父の最期が教えてくれたこと
父の葬儀で決めたこと
もともと父が1人で会社を経営していました。私が大学院生のときに父が亡くなり、お葬式には父が関わっていた方々や、仕事でつながっていた会社の方々が大勢参列してくださったんです。皆さんが本当に悲しんでくださっている姿を見て、自分も最後はこういうふうに見送ってもらえる人生にしたいと強く思いました。だからこそ、自分も会社を立ち上げて世の中に価値を届けたい。それが創業のきっかけです。
AIと「1人目」の2つの事業
AIのノウハウを他社へ
弊社ではAIを積極的に活用していて、そこで培ったノウハウを何らかの形で他社さんにもソリューションとして提供したいと考えました。今は「まるごとAI」として、生成AIを活用した受託開発やAI研修のサービスを提供しています。もうひとつの事業が、1人目ポジションに特化した採用マッチングサービス「Hitorime(ヒトリメ)」です。この2つを事業の軸にしています。
1人目の経験が成長の源
私自身、これまでのキャリアで1人のポジションを経験させてもらいました。正社員の採用や他のメンバーのマネジメント、システムトラブルが起きたときの対応など、大変なことはたくさんありました。それでも振り返ると、本当に大きく成長できたと感じています。それは1人目という立場だったからこそだと思うんです。この経験が、今の事業につながっています。
求職者目線で媒体をつくった
次の仕事を探すときも、1人目のポジションに絞って見つけたいと思いました。ところが既存の求人媒体には、そこに特化したものがなかったんです。求職者としての自分が「こういうサービスがほしい」と感じたものを形にしたのがHitorimeです。事業責任者やCXOといった1人目ポジションの採用に悩む企業さんと、そこに挑戦したい求職者の方をつなぐサービスとして運営しています。
1人で走り抜けた立ち上げ期間
デザインも開発も手探り
プロダクトを1人でつくると決めた当時は、まだChatGPTがGPT-3.5の時代でした。デザイン生成の質もコーディングの精度もまだまだで、私はデザイナー出身でもありません。さまざまなサービスのUIを見て研究したり、やったことのなかったサーバー管理に取り組んだりしながら進めました。今では当たり前ですが、サービスをデプロイして誰でも見られる状態にするところまで1人でやりきるのは、振り返ると本当に大変でした。
「シンプルで使いやすい」の声
プロダクトを作るにあたって、とくにこのサービスのUIがよかった、というものがあったわけではないんです。それよりもうれしかったのは、企業さんや求職者の方から「シンプルで使いやすいですね」と言っていただけたこと。手探りでUIを研究してきたからこそ、すごくよかったなと思っています。現在は私1人で運営していて、業務委託や正社員の採用は、明確に必要になったタイミングでお願いしようと考えています。
両輪で伸ばすこれからの挑戦
AIのニーズは無限にある
今後はまるごとAIとHitorimeの両軸を伸ばしていきたいと思っています。AI受託では最近、IT以外の業界の会社さんとお話しする機会が増えてきました。介護や美容業界などでは、そもそもパソコンが苦手だったり、DX自体がまだ進んでいなかったりする会社がたくさんあることが見えてきたんです。ニーズは無限にあるし、やりようもたくさんある。そこでしっかり売上を伸ばしていきたいと考えています。
登録から24時間が勝負
Hitorimeはマネタイズこそまだまだですが、ありがたいことに累計100社以上の企業さんにご導入いただき、上場企業さんにも使っていただいています。リリース直後の1年間は完全無料で提供していたことも大きかったと思います。求職者の方はアカウント登録だけなら1000名以上。実は、登録から24時間以内に経歴やスキルまで登録しないと募集が見られず、アカウントも削除されるという、おそらく弊社だけの特殊な仕様にしているんです。そのハードルを越えた方が300名以上いらっしゃるので、1人目ポジションのマッチング精度をより高められる媒体を目指していきたいです。
求職者獲得が次の一手
一方で課題に感じているのは、求職者の獲得です。今はMeta(メタ)広告しかできておらず、クリエイティブもほぼ私が少しずつ微修正しながらつくっています。今後は私自身がYouTube(ユーチューブ)に出る形での運用にも取り組みたいですし、CPA(顧客獲得単価)を5000円以内、1万円以内とどんどん下げてくれるようなSNS・広告運用のパートナー企業さんと組めたらいいなと思っています。
学生へのメッセージ
自分の武器をひとつ持つ
学生の皆さんには、長期インターンにしっかり参画して、早いうちに即戦力になることを目指してほしいです。営業でもエンジニアリングでもマーケティングでも、何でもいいと思います。自分の得意不得意や性格も含めて、早くひとつでも自分の「武器」を見つけてほしいんです。私は今29歳で、あと1年もせずに30歳になります。20代のうちは、ひとつの武器で結構突き抜けられる。人によって5年、7年とかかるかもしれませんが、そこを目指して頑張ってみるのがすごくいいんじゃないかなと思います。
AI時代こそ営業から逃げない
もし今の知識を持ったまま大学3年生に戻るとしたら、エンジニアリングでAIを使いこなせる人材を目指しつつ、並行して営業スキルを必ず身につけます。AI時代だからこそ、営業がすごく重要だと思っているんです。BtoCの低単価商材であれば、AIで自動化して購入まで完結することもあると思います。でもBtoBや高単価の商材になるほど、最後は人から買わないと怖いという心理がどうしても残るんですよね。社内のコミュニケーションも、上司を動かすのも、外部の人を動かすのも、ある種の営業です。どの職種に就いても生きるので、営業からは逃げないほうがいい。テレアポをひたすらやるのは泥臭いですが、すごくいい経験になると思います。
編集後記
お父様の葬儀での経験が創業の原点にあると伺い、「どう生きるか」から逆算して起業を選んだ姿勢に心を動かされました。とくに印象的だったのは、登録から24時間以内にプロフィールを完成させないとアカウントが削除されるというHitorimeの仕様です。登録者数を追うのではなく、マッチングの質を優先する設計に、1人目ポジションへの強いこだわりを感じました。私も学生起業に挑戦する中で、つい何にでも手を出してしまいがちです。まずは長期インターンや営業の現場で、自分だけの武器をひとつ磨いていきたいと思います。