インタビュー

「置いていけない」その一言から始まった、「100人の1歩」を大切にする会社

「置いていけない」その一言から始まった、「100人の1歩」を大切にする会社
PROFILE
LifeEaseホールディングス株式会社 (株式会社グラジスト) 代表取締役社長
神谷 明美

株式会社グラジスト
HP:http://grazist-group.com/
Instagram:https://www.instagram.com/grazist.group/

サークル運営から始まった、経営という感覚

幼い頃から独立心があり、いずれは経営者になりたいとぼんやりと考えながら、学生時代はサークルを一から立ち上げ運営し、拡大にも力を入れ、300人ほどの組織を動かしてきました。その頃から組織の力でお金を稼ぐという経験をしていました。

23歳の頃に、代理店ビジネスという名のネットワークビジネスと出会いました。恐らく世間的にはあまりよいイメージを持たれない業界だと思いますし、当時も今もそのイメージは大きくは変わっていないと思います。人それぞれの見解があるでしょうから、自分自身がそれを正当化して肯定するわけでも否定するわけでもないのですが、当時、手段のない自分にとって、ビジネスの世界でまず稼ぐという意味では、言い訳せずに一度やってみようと思ったのがきっかけでした。

ネットワークビジネスで見た現実

そこから約3年間、寝ても覚めてもそのビジネスに打ち込みました。誰もが成功できるビジネスではないという世間のイメージがありますが、実際に経験して分かったのは、成果を出すためには、時間、お金、気力、体力、そのすべてを注ぐほどの覚悟が必要だということでした。

ビジネスそのものに関しては自分を丸裸にされ、価値を問われるわかりやすい仕事だと思います。運のよいことに、その3年間は寝食を忘れるほど仕事に打ち込み、その業界でいう最高タイトルを取ることができて、一定の成功と言われるところまでたどり着きました。ただ、その一方で一生懸命取り組んでいる周りの仲間の大半が報われていないという現実を目の当たりにしたんです。でも、こいつらこのまま置いていけないやって思って、自分が会社をつくり、雇用という形で直接支えたいと思ったことが創業のきっかけです。

思えば学生時代から、いつも周りの人に恵まれてばかりで、だからやりたいことも形にしてこられたし、振り返れば人が周りにいるからやれてきたことばかりで、周りがちゃんと躍らせてくれていたんだなって。自分には技術も才能もたいして何もないし、何者でもないけど、どんな時だっていつも人がいてくれたって気づけたのがこの時期ですね。

当時のメンバーたちができることを手探りで探しながら、とりあえず会社というものをつくって雇用しようという、そんな形からのスタートでした。

訪問販売から始まった、営業代行という事業

グラジスト創業当時は通信業界の営業代行を、訪問販売のスタイルでスタートしました。一軒一軒訪問して「切り替えませんか」と提案する、泥臭い営業です。現在は提案の幅が広がり、大手携帯ショップの中で、来店されたお客さまに現状の通信環境をヒアリングしたうえで提案するという形がメインへと変わりましたが、根本的に事業の基盤となっているのは、大手キャリアの光回線をはじめとする通信サービスのコンサルティングです。

通信は、生活にも企業活動にも欠かせないインフラですが、サービス内容や料金体系が複雑で、お客様自身では何を選べばよいか分かりにくい分野でもあります。そこで私たちは、単に商品をご案内するのではなく、お客様の環境や課題を丁寧に伺い、その方に合ったサービスを分かりやすく提案することを大切にしてきました。商品を勧めるというよりは、どんなライフスタイルを望んでいるのかという体験をイメージしてもらうことで、今より快適な環境を提案するという仕事です。

16年、失敗のフルコースを歩んできた

会社を経営してちょうど16年になりますが、振り返ると失敗のフルコースだったと思います。もし歴史を巻き戻してやり直せるとしても、あのときと同じようにやることはおそらく一つもありません。それでも不思議なことに、無駄になったと思うことも一つもないんです。失敗の連続を血や肉として強さに結び付けてきたんだと思っています。

コロナ禍で守った雇用

営業という仕事は人と接することがメインなので、新型コロナウイルスの流行は私自身も経験したことのない出来事でした。世の中がどうなっていくのかわからないという不安はもちろんありましたが、社会全体が同じ状況で、自分たちだけではないので、嘆いていても仕方がないと思っていました。そのとき、いちばん不安なのは社員やその家族だろうと感じて、先行きの見通しが立っているわけではなかったものの、休業状態が続いても給料は全額出しきるから安心してほしいと伝えました。振り返ると、よくあの決断をしたと思います。

人を大切にすることへのこだわり

企業が成長するためには、一部の優秀な人だけに依存するのではなく、それぞれの社員が自分で考え、行動できる組織をつくることが重要です。創業からの共通ミッションとして、「1人の100歩より100人の1歩」というものを掲げてきました。

