インタビュー

中卒、事故、絶望から始まった。おばあちゃんに救われた男が「働く」で日本を変える

中卒、事故、絶望から始まった。おばあちゃんに救われた男が「働く」で日本を変える
PROFILE
うきはの宝株式会社 代表取締役
大熊 充

学歴がなくても、経営者になるしかなかった

学生時代のことをよく聞かれるんですけど、私、中卒なんですよ。学歴がないと、当時はやっぱり就職が厳しくてですね。就職できずに起業して、そこからもう長いことやってます。今46歳なので、20数年、会社もいくつも立ち上げてやってきているという感じです。

勉強しておけばよかったなというのは、日々「たられば」で思いますけど、あまり勉強はしてこなかったですね。どちらかと言えば非行に走っていたほうだと思います。

学歴も後ろ盾もない場所から、なぜ経営者になったのか。振り返れば、就職という選択肢がなかったからこそ、自分でビジネスをするしかなかったんですよね。

バイク事故、四年の入院、そして絶望

なんで今の事業につながっているのかというと、結局、人生は全部つながって来ているんですけど、20代の頃、バイク事故を起こしてしまって、4年ぐらい結構長く入院しているんですよ。25歳から28歳まで入院していたんです。

若い時に自由もなくして、やっぱりバイク事故で怪我が治らなくて長く入院していると、将来に絶望してしまって。それで精神を壊してしまったんですよね。その時に、結構同じく入院していた、まあ病院っておじいちゃんおばあちゃんがすごく多いんですけど、おばあちゃんたちに支えられて社会復帰してきたというのが、個人的には強くあったんです。

だから、おばあちゃんへの恩返しというのが、今の弊社の事業の原点になっていますね。

楽しく適度に働けばいい

75歳以上の現役世代が高齢者を社会保障費という形で支える構造が、今、日本ではかなり限界な状況に来ているんです。だったら、そもそも支えられるだけでなく高齢者自身が楽しく適度に働いたらいいじゃない、というのをビジネス会社として始めてみたんです。みました。

社会的に見て、と言うと少し後付けではありますけど、世の中もそれを求めているんですよね。商売って、やっぱり人々が求めていないと続けることはできないと思うので。今、ものすごく世の中が求めてくださっているのを感じています。福岡が本社ではあるんですけど、今は全国にフランチャイズだったり提携だったりで、どんどん広めていっている形です。

二つの強みを掛け合わせる

弊社には、大きく二つの強みがあるんですよ。私自身Webデザイナーで幹部も同じくデザイナーなので、世の中の課題をデザインという切り口で解決する、という考えを持っています。ブランディングだったりデザインそのものだったりといったビジュアル面もやりますし、デザイン思考を用いてデザイン以外もやっていくんです。そこは圧倒的な強みを持っています。そこに「おばあちゃん」という二つ目の強みを組み合わせたという形ですね。

おばあちゃんたちは、おばあちゃんたちの得意分野と特性を活かした仕事を作っていく。誰かにやらされる、大手さんから仕事をもらってやらされるというのではなく、自分たちで組んで仕事を作っていくんです。だから下請けはやっていないんですよね。自分たちのブランドを作って、自分たちで価格決定権を持って展開しているので。

正直なところ、利益を上げながら広げていくというのは簡単ではないです。「おばあちゃんたちと働くのは難しいでしょう」とばかり言われたり。それでも、利益を上げながら広げていっているというところですね。自分たちの価格決定権とブランドを持っているというのが、やっぱり強いと思っています。

全国に広がる「ばあちゃん喫茶」

情報があまり出せていなかったかもしれないんですけど、実はもううきは市だけではなくて、今は全国色々なところに展開しています。うきは市は本社機能があるところですね。のみで福岡市内にも進出していますし、全国各地にフランチャイズ提携でも「ばあちゃん喫茶」が広がっています。

ばあちゃん喫茶のフランチャイズは、今期50拠点、来季100拠点を目指して動いています。今月から募集を始めたんですけど、うちに知名度うちの「ばあちゃんビジネス」注目されているというのあるというのもあって、まだ1週間しか経っていないのに、約100件近くお申し込みをいただきました。全てと契約になるかどうかはこれからですけど、それなりに広がるかなと思っています。

7月1日からは、クラウドファンディングを開始して、フランチャイズ加盟が同時にできるようになっています。ライセンスは19万8,000円という、すごく安い金額で出していて、企業様だけではなく、そちらは個人や非営利、まちづくりの方向けで、個人のおばあちゃんが導入されるケースもありますね。70代のおばあちゃん個人的に「このばあちゃん喫茶というライセンスを導入したい」と言ってくださることも結構あるんです。上位プランもあって、民間企業、医療法人、大規模な社会福祉法人向けで、企業が導入される時はそれなりの金額をいただく形にしています。

目指すのは「当たり前」の未来

弊社の目的と理念は、75歳以上のおばあちゃんたちに働く場を作り創り続けるということです。おばあちゃんたちに生きがいと収入を作って働いてもらう。く、そして健康寿命が伸びる。これはもうエビデンスも取れていますし、確信を持っているんですけど、ます。無理やり働かせているわけではなくて、適度に楽しく働いてもらうと、心身を揺れ動かしそれによって老化が抑えられて、健康寿命が伸びるんです。弊社で働くとみんな元気になっていくんですよ。ばあちゃんたち500人に働く仕事、働く場を創る」を3カ年ビジョンとして設定しているので、あと2年でやりきりたいと思っています。

