夢を追い、もがき続けた日々
働く意味がわからなかった
私はもともとプロボクサーとして活動しながら、会社員として製造業の現場で働いていました。夢を追いかけてはいたものの、正直すごくつらかったんですよね。何のために働けばいいのかもわからない。そこから営業の世界に飛び込んだんですが、それも半年と続かなくて。何者でもない、何の能力もない自分を変えたい。社会で通用するスキルが欲しい。そんな思いで、フリーランスとして独立しました。
挫折の経験が自信になった
独立当初は本当に何もできない状態でした。それでも「本気でやれば大丈夫だ」という自信だけはあったんです。なぜかといえば、ボクシング時代に挫折を何度も繰り返してきたから。あのときのつらさに比べたら、独立してからの苦労はまったくつらくなかったんですよね。自分でアポを取って自分で売る。そうしたら少しずつ成果が出はじめて、半年ほどで月100万円以上を稼げるようになりました。1年で販売実績は1億円を超え、最後の月に250万円の収入を得ました。
お金だけでは満たされない
ただ、そのときに気づいたんです。「これって社会のためになっているのかな」と。売っていたのはホームページで、相手は業種を問わず小規模事業主の方々でした。私たちや元請けには大きな利益が入っている。売れるけれど、自分の中で腑に落ちない。お金はあるのに、誰のためになっているのかわからない。この精神的なところで、ものすごくもがきました。これまでを仕事人生を振り返っても、つらかった時期です。
「IKIGAI」との出会い
全財産を失い、再出発
過去最高の成績を出した月を最後に、営業の仕事を一度辞めました。もうこんな世界は嫌だと思って、世界一周でもしようかと考えていました。ところが、ちょうど仕事が嫌になっていたタイミングで投資の話に乗ってしまい、全財産を失ってしまいました。そこからもう一度ひとりで営業代行の仕事を始め、1年ほど続けたんです。商材はたくさんありましたが、自分で責任を持てないことがすごく嫌になって。「本当に社会のためになることって何だろう」と考えるようになりました。
答えられなかった質問
考えてみると、これまで話を聞いてきた小規模事業主の方たちの姿が浮かんだんです。お金や時間に関係なく、自分の生業やサービスを極めている姿がとにかくかっこよかった。そう思っていたとき、オンライン英会話でフィリピン人の講師に「あなたのIKIGAIは何ですか?」と聞かれたんです。私はその質問に答えられませんでした。それからIKIGAIについて調べはじめると、「日本人はIKIGAIを持っている」と書かれていて。いや、持ってないし、誰もそんなこと聞いてこないし、と思ったんですよね。
IKIGAIは小規模事業主にあった
でも振り返ってみると、あの小規模事業主の方たちこそ、IKIGAIそのものだったのかもしれないと気づいたんです。これは日本人がずっと受け継いできた哲学であり、日本に残さなければいけないものだと。今はマーケティングやブランディングで、いいものよりも「よく見えるもの」が広まる時代です。だからこそ、本当に素晴らしいもの、極めているものを残したい。そう思って、ビジネスではなくボランティアとしてインタビューを始めました。
IKIGAIを経済の力に変える
ボランティアでは続かない
ただ、ボランティアは絶対に続かないんですよね。人も集まらないし、経営とつなげなければ続けられない。そこで「IKIGAIを経済の力に変える」にはどうすればいいのか、とにかく考え続けました。ようやくそれが1本の線になったと思えたので、2026年4月から本格的に事業として動きはじめたんです。そうして生まれたのが、経営者インタビューメディア『IKIGAI JAPAN(イキガイジャパン)』です。 会社としては4期目になりますが、今の仕組みが整ったのはこのタイミングから。拠点は福岡ですが、オンラインで全国の方を対象にしています。
インタビューで守る3つのこと
インタビューは今も無料でおこなっていて、必ず守っていることが3つあります。1つ目は、嘘をつかないこと。IKIGAIをつくることが目的だと伝えたうえで、経営を回していく必要もあるので、最後の2〜3分だけ弊社のPRをさせてもらうと最初にお伝えしています。2つ目は、ギフトから入ること。日本的な経営とは何かを紐解いたとき、みんなでハッピーになること、人で選ばれることが大事だと思ったんです。私にとってのギフトは、その人の人生や価値観をきちんと言葉に変えること。広告としても活かせる言葉にすることに、AI時代にも負けない価値があると考えています。
相手も自分も発展する仕組み
3つ目は、経営として考え続けることです。経営はみんなで大きくなることだと思っていて、取材を受けてくださった方も私たちも、両方が発展し続ける仕組みを整えることが大事。だからこそ、相手に嘘もなく、しっかり価値も提供して、弊社もきちんと利益を出す。ここをすごく大切にしています。今は自社の活動が社会のためになっていると思えますし、インタビューを受けてくださったオーナーさんから「尾﨑さんだったら」と紹介をいただき、ほとんどのご縁がそこからつながっているんです。
物語を経済の力へ