やはり私が会社を立ち上げた経緯にも理由にもあるのですが、どこまでいっても「人」なんです。組織ってのは1人のスーパースターが100歩進んでも、その1人の機嫌やコンディションで歩みを止めたらそこで終わるし、そこには1人で見る景色しかない。そんなスターより、100人が1歩ずつ歩みを進めていける組織なら、1人が疲れて心の休憩をしていても、たとえ3人がけがをしたとしても、その間、仲間を想い、残りのやつらが歩みを進める。それでちゃんと前進できる。1人では行けない場所に、1人では見られない景色を見に行きたい。そんな思いで立ち上げた会社です。

人生をもっと気楽に

現在はLifeEaseホールディングスを中心とする5社体制となり、変革を進めている最中です。グラジストが培ってきた営業力や教育力に加え、株式会社LIBREによる通信設備の施工・管理、株式会社TechnnovaによるIT・テクノロジーを活用した課題解決やWebデザイン・制作、株式会社ほーむによる社会課題と向き合う福祉事業など、グループ各社の専門性を組み合わせられるようになっています。

それら各社の専門性をさらに高めていけるように、グループとしての連携を強化しLifeEaseホールディングスが各子会社の人事・経理・労務・情報システム・広報・業務管理・経営指導を本部機能として一手に担い、経営資源(人材・資金・情報)を最適配分し、グループシナジーを最大化する役割を担っています。

なんていうかっこよい言い方をしましたが、ただただ、私たちの原点は、あくまでも人と人との関係です。

どれだけ時代や仕事が変わろうとも目の前のサービスや売上、数字だけではなく、人や地域、社会から長く必要とされる会社を目指すことが、我々の基本姿勢です。そこにはいつだって、人がいて、感情がある。現場にいるのは数字じゃなくて、数字に向き合っている「人」であり、人の心は変数だと思っています。

理屈や正論、制度だけでは扱えない『人の感情』がある。そのことを大前提として、グループ本部であるLifeEaseホールディングスは、「Life is Easy.――人生は易しい」「人生をもっと気楽に」という理念を掲げています。そして、「現代社会の複雑さをシンプルにし、人々の生き方を少しでも楽にする」という使命のもと、人や社会が前向きに歩める仕組みをつくることを目指しています。

スキップして出勤したくなる職場を目指して

働き方改革が叫ばれる時代のなかで、弊社も年間休日数や福利厚生の充実など、業務環境の最適化を進めていて、残業もほぼありません。創業当時はおそらくかなり厳しい働き方だったと思いますが、時代の移り変わりとともに、会社としてもきちんと対応してきたつもりです。

ただ、ワークライフバランスという言葉に対して、少し踏み込んで考えるなら、一日って8時間眠って、8時間働いて、残りの8時間がプライベート、という感覚を持たれる方が多いと思います。人生の3分の1は眠っていて意識がないわけですから、意識のある時間の半分は仕事をしていることになります。仕事は大変でストレスもあるけれど、プライベートが充実しているからよい、という考え方ももちろんあってよいと思います。ただ、仕事の時間もハッピーであれたら、もっとよいだろうと思うんです。出勤するときに気持ちが軽く、浮き足立つような職場環境をつくっていけたらというのが理想です。少しきれいごとに聞こえるかもしれませんが、こういう時代だからこそ、その理想をぶれずに追いかけ続けたいと思っています。

情報に振り回されず、根本の考え方を磨いてほしい

今の時代は、情報を簡単に手に入れられます。ただ、簡単に情報を得られても、結局自分自身に残るものは少なかったり、専門家が増えているはずなのに問題は増え続けていたり、笑うことは減ってイライラしていたり、スマートフォンと向き合う時間は長いのに、そのまま寝落ちして起きたときには疲れている、ということが起きていると思います。

いろいろな知識や情報に惑わされて、権利を主張する言葉ばかり覚えて、相手を尊重することがおろそかになったり、自分とは違う考えを聞いたときに違和感を持って攻撃的になったりすることもあると思います。努力して仕事をして、日々のストレスに耐えて頑張るのは、幸せになりたいという気持ちが根っこにあるからだと思うので、幸せになるためには、根本的な考え方をきちんと磨いていく必要があると考えています。

当たり前に感謝しなさい、ということではなく、仕事を通じて、自分自身の根本的な心の在り方を磨いていける。そんな環境を提供できる大人の集まりでありたいと思っています。結局、人は環境によって大きく左右されると思うので、その環境をどうつくるかがとても大事だと感じています。

編集後記

今回お話をうかがって、いちばん印象に残ったのは、神谷さんが創業のきっかけから一貫して「周りの仲間を置いていけない」という思いを軸にされてきたことです。売上や規模の目標を語る経営者が多いなかで、メンバーがスキップして出勤できる職場をつくりたいという言葉には、経営者としての覚悟と優しさの両方が詰まっていると感じました。情報に振り回されず、根本の考え方を磨いてほしいというメッセージは、私自身も日々アンテナを張っている情報との向き合い方を見直すきっかけになりました。貴重なお話をありがとうございました。