好きな分野を広げたくて起業
数理統計学が好きだった
私は大学時代にデータマイニングや数理統計学を勉強していて、その分野がとても好きでした。ただ、20年以上前は市場がなく、そもそも仕事にしている人がすごく少なかったんですよね。そのため、普通に社会へ出る道を選びました。22歳で外資系のメーカーに入り、その後は株式会社KPMG FASなどを経て、20代のうちに数社の転職を重ねました。
ビッグデータブームを機に留学を決意
30歳になったころ、データサイエンティストやビッグデータといった流行が来ました。昔好きだった分野で食べていけるかもしれないと思い、ブランクを取り返すべくアメリカの大学院に留学しました。そこでデータサイエンスとAIの修士号を取って帰国したあとは、有限責任監査法人トーマツのデータ分析チームに入り、その後、スタートアップ1社を経て、今の会社をつくりました。
データサイエンスという分野が知られていないという現実
アメリカから帰ってきてから感じたのは、データサイエンスやAIの分野を仕事にして課題だと感じたのは、技術的な中身も、ビジネスや業務での使い方も、私が想像していた以上に知られていないことでした。データは食材のようなもので、AIや機械学習、統計はその料理方法のようなものです。そもそもデータを扱える人が増えないと、データサイエンスという分野は広がらず枯れてしまいます。さらに、アメリカから帰ってきたばかりの時は、日本が少し遅れているような気もして、もっと早く広めなければと思い、データサイエンスやAIの教育事業を始めました。
事業内容
人材育成とコンサルティングの両輪
事業内容は、大きく2つあります。1つはBtoCの事業としてデータサイエンティストやAIエンジニア、データエンジニアを育成するスクールがあります。もう1つは、法人・企業向けのAIやデータに関する人材育成と、データマネジメントやデータガバナンスのコンサルティングです。このように、コンサルティングと人材育成の両方をおこなっている会社です。
創業後の苦労と転換
事業成長への試行錯誤
合計3回の資金調達をして、事業を伸ばそうとしてきました。ただ、なかなか思うようには成長しなかったんですよね。これが一番大変だったことです。集めたお金を投資して、売り上げや利益に跳ね返さないといけないのですが、思ったようにうまくいかないこともたくさんありました。
コロナと生成AIの影響
外部環境でいうと、創業して2〜3年後くらいにコロナが来ました。弊社は対面での授業やワークショップが多かったので、対面でのサービス提供ができなくなりました。また、生成AIが出てきたことで、多くのお客さまのデータやAI活用へのモチベーションが上がった面はよかったかもしれません。ただ、競合も増えたので、マーケットとしては非常に大変でした。組織づくりにも苦労してきました。
講師・コンサル人数という「成長のボトルネック」を解放題
弊社のビジネスは労働集約的で、たくさんの人に働いてもらって稼ぐ点は、教育・研修・人材育成もコンサルティングも同じです。ただ、DXやAIはそもそもどこも人材不足なので、普通には採用できません。そのため、正社員での採用では成長のボトルネックを外せないと思ったため、BtoCのスクールの卒業生や受講生を、副業や正社員として迎えるようにしました。この循環的なサイクルにしたことで、正社員を大きく増やさなくても、少数精鋭で事業が回るようになりました。
これからのビジョン
M&Aで上場企業のグループ入り
弊社は今年4月に、株式会社情報戦略テクノロジーという会社の子会社になりました。M&A(企業の合併・買収)なので、私から見るとExit(株式売却などによる投資資金の回収)です。スタートアップ業界全体が激動で、弊社も大きな変化に向き合う中で、価値観が共有できる会社のグループに入りました。情報戦略テクノロジーはDXの総合商社で、多重下請け構造ではなく、エンジニアにとってもお客さまにとっても価値があることを大事にしています。弊社も同じ考えで、ぜひ一緒に仕事をしていきたいと思って、このM&Aを決断しました。
AI時代に必要不可欠なデータマネジメントを支えたい
DXやAIはお客さまの業務と密接不可分なので、クライアント企業の課題解決にもっと力を注ぎたいと思っています。具体的にいうと、AIを活用しようと思えば思うほど、データの品質や、データに関する管理、ルールといったいわゆるデータマネジメントがもっと大事になるはずです。しかし、そこに課題を抱えている会社は多いんですよね。そうした課題に向き合っていきたいと考えています。
海外のお客さまを増やしたい
データサイエンスやデータマネジメントの専門家として、もっと多くのお客さまを支援したいと思っています。その先には、グローバル展開、つまり海外企業のお客さまをもっと持ちたいと考えています。自分も留学していたので、世界は広いなと感じています。日本だけでなく、海外でのサービス提供ももっともっと目指していきたいです。
学生へのメッセージ
問われるのは専門性
学生のみなさんに伝えたいのは、AI時代だからこそ、あなたは何者なのか、あなたの専門性は何なのかがもっと問われるということです。他の人がやっていないことをやるのが大事ですし、人と違っていて良いと思います。
作るコストは下がった
AIを使って何かを作るコストは、大きく下がりました。資料でもプログラムでもすぐに作れます。ただ、それが価値あるものになるかどうかは、使い手の思想や考え、その人が表現したいこと、「想い」「こだわり」に依存します。その「想い」「こだわり」がないものは誰でも作れてしまいますし、コストが安いので大量に生まれます。だからこそ、強烈に作りたいものや、自分の個性を反映させる何かが必要で、それは指示を出すところや、修正・確認するところに表れます。
言葉にする力を磨く
作るのは安くても、指示を出すところや、チェック、修正するところには人間のパワーがかかります。今は言葉で伝えることが多いので、言語力を高めて、自分が表現したいものをAIに指示すれば、その人らしいものができあがっていきます。専門性が大事ですし、自分の強みを自覚することも、それを言葉にする力を磨くことも大事です。そうしていくことで楽しい仕事人生が待っているのではないでしょうか。
編集後記
AIで何でも作れる時代だからこそ「あなたは何者か」が問われる、というお話が強く印象に残りました。私自身、学生起業を通じて少しビジネスに触れていますが、AIに頼るほど、自分が何を作りたいのか、どこに違和感を持つのかという軸が大切になると感じています。堅田さんが大学時代から好きだったデータの世界を、遠回りをしながらも事業として広げてこられた姿は、専門性を磨くことの意味を教えてくれました。また、指示や修正の精度は言葉にする力に通じる点も、腑に落ちました。まずは自分の強みを言葉にする練習から始めてみます。