インタビュー

フラフラの就職活動から、世界初のリカバリーウェアが生まれるまで

フラフラの就職活動から、世界初のリカバリーウェアが生まれるまで
PROFILE
株式会社ベネクス 代表取締役
中村太一

介護の現場から生まれた発想

床ずれ予防マットを開発

大学時代はあまり勉強もせずに過ごしていて、就職を考えたときに、どうせ働くなら人の役に立つ仕事がしたいと思ったのがきっかけです。当時は介護保険制度ができたばかりで、これから介護施設がどんどん増えていくと知り、高齢化が進んでいく社会に必要とされる仕事だと感じて、最初の就職先に介護の仕事を選びました。3年ほど勤める中で出会ったのが、寝たきりの方の「床ずれ(とこずれ)」という課題です。同じ場所にずっと圧がかかることで、皮膚が傷んでしまう症状で、ケアする介護士の負担も大きいものでした。なんとかできないかと考えて、床ずれになりにくいマットの開発に取り組んだのが、最初の一歩でした。

繊維に機能を持たせる

マットを開発する過程で、クッション性や体圧分散を追求していくうちに、人の肌に一番近いところにある繊維そのものに機能をもたせられるのではないかと気づきました。そこから繊維の研究開発にも取り組むようになりました。あわせて、介護施設で働く方たちの離職率の高さも大きな課題でした。体調を崩しやすい職員を支えるためのケアウェアをつくり、展示会に出品したのが、リカバリーウェアにつながる次の展開でした。

ゴールドジムから広がったリカバリーウェア

予期せぬ引き合い

展示会には、まったく想定していなかったアスリート向けの企業からも声がかかりました。ゴールドジムのバイヤーから「トレーニーに良いのではないか」と声をかけていただいたんです。ちょうどその頃、リカバリー(疲労回復)という考え方が、少しずつトレンドになりはじめていた時期でもありました。

世界初の休養時専用ウェア

リカバリーの方法をいろいろ調べてみると、お風呂に入ったりマッサージをしたりと選択肢はあるものの、専用のウェアというものは世界のどこにもありませんでした。それなら、世界で初めてつくってみようと決めたのが、リカバリーウェア事業のはじまりです。実際に商品を試したアスリートから非常に好評で、口コミが広がり、ジムを中心に爆発的に売れはじめました。

ベネクスの強み

休養の専門会社として

弊社は、休養の専門会社です。リカバリーウェアは今では多くの方に知っていただけるようになりましたが、その根幹を支える研究の背景や、安全性・耐久性まできちんと突き詰めているところが、自信を持ってお届けできている理由だと思っています。スポーツチームのトレーナーさんのように専門知識を持つ方ほど、その違いに気づいてくれると感じています。

リピーターの多さ

品質のよさを実感していただけるので、2枚目、3枚目と買い足してくださる方や、お世話になった方へのギフトとして選んでくださる方も多く、リピーターの割合が高いことも弊社の強みだと思っています。

材料から自社で開発

一般的なアパレル企業は、繊維をつくる会社と製造をおこなう会社が分かれているケースが多いのですが、弊社は繊維の中に入れる材料の開発からおこなっています。企画から製造まで一気通貫でおこなっていることが、品質の高さにつながっていると思います。

「市場を創造する」というビジョン

「休養学」という発想

今後のビジョンは、「市場を創造し、そこに関わるすべての人を元気にする」ことです。運動には運動生理学、栄養には栄養学という、大学などで学べる体系がありますが、休養にはそうした学問がありませんでした。そこで弊社では「休養学」という考え方をつくり、高校や大学のスポーツチームなどに伝える活動をおこなっています。理解していただいたうえで、日常生活の中にリカバリーウェアを取り入れてもらうという流れをつくっています。

人間だけでなく犬にも

すでに発売している商品としては、ウェアと同じ素材を使用した体に塗るタイプのアイテムや、犬用のリカバリーウェアもあります。人だけでなく、動物にもリカバリーの考え方を広げていきたいと思っていて、新しい商品もいろいろ準備を進めています。

研究開発とものづくり

20年以上おこなう休養の研究

弊社が研究開発で着目しているのは、自律神経のはたらきです。興奮系の交感神経と、リラックス系の副交感神経のバランスが体をコントロールしていて、現代人はスマートフォンの見すぎなどで交感神経が高ぶったままの人が多いという課題があります。副交感神経を優位にすることが、リラックスの鍵であるということに注目し、休養に関する研究、開発を20年以上しているということが弊社の大きな特徴です。

学生に伝えたいこと

とらわれすぎなくていい

就職活動やキャリアを考える学生さんには、あまり真面目にいろいろ考えすぎなくてもいいと伝えたいです。学生のうちは情報も視野もどうしても限られているもので、周りと比べて焦る必要はありません。学校の成績よりも、自分がどう生きたいかを考えることの方が、よほど大事だと思っています。

海外に住んでみる

もし学生時代に戻れるなら、海外に住んでみたいと思います。旅行では表面的なことしか見えませんが、住み着くことで、その土地の風土や人まで見えてきます。学生のうちにしかない時間を生かして、視野を広げる経験をたくさんしてほしいと思っています。

編集後記

今回のインタビューを通して、床ずれ予防のマットづくりから世界初のリカバリーウェアが生まれた経緯を伺い、目の前の課題に向き合い続けることの大切さを感じました。「休養学」という新しい学問をつくり、市場ごと育てていく姿勢にも強く惹かれました。「学生時代は自由でとらわれなくていい」という言葉に、自分自身の進路の悩みも少し軽くなった気がします。貴重なお話をありがとうございました。