インタビュー

怒られながら見つけた、自分にしかできない仕事

怒られながら見つけた、自分にしかできない仕事
PROFILE
合同会社ニタドリ 代表
似鳥陽子

MAZDAのショールームレディーだった

最初に就職したのは、誰もが知るMAZDAという会社でした。ところが、入社最初の一か月で有給を全て使ってしまったり、朝起きられなかったりと、当時は今振り返っても「社会不適合者」と言わざるを得ないような状態だったんです。

学校に行ってる時も割とADHDな感じで、集団行動がどうしても苦手でした。卒業単位もギリギリなくらい休んでいました。最初から「みんなと一緒の行動をする」ということ自体が、私には無理だったんだと思います。ショールームレディって、制服を着てお客様をアテンドする一見きれいな仕事じゃないですか。それなのに、そんなことすらちゃんとできなかった、というのが当時の自分のコンプレックスであり、お世話になった会社に申し訳ないと今でも思っています。

ライターから編集者、広報の道へ

もともとは26歳で上京してきたころから、ずっとライター業をやっていたんです。中国系のメディア企業に入って編集者をやるようになって、いろんな企業さんの事業担当者や経営者さんにインタビューをしに行くような企画をやっていました。

その時、取材先の担当者や経営者さんから、できあがった記事にすごく喜んでいただくことが多かったです。「自分でも気づかなかった魅力を引き出してもらえた」とか、そういう言葉をたくさんいただきました。それがきっかけで広告のクライアントさんの特集企画も任されるようになったんです。そこから、企業回りの広報に関する企画やライティングを、だんだんやっていくようになりました。

一度畳んだ会社をまた興した

会社としては、2007年に一期目を立ち上げています。フリーランスになってから6、7年たったころだったと思います。

創業のきっかけって、毎回だいたい同じなんです。フリーで自由業としてやっていた仕事の幅を広げていく必要が出てきて、たとえば法人口座がないと契約できない企業さんとの取引が出てきたり。仕事の規模を大きくするために、必要に駆られて創業する、という感じでした。

その後、再婚や親の介護などの家庭の事情で故郷の北海道に戻ったので一度法人を閉じたんですけれど、また2年前から再創業しました。それを見つけていただいてお声がけいただいた、という流れです。

痒いところに手が届く仕事

今やっているのは広報PR業ですね。企業さんや経営者さんの広報・PRのプランニング企画、そこに関するSNS運用やキャッチコピー考案など。まるっと業務提携している会社さんと一緒にお引き受けしています。

弊社の強みは、便利屋ではないですけれど、痒いところに手が届くところだと思っています。業務委託でお願いしているアドバイザーの方たちと、一つの課題に対して抽象度の高い案件も一緒に引き受けているような感じです。とりあえず何でも相談してください、というスタンスでやっています。

今後は、経営者さんや文化人さんのブランディングをもっと伸ばして幅を広げていきたいです。課題としては、私自身のインプットがまだまだ足りていないということ。常にいろんな情報や学びを取り入れて、自分の枠を広げていかないといけないな、と感じています。

「お前の仕事は煙だ」と言われた

学生時代は、まったく勉強していませんでした。父が経営者で創業者だったんですけれど、一度事業を倒産させてしまっていて、その時すごい負債があって家にお金がなかったんです。大学進学も諦めろと言われたりしました。学校でお金がないことが恥ずかしくて、友達付き合いのためにバイトばかりしていました。

父はその後、病院用のベッドや寝具の企画開発製造で事業を立て直したんですけれど、目に見えるものをつくる仕事をずっとやってきた人だったので、弊社のやっている広報やブランディングのような仕事が、まったく理解できなかったんですよね。「お前の仕事は実態がない」「煙だ」「努力と我慢が足りない」って、いつも怒られていました。それでも、なんとかかんとか自分の好きなことで今こうして生きていっています。

枠にとらわれず今を楽しんでほしい

だからこそ学生さんには、今しかできないことをうんと楽しんでやってほしいなと思っています。小さな枠にとらわれずに。それがその人の人間としての幅を広げると思うんです。

私が学生だったころ、いわゆる一流企業と言われていたところで、今も同じ規模で残っている会社ってほとんどないんですよ。トヨタはずっと残っているけれど、日産のように大きく状況が変わったところもある。旅行代理業だって、個人で手配するようになったり、コロナのような未曾有の出来事があったりして、企業がずっと栄えているかどうかなんて誰にもわからない。だから自分を助けてくれるのは、その人自身の魅力とか、ずっと蓄積してきたものなんだと思います。何かにとらわれないことが、大事かなと思っています。

大人にいっぱい会いに行くといい

起業のメリットは、お金のイニシアチブを自分で握れることだと思っています。雇われていると、給料が高ければ高いほど税金や年金でいろいろ引かれてしまう。天引きされて、自分でイニシアチブを取れないじゃないですか。起業すると、節税なども含めて、お金の主人に自分がなれるんですよね。

学生さんが今何に目をつけるべきかという話でいうと、私からのアドバイスは、大人の経営者にいっぱい会いに行くといいということです。学生は、自分に何もなくても「学生だ」というだけで、すごい経営者やお金持ちに「教えてください」と言いに行ける特権があると思うんですよ。どんどん大人と接した方がいいと思います。最近だと「ゆとりくん」のYouTubeにすごくインスパイアされています。

一方で、学生のうちに起業するデメリットもあって。社会の仕組みを知らないまま提供してしまうと、手探り状態になってしまう。だから一度、社会の仕組みはちゃんと知っておいた方がいいと思います。

人を見る目を養うということ

これまでで大変だったのは、人を見る目を養うことですね。頼まれるとなんとかしてあげなきゃと思ってしまう性格です。それで過去に二回ほど、大きな経済事件に巻き込まれたことがあります。一回目は警察署に、二回目は東京地検特捜部にずっと呼ばれて事情聴取を受けました。

私自身は意図していないんですけれど、紹介した人同士が悪事を働いてしまったのです。紹介者だと、その事件との関連性がないと証明されるまで、ずっと説明し続けなければいけないんですよね。第三者から見たら「あなたも加担していたんじゃないの」と思われてしまうこともあります。

今の学生さんでも投資詐欺のようなものに巻き込まれてしまう方がいますよね。「この人はすごい」と思って全員に紹介してしまうと、事件に巻き込まれることがある。だから人を見る目を養うこと、むやみに人を紹介しないこと。そこは注意した方がいいと伝えたいです。

編集後記

似鳥さんのお話を伺って、印象に残ったのは「枠にとらわれない」という言葉でした。父親に仕事を理解してもらえなかった時期を経て、それでも自分の好きなことを貫いてきたという経歴には、素直に励まされました。とくに「一流企業がずっと安泰とは限らない」というお話は、就職活動を控える身として、視野を広げてもらえるものでした。人を見る目を養うことの大切さも、これから社会に出るうえで胸に留めておきたいと思います。