会社をつくった
PROFILE
株式会社Afford 代表者
松本 善教

岡山の人手不足と、AIという転機

弊社を起業したのは3年前です。それまでは長いこと、ほぼ一人でコンサルティングを続けてきました。エリアはずっと岡山がメインです。

きっかけのひとつが、AIの登場でした。日本は世界と比べてDXやAI活用が遅れているとよくいわれますが、その一番大きな理由は人手不足にあると感じています。岡山は製造業が多い地域で、なかでも中小企業には、システムエンジニアや「情シス」と呼ばれるような人材が社内にいて、DXをどんどん推進してくれるような環境がほとんどありません。社員はみんな現場仕事がメインで、IT分野は素人ということがほとんどです。

そのため、うまく進めようとしても進まないという状況がずっと続いていました。私はそこにコンサルとして入り、1社1社丁寧にDXを進めるという仕事をしてきたのですが、DXの知識だけでなく業界知識やエンジニア的な知見も必要になるため、なかなかそれができる人を育てられず、長らく一人でやってきました。

その流れを変えたのがAIです。経験がない人でもAIを活用すれば、DXを進めていける時代がきたと感じて今の会社を起業しました。今も岡山県を中心に、DXとAI活用のコンサルティングをおこなっています。

なお、岡山でターゲットにしているのは製造業に特化しているわけではありません。岡山という土地柄、業種として製造業が結果的に多いというだけでなく、飲食や不動産などさまざまな業種のお客さまと関わっています。

エンジニア時代は「代わりはいくらでもいる」と感じていた

新卒で入社した最初の会社ではシステムエンジニアをしていました。数億円規模のシステムのごく一部の部品をつくるような仕事で、当時は強い物足りなさを感じていました。大きなシステムのほんの小さな部分だけをつくり続ける日々で、自分がいてもいなくても変わらない、代わりはいくらでもいるという感覚がありました。

もともと大学ではパソコンを使う学科に所属していて、デザイン系のことをメインにやっていました。そこで2年ほど勤めてシステムエンジニアを辞め、一度目の起業をします。デザイン会社を立ち上げ、ホームページ制作やアパレルのデザインを手がける会社を経営していました。

その事業を続けるなかで、お客さまから「パソコンの使い方を教えてほしい」「紙ばかり使っているので、なんとかならないか」といったコンサルティングの依頼を受けることが増えていきました。そうした依頼を受けているうちに、デザインの事業は売却し、コンサルティングを本業にしていったという経緯です。

未経験の採用にこだわる理由

現在の従業員は5人です。もともとの知り合いというメンバーもいれば、普通に求人を出して応募してくれたメンバーもいます。私自身は岡山出身ですが、友人だから採用したというわけではありません。

弊社には「経験者を採用しない」という採用のコンセプトがあります。私以外のメンバーは全員、20代の未経験者です。これは、私自身が社内で未経験の子を育ててきた経験にもとづいています。製造業のお客さまに「DXをやりましょう」と提案しても、「自分たちにはAIを教えてもらっても使いこなせない」と自信を持てない方が少なくありません。

そこで、未経験で入社した社員が1年でこれだけできるようになっている、という実例を見せることが、お客さまに「あなたたちもできる」と伝える一番の説得力になると考えました。実際、私よりも15、16歳年下のメンバーが未経験のまま応募し、今は一緒に働いてくれています。

苦労した1年目、原点回帰した2年目以降

起業1年目は本当に苦労しました。当時はまだAIが今ほど賢くなく、素人でもシステム開発ができるレベルではありませんでした。そのため企業のDXを進める手段として、ノーコードツールを提案する営業を中心にしていました。

関東や関西では、ノーコードツールを使ったDXはすでに当たり前になっていましたが、岡山ではまだ「それってシステムでしょう」「難しそう」という反応が多く、共感してくれるお客さまがなかなか見つかりませんでした。1年目はコンサルよりもシステム開発を主軸に営業していたこともあり、苦労が続きました。

2年目からは原点回帰して、企業向けの研修やコンサルティングを軸に舵を切り直しました。そこからようやく会社が立ち直っていったという流れです。

教える人を育てることが、今の課題

今後のビジョンは、これまで積み重ねてきたことをさらに引き続けていくことです。弊社で働く社員は、IT業界がまったくの未経験で入社した子がほとんどですが、入社して2か月もすれば、弊社の仕組みを使ってちょっとしたシステム開発ができるようになります。

現在はその教育を私が中心になっておこなっていますが、DXをより広げていくためには「教えられる人」を育てることが今の課題です。20代の社員たちに、管理職を目指しながら教育する側にも回ってもらう。教育と人を増やしていくことが、これからの目標です。

未経験を採用しているからこそ、育成には難しさがあります。システム会社の経験者を中途で採用すれば早いのかもしれませんが、最初に決めた「未経験を採用する」という方針は譲れません。そこに対する課題感は今も変わらずあります。

顧客折衝の部分についても、今は私が同行しながら、仕様の確認ややりたいことのヒアリングをAIを使って整理する仕組みづくりを進めています。将来的には、この部分も社員が担えるようにしていきたいと考えています。

情報の真偽を確かめる力を、今の若い人にこそ

SNSには情報があふれていて、岡山にいても東京の様子や、キラキラした仕事の情報がいくらでも入ってくる時代です。うらやましいと思う一方で、その情報の真偽を見極める力は、ぜひ身につけてほしいと感じています。

AIについても同じです。部下がAIの出した答えをそのまま私に送ってくるのであれば、自分で調べたほうが早いという話をすることがあります。「AIでこんなことができてすごい」とSNSでバズっている情報のなかにも、実際には使い物にならないものがたくさん混ざっています。真偽を確かめる癖は、情報過多な今の時代だからこそ、若いうちに身につけてほしいと思います。

AIは、聞いたことにただ答えてくれる存在ではなく、自分がつくりたいものを形にしてくれるパートナーだと捉えています。ものづくりが好きで、システム開発やAIの活用に挑戦したいという学生であれば、弊社では今も採用活動を続けています。

やる気があって真剣な若い人たちと出会える機会があれば、ぜひ紹介してほしいと感じています。

編集後記

今回、株式会社Affordの松本善教さんにお話をうかがいました。エンジニア時代に感じた「代わりはいくらでもいる」という悔しさが、未経験の人を育てるという今の会社の軸につながっているのだと感じ、とても印象に残りました。AIが広がる時代だからこそ、情報の真偽を確かめる力を大切にしてほしいというメッセージは、私自身、学生として日々AIに触れているからこそ、胸に刺さるものがありました。貴重なお話をありがとうございました。