弊社はまた、我々を通じてシニアの方々が「働く」という選択肢を持てるようにすることも掲げています。もともとこの国には、それがなかったんですよね。これを、ごくごく当たり前の状態にしていきたいと思います。将来これが当たり前になると、我々の存在価値はなくなるのかもしれないですけど、それはそれでいいかなと思っています。まだ時間はかかると思っていますけど。

批判と向き合った五年間

大変だったことで言うと、やっぱり批判はありました。おばあちゃん方を無理やり働かせているんじゃないか、という見方ですね。強制労働だとか、年寄りを働かせるなんていたわりがないとか。もともと日本はそういう感覚だったと思いますし、そもそも75歳を超えて働くなんて、あまり一般的な見方ではありませんでした。そういうイメージの払拭には、なかなか時間がかかりましたね。人は目で見えないもの、現実に起きていないことは分からないものなので。ですので、9080代のばあちゃんスタッフバリバリ働いている様子も全部見てもらえられるので、どうぞ見てください、と言っています。それを見たら、誰しもが納得してくださるんですけどね。

そんな中、2ちゃんねるの元管理人であるひろゆきさんが、うちの「ばあちゃん喫茶」が面白いと弊社の特集動画を紹介してくださったんです。その動画が、60万回ぐらい再生されていて。以前は世の中が受け入れてくれなかったですけど、今は受け入れてくれているのを感じます。我々が変わったわけではなくて、世の中がいいほうに変わってきているんだと思いますね。それが変わるまでは苦しかったです。批判されるということは、応援されないということですから。

でも、ばあちゃんたち自身が「働きたい」と言ってくれてきたんですよね。誰が批判しようとも、本人たちの声があるから、これは必要だと確信を持ってやってきました。お客さんもついてきてくれて。今では全国に我々のファンやお客さんがたくさんいます。じわじわと世の中が変わって、今は割と最高の状態になってきていると思います。

やりきる、やり遂げる大切さ

私は普段、専門学校や大学で学生に授業で教えたりもしているんですけど、正直、今の学生さんたちの考えの主流とは逆行しているかもしれませんが、やっぱり「やりきる、やり遂げる」というのに、どうやってでもこだわる。でも、経営者ってそうじゃないと成立させられないと思うんですよね。学生に強制はできないんですけど、やりきる、やり遂げることの大切さは伝えたいです。私自身、もうすぐ46歳になっても、がむしゃらにやっています。

日本人は週休2日で大型連休があっても、人生の中で結構仕事で「働くという時間が長いじゃないですか。だから、1日8時間働いたとして、人生の30数%くらいは仕事という方は多いと思うんですよ。ライフワークバランスは大切だけど、どうせならその人生における30数%の仕事の時間は、最大限やりきったほうがいいんじゃないかなと思います。経営者だからそう考えるのかもしれないですけど。

大手企業と挑む「大きなムーブメント」

弊社は、いろいろな企業とコラボしたり提携したりしています。日本の名だたるトップ企業とも組んでいて、たとえば株式会社明治(株式会社明治)さんと一緒に、明治おいしい牛乳の使用済み紙パックを活用したプロダクト(MILK BAG)を作ったり、ハウス食品(ハウス食品株式会社)さんのうまかっちゃんというインスタントラーメンの商品と絡めたコラボしたキャンペーンをご一緒したり。家具・インテリアの通販会社・タンスのゲン(タンスのゲン株式会社)さんと一緒に羽毛布団を開発したこともあります。常時30社ぐらいとコラボしていますね。もはや業種を問わず、いろいろなジャンルで組めるんですよ。と思っています。

我々が一番やりたいのは、もっと一緒に攻めていく、いわゆるコラボです。もっともっと企業さんとコラボや提携して、ソリューションを一緒に起こしたいていきたいと思ってます。たとえば、短時間労働を世の中に広げていく企業さんと一緒に大きなムーブメントを作ったり。このように、自由度が高いスタートアップとして、面白みを持ってやっていければと。ただし、自由には責任が伴いますので、我々はそれを自覚しながら今後もチャレンジを続けますたいです。いろいろと経営課題もありますが、差し当たっての一番のネックは正社員の採用なので、それは弊社としてきちんと克服したいですね。

学生さんたちも、未来を背負っているという自負を持ちながらチャレンジしてくれたらと思います。

編集後記

大熊さんのお話を伺って、事業への思いの強さに驚きました。中卒、バイク事故での長期入院という経験を経て、おばあちゃんたちへの恩返しという原点から「ばあちゃんビジネス」を立ち上げ、批判と向き合いながらも信念を貫いてこられた姿がとても印象的でした。「人生の30数%を最大限やりきる」という言葉は、まさに大熊さんの生き方そのものだと感じます。学歴や逆境をものともせず挑戦し続ける姿勢は、私たち学生にとっても大きな学びになると思います。取材のお時間をいただき、ありがとうございました。