インタビュー

均一化する日本のまちに「らしさ」を取り戻す。地域ブランディング研究所・吉田博詞が歩んだ14年

均一化する日本のまちに「らしさ」を取り戻す。地域ブランディング研究所・吉田博詞が歩んだ14年
PROFILE
株式会社地域ブランディング研究所 代表取締役
吉田 博詞

都市計画を学んだ学生が、地域創生の道を選ぶまで

均一化していく日本のまちなみに感じた違和感

学生時代は都市計画を専攻していて、まちづくり関係が本業だったんですよね。もともと自分がやりたかったのは、いわゆる都市開発というよりも、今でいう地方創生の分野でした。当時はまだそういう言葉自体がなかった時代なんですけれど、まちおこしや地域の活性化といった領域に、自分自身が携わっていきたいなという想いがあったんです。

その背景には、私自身が広島の田舎出身だったこともあります。地域にある歴史や文化、大切にされてきたものが、どんどん廃れていく状況を目の当たりにして、もったいないなと感じていたんですよね。日本全国、そして世界各国をまわるなかで、世界のいろいろなまちには「そのまちらしさ」があるのに、日本のまちはどんどん均一化しているという状況にも、もったいなさを感じていました。駅前の風景も、チェーン店の並び方も、どこも同じような表情になってしまっているんです。

もともとあった地域らしさを、しっかりと後世に残していく。そして、それが再び活性化していく。そんな仕事をしたいという想いを、学生時代から持つようになっていきました。

リクルートで営業と事業づくりを学ぶ

とはいえ、そういう想いをすぐに仕事にできる環境は、なかなか見つからなかったんですよね。そこで学生時代のうちに、地域活性化のプロデューサー的な立ち位置で活躍されている方々に弟子入りするような形で、いろいろとお話を聞かせてもらっていました。

そのなかで出会った方から、「20代のうちはいろいろと修行や勉強をしたほうがいい」というアドバイスをもらったんです。事業をつくったり、営業を経験したりすることが、将来につながるという話でした。そこで最初は株式会社リクルートに入社しました。リクルートのなかには地域活性事業部という部署があり、学生時代にその部署でアルバイトもさせてもらっていました。そのご縁から、部署の先輩が独立して作った会社に転職し、20代はビシバシ鍛えてもらったんですよね。

転職した会社で担当していたのは、ロケの誘致による地域の活性化でした。ロケという産業はとても華やかで、携わっていて楽しくはあったんですけれど、同時に一過性だなとも感じていました。よい作品が来れば地域が元気になる一方で、それが来るかどうかは確証されているものではありません。私がやりたかったのは、その地域そのものをしっかりと活用しながら、もっとよい形で磨き上げていくことだったんです。

東日本大震災を経て、独立を決意

弊社を創業したのは2013年です。今年で14期目になります。きっかけになったのは、東日本大震災でした。震災後、自分がどう生きたいかを見つめ直すなかで、後悔したくないという想いが強くなったんですよね。

日本国内の特徴的なまちを残していきたい。そして、これからインバウンドがより増えていく時代だからこそ、そういったニーズも含めたソリューションをつくっていきたい。自分自身も、そこに一石を投じたいという想いで立ち上げたのが、株式会社地域ブランディング研究所です。

「まちの誇り」を磨き、届ける地域ブランディング事業

地域の魅力を発掘し、経済循環を生み出す仕組みをつくる

弊社の名前には、「地域のブランド」をつくっていくという想いを込めています。地域の魅力を磨いていくことで、そのイメージが定着し、来る人たちが増えていく。そして地域の人たちも、来てくれた人たちに対して、いい意味で自慢できるようになる。来た人たちも、その地域のファンになっていく。そんな流れをつくっていきたいんですよね。

具体的には、地域ブランディングの戦略や立案から始まって、来た人たちにどうお金を落としてもらうか、どう地域と交流してもらうか、どう経済循環を生んでいくかというところまで、体験や交流の企画を立案しています。そのうえで、地域の皆さんが実装し、しっかりと回していける仕組みや受け入れ母体を構築するところまで、伴走しているんです。

最後に地域が自走するのは、私たちが立案してきた体験や交流、滞在といったものです。祭りに参加する、農業に携わる、伝統工芸に触れる。その地域でしかできない時間を、地域のプロフェッショナルの方々、想いを持って生きている方々から教えてもらいながら、深く堪能してもらう。そういったものを各地でプロデュースしています。行政の皆さんに対しては、地域のブランド戦略や情報発信、ストーリー性のあるブランドコミュニケーション全般の設計といったところも展開させていただいています。

