インタビュー

「誰かが我慢する」をなくしたい――クラウドバディ代表・横川奈央子が描く、はたらくのアップデート

更新: 2026年9月17日
「誰かが我慢する」をなくしたい――クラウドバディ代表・横川奈央子が描く、はたらくのアップデート
PROFILE
株式会社クラウドバディ 代表取締役
横川奈央子

創業の経緯

社内の仕組みを外に出す

クラウドバディのサービスの元になっているのは、実は前職での経験です。創業メンバーは、もともと全員同じ会社で働いており、私たちは上場の前後に在籍していました。

上場企業ですから、130%成長する、というチャレンジがあります。売上を増やそうとすると人を増やすことが前提となりますが、当時のCFOから言われたのが、「採用フィーをとにかく減らしてほしい」ということ。つまり人を増やすのはいいけれど、紹介会社に払う紹介料が高すぎる、という話でした。リファラル採用の仕組みをつくったりもしましたが、それだけではどうしても効率が悪かったのです。

そこで気づいたのが、「仕事を分解する」という発想でした。人をひとり雇うと、まるっとその人に担当業務のすべてを任せることになるので、実は得意ではないことまで任せないといけない。例えば採用担当で言うと、面接日程調整だけする人、求人票だけ書く人、というように業務を分けて別々の担当がいたら並行して業務が進められるので効率が良いのではないか、そしてそれぞれのプロフェッショナルに依頼したら品質もさらに良くなるのではないか、と考えました。その分社員は面接やフォローに集中することができます。この発想を持って、新しい取り組みを始めたい時や人が足りないときには、外部のプロをひたすら活用することを徹底して成果を出してきた経験が、現在の弊社の事業の中心になっています。

原体験

女性が諦める現実

私には小学生の子どもが2人います。幸い、私は正社員という働き方をずっと続けることができました。でも、かつての同期や同僚を見ていると、お子さんやご主人の状況によって、正社員を続けることを諦めざるを得なくなる方が本当に多いんです。ご主人が転勤になれば、奥さんが仕事を辞めるという選択肢しかなくなってしまう。誰かが我慢するとき、日本ではやはり今でも女性が犠牲になっていることが多いと感じてきました。

在宅で孤独をなくす

かつて私たちを支えてくれていたスタッフも、もともとは正社員で働いていたけれど、いろいろな事情で辞めざるを得なかった方がほとんどでした。ちょうどコロナ後で在宅ワークが少しずつ広まり始めていた時期で、在宅に切り替えたいという方も増えてきていました。ただ、在宅でできる仕事はかなり限られていて、内職に近いものやライターなど、一部の専門職くらいしかありませんでした。

仕事を分解して細かい単位でも渡せたら、喜んで対応してくれる方がたくさんいるのではないだろうか。そう思い始めたのですが、実際に働いていただくと、家でひとり寂しく過ごさなくてよくなったり、社会とのつながりを感じられるようになったりと、彼女たちにとって思っていた以上に良い影響がありました。今ではお客様にサービスを提供することと並んで、その裏で働いてくれる方たちへ仕事の場を提供することも、弊社にとって大切な柱のひとつになっています。

サービスの中身

可視化から始める

弊社はBPOの会社に見られがちなのですが、それはあくまで手段のひとつでしかありません。忙しい会社ほど、引き継ぎがあいまいだったり、マニュアルが整っていなかったりして、共通のルールがないから間違いが起きる。その結果人材定着率が上がりにくい傾向があると感じています。だからこそ、まずは業務の棚卸しと見直しから始めて、可視化することを最初のサービスとして位置づけています。

自動化へつなげる

業務を可視化した結果、システムを導入したほうがよい場合もあれば、弊社のスタッフに任せたほうがよい場合もあります。ただ、外部化した状態のまま人がずっと対応し続けると、結局そこも属人化してしまう。そこで、BPOのあとにAIやAPIによる自動化というプロセスを踏んでいきます。AIも完璧ではなく、こぼれ落ちてしまう業務もあるので、そこは人がサポートしつつ、誰がやっても同じ品質になるようにマニュアル化することを追求しています。

