インタビュー

「面白いことを、仕事にする」——鳥取の山あいから、Webで地域とつながる

PROFILE
有限会社Webとりーみんぐ 代表取締役
小島 慎司

妻の体調不良が、人生を動かした

大阪から鳥取へ、山の奥へ

もともと大阪のWeb制作会社でずっと働いていたんですが、妻が倒れてしまって。原因不明の体調不良で、なかなか回復しなかったんです。ただ、実家のある鳥取県に帰ったら少し楽になったという話があって。「じゃあ環境のいい方に行こう」ということになりました。

最初は岡山に移ったんですよ。妻は大阪からあまり離れたくないという気持ちがあったので、環境もよくて大阪に近いということで。ただ岡山でも別の会社に転職したりしながら過ごしていたんですが、岡山市内はやっぱり都会で、妻の体調がまた悪くなってしまって。それで「もういっそのこと、鳥取の実家近くに行こう」と決めました。

空き家バンクで家を探して、湯梨浜町(ゆりはまちょう)の隣にある倉吉市の担当者の方がすごくよくしてくださって、山の奥に住むことになりました。

フリーランスとして独立を決めた理由

鳥取に移ったタイミングで、個人事業主として独立しました。やっていることはそれまでと変わらないんですが、大阪の会社のつながりで仕事をいただけることになって。「だったら自分でやってみよう」と思ったんです。

あとは、鳥取県にはそういう会社が少ないんじゃないかという感覚もありました。仕事をもらえるなら、ここで独立してやってみようかなというところで始めた感じです。

「とりーみんぐ」を引き継いで

創業24期目の会社を譲り受けた

有限会社 Webとりーみんぐは、前の代表が立ち上げてから今で24期目になります。前の代表は旅館業もやっていて、その副業として立ち上げた会社だったんですよ。旅館の仕事とWeb制作の両方を知っているからこそ、観光業や地域の企業さんへの提案もできるというところが強みかなと思っています。

弊社のサービスは、ホームページ作成・ネットショップ作成・DTPデザイン・映像制作など幅広く手がけています。ただ、制作だけじゃなくて、地域の事業者さんに寄り添ったご提案ができるというのが一番の特徴かなと。

地元に根ざした仕事の面白さ

弊社のお客さんの新規獲得は、今のところ口コミがほとんどなんです。電話がかかってきたり、お問い合わせをいただいたり。それはありがたいことなんですが、やはりそれだけだと難しいところもあって。

倉吉は鳥取県の中部にあるんですが、鳥取県の中でも一番人口が少ないエリアで、高齢化もかなり進んでいます。今いるお客さんもどんどん減っていくことが考えられるので、もう少し拡大していくために営業リストを作ったりしながら、興味を持ってもらえるようなアプローチを考えているところです。

やりがいは「面白いこと」を仕事にできること

この業界に入った理由

そもそもこの業界に入ったのは、「面白いことができそうだ」という感覚があったからなんです。もともと広告制作に興味があって、今もそれに近い仕事をしていますが、やっぱりクライアントさんから依頼をもらってクリエイティブなことができるのがすごくいいなと思っています。

あとは、私自身がちょっと飽きっぽいというか(笑)、一つの仕事をずっとやり続けるのがしんどいタイプで。いろんな業種の方と出会えるのが、この仕事のいいところだなと思っています。いろんな方に出会うと刺激をもらえるじゃないですか。それがすごく面白くて続けています。

これからのビジョン

受注の波に左右されない事業へ

今後の一番の目標は、会社をもう少し安定させることです。受注ベースなので、月によって仕事の量に上下があるんですよね。そこに左右されない事業のかたちができたらと思っています。

Webの「作る価値」が変わるなかで

今の時代、AIが出てきてWebの制作コストはどんどん下がっていますよね。ノーコードツールも普及して、お客さん自身がサイトを作れるようになってきている。「作る」というハードルはものすごく下がっていると感じています。

ただ、専門家としての知見——「どうやったらその人に届くのか」「どう伝えれば効果が出るのか」というノウハウは、こちらの方が持っていると思っています。手を動かす仕事は今後減っていくかもしれないけれど、コンサルティングやアドバイザーという形で価値を出していけたらいいなと考えています。

若い人たちへ

自分のやりたいことを、諦めずに言ってみる

以前、大阪の会社をやめることになった時に、「奥さんの体調が悪いなら、岡山でリモートで働く選択肢もあるよ」と上司が提案してくれたんです。結果としてその会社は辞めることにはなったんですが、そういう提案をしてもらえたのはすごく嬉しかった。

ずっと会社で働いている間、あまり自分の意見を言う方じゃなかったんですよ。でもやめる時に言ってみたら、こういうことがあって。自分のやりたいことを「どうせ無理」と思わずに伝えてみるのは大事だなと感じました。タイミングや伝え方はもちろんありますが、自分の意見ややりたいことを諦めずに言ってみる、それがとても大切なんじゃないかなと思います。

地域密着だからできる、表現の仕事

弊社の魅力は、地域に根ざしていろんな人と出会えることだと思っています。そして事業のやりがいで言うと、自分のアイデアや考えをお客さんという題材を使って形にできることがすごく面白い。広告の仕事は、多くの人に伝わってしまうからこそ責任もあるんですが、それだけ面白いことができるとも思っていて。「自分の表現を仕事にしたい」という人には、すごく向いている業界じゃないかなと思います。

編集後記

小島さんのお話を聞いて、「面白いことを仕事にする」という言葉の重さを改めて感じました。大阪から岡山、そして鳥取の山あいへ——奥様の体調をきっかけに場所を変えながらも、Web制作というフィールドで表現し続けてきた姿勢がとても印象的です。「飽きっぽいからこそ、いろんな人と出会える仕事が合っている」というお話は、自分のキャリアを考えるうえでのヒントになりました。また、やめる時に初めて意見を言ったら道が開けたというエピソードも刺さりました。就活を前に「自分の意見を言っていいのかな」と迷っている学生にこそ、読んでほしいインタビューです。