事業としては、インタビューメディアの発信に加えて、Web制作や漫画LP制作、広告運用、営業代行・営業支援をおこなっています。漫画LPは日本一の受賞歴を持つ方と一緒に、完全オリジナルのものを制作しているんです。広告作成から営業まで一気通貫で任せていただける座組みをつくっています。自分も成長できて、相手も成長できる。全部が楽しい、というのが今の事業ですね。
誰もが挑戦できる受け皿を
社会的スキルがない人の受け皿に
現在は私に加え、2026年9月から取締役とインターン生が5名加わり、6名で動いています。ビジョンとして一番考えているのは、まだ社会的なスキルを持っていない人たちの受け皿をつくることです。インターン生もそうですし、私自身も製造業で働いていた当時は、社会的なスキルがないと感じていました。それでも新しく挑戦したい人は、すごく多いと思うんです。ただ、そういう人を受け止める場所は今ものすごく少ない。
自分の名前で発信する
その受け皿になるのが、自社でメディアを持ち、自分の名前で発信していくことだと考えています。私はひとりで記事をどんどん書いてきましたが、これは誰でもできることだと思っていて。できない理由はお金と時間、そして教えてくれる人がいないことだけなんです。だからスクールではなく、業務委託やインターンの仕組みとして形にしていきたい。たとえば「お金持ちになりたい」という夢があるなら、自分でお金持ちの方にアポを取って、その哲学を集めていけばいい。記事を書けば報酬が発生する、そんなシンプルな流れがいいと思っています。
独立も転職も選べる場所に
そこで得た経験は、どこへ行っても「このメディアのこの部分を担当していました」と説明できるはずです。ポートフォリオとしても使えます。最終的には人材紹介にも取り組んで、育った人が就職したければ就職し、弊社で働きたければ働き、独立したければ独立する。どの道も選べる形をつくりたいんです。以前いた会社では、辞めようとすると強く引き止められました。社員を抱えると、どうしても会社の利益のために動いてしまう。でも本当にその人の人生を思うなら、すべての道を選べる状態が一番だと思っています。
頑張れでは人は動かない
インターンについても、その子が自分の目標に向かってやれる場所でなければ意味がないと思っています。「会社のために頑張れ」と言われても、頑張れないですよね。私自身、きっとやらないと思いますし。アルバイトならほかにもいくらでもある。どうせインターンをするなら、インターンでしかできない経験をしてほしいんです。
課題は仕組み化と発信力
今の課題は、まだ人に頼れていない部分があるので、みんなで回せる仕組みをもっと考えていく必要がある。そこは取締役が得意なので一緒に進めていて、インターンが増えてきたら内部の仕組みを強化したいですね。メディアはドメインパワーもかなり強くなってきたんですが、SNSなど外に向けたブランディングはまだ手探り。ここもしっかり強めていきたいと思っています。
学生のみなさんへ
本よりも人の話を聞く
私自身、本当に何もなかったし、自分には何もないと思い込んでいた時間がありました。振り返って一番よかったと思うのは、いろいろな人の話を聞いたことです。若いころは居酒屋にひとりで行って、そこにいる人たちの話を聞いていました。「本を読め」とよく言われますよね。それよりも人の話を聞いて、それを自分の中で記事に変えていく。私はそれで人生が変わりました。どれだけ話を聞いて自分の中に落とし込めるか。それを積み重ねていけば、可能性はいろいろな方向に広がっていくと思います。
話を聞くほど人を見る目が育つ
話を聞ける場所としては、ビジョン図鑑のようなメディアもすごくいいと思います。いろいろな人の人生や価値観に触れられるのは、ものすごく価値のあることです。20歳を超えたら、バーで隣の人に話しかけてみるのもおすすめ。私はそれがすごく楽しいタイプでした。本当に何でもいいんです。お金を稼ぎたいと思っていると、よくない人もたくさん寄ってきます。でも、いろいろな人の話を聞いていれば「ちょっと違うな」というセンサーが働くようになるんです。
やりたいことは増やしていい
やりたいことなんて、どうせすぐには決まらないと思います。だから判断を急がず、出会いを増やしていく。私も、やりたいことが決まってから動いたわけではありません。インタビューを続けているうちに、気づいたら「IKIGAIコネクター(イキガイコネクター) 」として活動していた。行動しているうちに形になっていっただけなんです。動いていると表情もどんどん元気になるし、いい人も集まってきます。まずは人の話を聞くことから、始めてみてください。
編集後記
年間1億円を売り上げても満たされなかったという尾﨑さんのお話に、強く引き込まれました。私自身、学生起業に取り組む中で、つい売上ばかりを追いかけてしまいがちです。お金だけでは満たされないという言葉は、実際にそこまでやり切った人だからこその重みがあると感じました。とくに印象に残ったのは、インタビューで「ギフトから入る」という考え方です。相手に先に価値を届け、お互いが発展し続ける仕組みを考え抜く姿勢は、どんなビジネスにも通じるはずです。私もまずは、いろいろな人の話を聞くことから始めてみようと思います。