インタビュー

能力が高い人ほど、間違ったゴールにも速くたどり着く。広告AIと人生の意外なつながり

能力が高い人ほど、間違ったゴールにも速くたどり着く。広告AIと人生の意外なつながり
PROFILE
株式会社シグルタ 代表取締役
福山大幸

その将来像は、本当に自分が望んだものですか?

「将来、どんな自分になりたいですか?」と訊かれたら、何と答えますか。就職活動に限らず、日々の生活の中でも、私たちは「将来の目標を持つこと」を求められることがあります。もちろん、目標を決め、それに向かって努力することは大切です。しかし、理想の未来を追いかけるほど、かえって今の自分が苦しくなってしまうこともあります。

株式会社シグルタの代表取締役を務めている福山です。私もかつては輝かしい将来像を思い描き、そのために今を我慢しながら走り続けていました。その経験から見つけたのは、未来を先に決めるのではなく、「今の好奇心から育てていく」という生き方でした。

輝かしい未来のために、今を我慢していた

かつての私は、「将来はこうなりたい」という明確な理想を持ち、そこへ向かって努力するタイプでした。分かりやすく言えば、「理想の自分になるためなら、今やりたいことを我慢するのは当然」であり、「多少つらくても、未来の成功につながるなら頑張る」というふうに考えていました。つまり、「やがて訪れるだろう輝かしい未来のために、今は我慢しよう」と思っていたのです。しかし、その考え方を続けているうちに、仕事も人生も少しずつ面白くなくなっていったのです。未来のために走っているはずなのに、目の前の時間を楽しめなくなってしまったのです。さらに、「この状況のまま、あと数年間努力を続けたとしても、思い描いた未来に到達できる保証はない」とも思いました。そこで私は、将来の理想から逆算する生き方を一度手放し、「今、自分が興味を持っていること」、「やってみたいと感じること」に目を向けるようにしました。

未来は今の好奇心から育てていく

お伝えしたいのは、「目標を持たなくてよい」、「努力しなくてよい」という話ではありません。遠くにある理想のために今を犠牲にするのではなく、「今の自分が面白いと思えることに力を注ぐ」ことが大切だと思っています。そして、「その積み重ねの先に、自分らしい未来ができていくのではないか」と考えるようになりました。要するに、努力をやめるのではなく、努力する方向を「今の自分の好奇心に合わせて更新していく」ということです。

肩書きや収入は、世間から評価されやすく、目標にもなりやすいものだと思います。一方で、将来を考える際には、自分が自然に興味を持てることも、ひとつの判断基準として加えてみるという考え方もあるのではないでしょうか。

私自身は、そう考えるようになってから、以前より仕事を楽しめるようになり、心も楽になりました。振り返ってみると、私自身のキャリアも、最初に描いた計画どおりに進んできたものではありませんでした。 

ジャズギタリスト志望から、社食をきっかけに新しい世界へ

私は、もともとジャズギタリストとして生きていくことを目指していました。
その後、就職することを決め、当時興味を持っていた不動産会社の営業職を数社受けましたが、結果はすべて不採用でした。

そして、「次に何をしようか」と考えていた時に、目に留まったのが、大手インターネット広告会社が打ち出していた「社員食堂が食べ放題」というコピーでした。

単純にそこに惹かれて応募したところ、思いがけず採用してもらえました。それがデジタルマーケティングの世界へ飛び込んだ最初の一歩でした。

偶然のようなきっかけから入った世界でしたが、仕事に面白さを感じ、広告支援会社や複数の事業会社で経験を重ねました。さまざまな業界のマーケティングに携わり、10年以上にわたり、専門性を磨き続けています。

経営者となった現在も、ギターは続けています。「最初から一つの将来像を決め、それ以外を手放す必要はない」というのが、私自身のこれまでの歩みからの振り返りです。

広告も人生も「何を成果にするか」が大切

会社員時代、私は自身が生み出した成果と社内での評価にズレを感じるようになりました。そこで、「自分の仕事には、本当はどのくらいの価値があるのだろう」ということを実際の市場で確かめたいと考え、2023年に弊社を設立しました。

弊社が支援しているのは、広告の問い合わせ数だけでなく、「問い合わせから、その後の商談、契約、売上までをつなぎ、本当に事業成果につながるデータを広告運用へ活用すること」です。なぜなら、たとえ問い合わせが増えていたとしても、それが売上につながっていなければ、企業にとって本当の成果とは言えないからです。

私は、広告の仕組みと人の生き方には、共通する要素があると考えています。例えば、広告AIは、設定された成果に向かって効率よく学習します。しかし、最初に設定した成果が間違っていれば、性能が高いほど、間違った方向へと速く進んでしまいます。実は、人間も同じです。目標達成力のある人ほど、一度決めた将来像へと速く進めます。しかし、その将来像が「本当に自分に合っている」かはわからないものです。だからこそ、走り出す前に、「自分は何を本当の成果にしたいのか」を考えることが大切だと思っています。

最初から、正しい将来像を持たなくていい

将来について真剣に考えている学生ほど、「早く目標を決めなければならない」と感じているかもしれません。しかし、今決めた目標を生涯守り続ける必要はありません。まずは、目の前にある少し気になることを試してみる。その経験から、自分が面白いと感じたことや、もっと知りたいと思ったことを拾っていけばいいと思っています。もちろん、違うと感じた場合、そこで方向を変えても問題ありません。将来像は、一度決めたら変えてはいけない答えではなく、今の経験に合わせて更新していく仮説のようなものだと私は考えています。「未来のために、今やりたいことを全て犠牲にするのはもったいない」と思います。自身の好奇心に素直になって、今を楽しみながら進んでみてください。そして、その先に「自分らしい未来」があれば、一番いいのではないでしょうか。

実際この考え方は、弊社の組織づくりにも反映させています。トップが決めた答えに従うだけでなく、ひとりひとりの「やってみたい」という気持ちや現場で生まれた疑問を大切にしています。「自分なりに考え、本当の成果を探せる人と共に会社を育てていきたい」と考えています。今後は、この考え方に共感し、顧客ごとの「本当の成果」を一緒に考えていける仲間を増やしながら、事業を育てていく方針です。

未来は、最初から決めきるものではないと思っています。今の自分が感じている小さな好奇心に目を向けることが、自分に合った未来を育てる最初の一歩になるのかもしれません。

この会社のよくある質問

どんな人がシグルタに向いていますか?

「好奇心を持ち、自分で考え、まず試せる人」だと思います。弊社は、決められた答えに従うだけでなく、それぞれの「やってみたい」という気持ちや現場で生まれた疑問を大切にしている会社です。

未経験でもマーケティングの仕事に挑戦できますか?

未経験でも、挑戦できると思います。経験の有無よりも、顧客の事業を理解しようとする姿勢や分からないことを自分で調べ、試してみる力を大切にしています。私自身も、ジャズギタリストとして生きていくことを目指していました。その後、社食をきっかけにデジタルマーケティングの世界へ入りました。

編集後記

デジタルマーケティングのプロとして、10年以上の研鑽(けんさん)を積み、現在は経営者として次のフェーズを描いている福山さん。特に印象に残ったのは、「なりたい自分を追うほど、今が苦しくなっていた」という振り返りです。就職活動でも、将来像から逆算して考えた結果、現在を我慢しがちですが、好奇心に素直になり、今を楽しむという選択肢もあるのだと、改めて気づくきっかけをいただきました。貴重なお話を聞かせていただき、ありがとうございます。