名古屋と東京にオフィスを構えるブルーアール株式会社代表取締役の奥村美徳です。生成AIを使ったクリエイティブ制作を通じて、企業のマーケティング課題を解決する仕事をしています。広告業界で約20年培ってきた経験とAIという新たな表現手段を掛け合わせています。
20年間、広告とマーケティングを歩いてきた
広告業界で培った20年の経験を新規事業へ
私はもともと、広告会社に20年ほど勤め、デザインを起点に、マーケティングに関わるクリエイティブと長く向き合ってきました。
その後、新規事業に携わり、いくつかの立ち上げを経験しました。振り返ると、既存のやり方にとらわれず、「限られた人手や時間の中でどうすれば新しい価値を生み出せるか」をずっと考えてきたように思います。
マーケティングをAIで解決する
AIでクリエイティブの幅が広がった
事業内容は、マーケティング全般の課題をクリエイティブで解決することです。制作・ブランディング・SNS運用・動画編集・展示会の装飾運営など、幅広い領域にAIを掛け合わせることで、これまでにない提案や価値を生み出しています。
AIの大きな魅力は、クリエイティブの選択肢を広げられることです。従来は、自身の得意領域や制作体制の中で考えざるを得ない場面も少なからずありました。しかし、AIを取り入れたことで、発想から表現までの選択肢が飛躍的に広がり、以前であれば諦めていたアイディアにも挑戦できるようになりました。
スピードとクオリティの両立
もうひとつは、スピードとクオリティを両立しやすくなったことです。以前は2〜3週間かかっていたデザイン提案も、今は制作スピードを高めながらクオリティを落とさずに仕上げられるようになりました。新しいツールをいち早く検証し、実務で使える形まで落とし込む。この積み重ねこそが、弊社の大きな強みだと感じています。
企業様からも、「AIを活用して作りたい」という相談が増えています。ひとつひとつの課題に向き合い、実務で試行錯誤を重ねてきたからこそ、弊社なりのノウハウが蓄積されてきました。
マーケティングを理解した人間がAIを使うからこそ、単に目新しいだけでなく、目的に合ったクリエイティブが作れると考えています。AIは誰がどんな意図で使うかによって、仕上がりが大きく変わるからです。
現場で起きているAIクリエイティブの広がり
表現の可能性が広がり、相談の幅も大きく広がった
AIクリエイティブへの需要は、ここ3年ほどで大幅に拡大しています。現在では相談件数も増え、すべてにすぐお応えすることが難しい時期もあるほどです。
例えば、大手企業様のブランドビジュアルから、モデルに服を着せるような案件まで、従来の制作体制では大きなコストや専門体制が必要だった表現にも、AIを活用することで挑戦できるようになりました。対応できる業界や相談の幅が大きく広がった実感があります。
最初のうちは、グラフィックやWebは作れても、さすがに3DCGまでは難しいと思っていました。しかし今は、AIを起点に3DCG領域まで提案の幅が広がっています。作詞・作曲や撮影を前提としない映像が可能になったことも大きな変化です。移動や撮影にかかっていた時間を企画や改善などの別の価値づくりに使えるようになりました。案件によっては、デザイナー1人あたりの制作量が、以前の10倍近くになることもあります。
コストの面でも、企画・制作の進め方は大きく変わりました。以前はモデルを1人キャスティングする段階から、事務所への依頼や日程調整が必要でした。ところが、今はAIモデルで事前にイメージを具体化し、お客様と方向性を確認したうえで、案件によっては、撮影工程そのものをAIで代替できるようになりました。大切なのは、「人をなくす」ことではなく、必要な工程に人間の感性や時間を集中させ、より良いアウトプットに繋げることです。
クリエイターの未来とAIとの向き合い方
変化の時代だからこそ、クリエイターがAIを味方にできる環境を作りたい
生成AIの進化とともに、「クリエイターの仕事はなくなるのではないか」、「AIに置き換わるのではないか」という不安の声を聞く機会が増えました。実際、制作の現場では、求められる役割やスキルが大きく変わり始めていると感じます。
だからこそ私は、AIによってクリエイターが活躍できる場を減らすのではなく、AIを使いこなすことで、仕事の幅や可能性を広げられる環境を作っていきたいと考えています。私自身もクリエイターであるからこそ、AIは人間の感性や経験を置き換えるものではなく、それらを拡張するための手段になり得ると伝えていきたいです。
また、コンサルティングでは、企業のデザイナーにAIの使い方を教える仕事もしています。この活動に力を入れているのも、現在活動されているクリエイターのみなさまがAIを使いこなし、自らの強みをさらに伸ばしてほしいという思いがあるからです。
学生へのメッセージ
問いを立てる力を磨く
学生のみなさんに伝えたいのは、「問いを立てる力」を磨いてほしいということです。今や以前よりずっと簡単に知識や情報を得られるようになりました。AIが多くの答えを返してくれる時代だからこそ、「何を知りたいのか」、「その答えは本当に正しいのか」、「自分は何を選ぶべきか」などを考え、自分なりの問いから行動に繋げられる力が、この先ますます重要になると思います。
環境や肩書きで自身の可能性を限定しない
学生も社会人も関係なく、AIを使うことで、自身のアイディアを作品やサービスとして形にし、世界に向けて発信できる時代になりました。環境や肩書きで自身の可能性を限定せず、「面白いと思ったらまず作ってみる」ことが、未来の選択肢を広げていくと私自身強く実感しています。だからこそ、失敗を恐れず、どんどんチャレンジしてほしいですね。
学生のうちにできるだけ多くの人に会っておく
もし私が学生に戻れるならば、「もっとさまざまな業界の人に会っておけばよかったな」と思います。「自分には関係ない」、「会えない」と最初から線を引いてしまうのは、もったいないと思います。学生であるからこそ、素直に「話を聞かせてください」とお願いできる機会も多いかと思います。興味を持った人には、怖がらずに一歩踏み出してほしいです。
このインタビューのような機会も、普段はなかなか会えない経営者と話し、その考え方に触れる貴重な経験だと思います。そこで生まれた出会いや学びは、少しずつ自身の財産になっていくでしょう。就職や起業などの人生上の選択をする際に、思わぬ形で生きてくることがきっとあるはずです。
編集後記
早稲田大学3年生の森です。今回のインタビューを通して、AIは「効率化の道具」として使われることが一般的だと思っていましたが、AIクリエイティブの領域では、「創造の可能性を広げる基盤として大いに活用できる」という捉え方に、強く引き込まれました。クリエイターの可能性を広げるために、AIを味方にし、現場のクリエイターへその意義を届けようとする奥村さんの姿勢から、変化を恐れずに一歩を踏み出すことの大切さを学びました。また、問いを立てる力を磨きたいと、素直に思える取材でした。