人材育成

経験なくても任せる

優秀な人材との出会いは、前職からのつながりや、スタッフの知人など、身近なご縁がきっかけになることが多いです。とあるスタッフは、新卒で入社した会社を結婚・出産を機に5年で辞め、専業主婦を8年ほど経験したあとに、パートナーとして1日数時間から関わり始めました。マネジメント経験はまったくなかったのですが、弊社の中で学びながら少しずつ部下を持つようになり、最近になって部長に就任していただきました。

8割は叩き上げ

外部からリーダー経験者を採用することもありますが、うまくいく確率はそれほど高くありません。それよりも、社内で育てたほうが早いと感じています。今、弊社で活躍しているマネージャーの8割は、こうしたスタッフからの叩き上げのメンバーです。

目指す未来

人を増やせない時代

労働人口が減っていく中で、「社員でなければいけない」と考えている会社はこれからますます厳しくなると思います。今の学生世代は、私たちの世代の半分ほどしか人数がいません。同じ数だけ社員を採用しようとする発想自体が、もう成り立たなくなってきているんです。社内と社外で分担しながら、より効率的に仕事を進めていく方法があることを、知っていただきたいと思っています。

専門人材がいない会社へ

現在の弊社のターゲットは、人数規模がそれほど大きくない会社です。社員が持っているスキルには限りがあるので、たとえばシステム導入ひとつとっても、社内に専門人材がいないケースが多くあります。ベンダーは自社の製品に関わる範囲までしか支援できず、その周辺で困っている担当者や現場の方たちの業務までは踏み込めません。そこを外部の体制強化として弊社が支援することで、システムが導入されたのに活用できず解約する、といった事態を防げます。実際に、正社員2人分ほどのコストで、最大15人ほどのスタッフが同時にシステム導入プロジェクトに取り組んでいるというケースもあります。

学生へ

大学の縁は一生もの

真面目な学生だったかというと、正直そうではなかったのですが、大学時代の友人関係は、卒業して20年以上たった今も続いています。大学の同級生が、いま弊社のスタッフとして一緒に働いてくれていて、不思議だけれどうれしいご縁だと感じています。学生時代に一緒に過ごした仲間とは、ぜひ交流を広げてほしいと思います。

お金がなくても時間はある

学生はお金がなくても時間はあります。当時、先輩から「借金してでもいろいろな経験をしろ」と言われたことがあり、留学の費用をつくるためにアルバイトをして、奨学金も借りて海外へ行きました。ドイツに留学していたときは、日本人がほとんどいない環境で、練習したはずのドイツ語がとっさに出てこなくて困ったり、街で声をかけてくれた見知らぬ人たちとお店で意気投合したりと、忘れられない経験をたくさんしました。思いきり何かに没頭できるのは、学生ならではの時間の使い方だと思います。

「ライフ」と「ワーク」を分けない

「ワークライフバランス」という言葉は、実はあまり好きではありません。私の感覚に近いのは「ワークウィズライフ」です。仕事と生活を無理に分けようとするから、かえってストレスになる。同化させてしまったほうが、私自身はストレスがありません。例えば子どもの学校がない日でも、子どもを見ながら仕事をするのが当たり前になっています。経営者は大変だとよく言われますが、その分、働き方を自由に組み立てられる自由もあると思っています。

編集後記

今回のインタビューでいちばん印象に残ったのは、社員を増やすことだけが会社の成長ではない、という視点でした。ノンコア業務を分解して外に出す発想は、人手不足が進むこれからの時代にますます必要になっていくと感じます。また、ご自身の子育てやキャリアの経験を、事業のミッションにまで昇華させている姿勢にも刺激を受けました。「ワークライフバランス」ではなく「ワークウィズライフ」という考え方は、これから社会に出る私にとっても、とても新鮮な視点でした。貴重なお話をありがとうございました。