お付き合いする先は自治体やDMO、観光協会

弊社のお客様は、自治体や行政、あるいはDMO(観光地域づくり法人)や観光協会と呼ばれるような、地域の観光を推進している組織になります。ほかにも温泉組合など、外から人が来ることをもっと加速していきたいという想いを持っている、大きな取り組み推進部隊の方々が、弊社のお手伝いをする先になっているんですよね。

お問い合わせをいただくきっかけとしては、弊社の実績やホームページを見ていただいたうえで、評価をいただきながらご相談をいただくケースが増えています。最初のつながりでいうと、行政の公募案件から始まることもありますし、国の補助金など何らかの制度を活用しながら、私たちがメンバーの一員として原資を獲得し、動かしていくケースもあります。

「儲からない」領域で、地域ごとに向き合い続ける難しさ

利益率の高い仕事ではないからこそのソリューションが必要

正直に申し上げると、地域の活性化や自治体と一緒に取り組む仕事は、決して利益率の高い仕事ではないんですよね。それでも、弊社としては地域ごとにきちんとしたソリューションを出していく必要があります。だからこそ、ある程度カスタマイズが必要になりますし、地域では各種団体やいろいろな人のつながりのなかで、「俺は聞いていない」という方が出てくることもあります。調整実務が多いというのが、正直なところです。

何かをスケールさせられる世界ではないなと感じながら、地域ごとの課題にぶつかる壁は多分にありました。時には、土下座に近いような形で謝りに行くようなケースもありましたね。そういった経験を重ねるなかで、地域それぞれに対して情報を出していくことの難易度の高さを痛感してきましたし、一定の事業化をすること自体も簡単ではありません。それでもやり続けているのは、日々試行錯誤をしながら、なんとか踏ん張っているという状況だと思います。

本気の方がいる地域を、応援していきたい

案件を選ぶうえで大切にしているのは、その地域のなかに本気の方がいるかどうかです。本当にその地域を愛していて、なんとか変えたいという想いを持っている方がいらっしゃれば、なんとか応援していきたいと考えています。

ただ、その方お一人だけでは、なかなか難しい場合もあります。何かを推進していくことを良しと思わない方が出てくるケースもあるんですよね。そういった調整は、その方を応援したいからこそ、私たちも頑張って対応しているところです。

とんがった事例づくりと、人材のコミュニティ化

数より、代表事例と呼べる実績を

弊社が今後大切にしていきたいのは、お付き合いさせていただく地域の数を増やすことではありません。応援している地域が、しっかりと成果を上げていく。それをより早く成し遂げていくことです。弊社がプロデュースした事例として、多くの方に認識してもらえるような、代表事例と呼べる実績を重ねていきたいと考えています。

OBを含めた人材のコミュニティ化を目指す

もう一点、大切にしたいのは、いい人材の輩出です。弊社にずっとメンバーがいることがすべてではなく、OBや弊社とつながりのある方々が、各地で活躍していく。そういう流れが加速していくといいなと思っています。メンバーが各地に住み込んで、その地域の推進役として、自分の好きなまちで活躍していってくれる。そんな展開を後押ししていきたいという想いを持っています。

学生へのメッセージ

地方をはじめ、いろいろな地域で活躍したいという熱い志を持っている人がいれば、弊社は最短でそのために必要な力を身につけられる環境を提供しているつもりです。そういう仲間が集まっているのが弊社だと思っています。

同じ志を持つ仲間と切磋琢磨しながら、将来は自分の好きなまちで活躍する。そんな想いを持っている人と、ぜひ一緒にやってみたいですし、そんな人たちが日本全国を変えていってくれる流れができることに、私自身もワクワクしています。ぜひ一度、会ってみたいというのが率直な思いです。

編集後記

今回、地域ブランディング研究所の吉田さんにお話をうかがって、印象に残ったのは「本気の方がいる地域を応援したい」という言葉でした。効率やスケールでは測れない部分に向き合い続ける姿勢は、私自身も学生団体の活動でぶつかる壁と重なるところがあり、すごく共感しました。数ではなく「とんがった事例」を大切にするという考え方は、自分の将来のキャリアを考えるうえでも、とても参考になりました。貴重なお話をありがとうございました。