インタビュー

震災で気づいた「人生はいつ終わるかわからない」。東北への恩返しから始まった創業の話

震災で気づいた「人生はいつ終わるかわからない」。東北への恩返しから始まった創業の話
PROFILE
ミライウェブ株式会社 代表取締役
工藤 魁

東日本大震災が、人生観を変えた

私が大学に入学した年に、東日本大震災が起きました。友人や家族が被災し、亡くなった知人もいて、人生はいつどうなるかわからないということを、身をもって感じたんですよね。当時は学生で、起業できるような知識も能力もなかったのですが、いずれは自分の生まれ育った東北の地に何かしら貢献したい、という思いが心のどこかにずっとありました。

生き急いでいた社会人時代

その思いが形になったのが2019年です。社会人になってから4年ほど経ったタイミングでした。1社目は非IT職で、製薬会社の業界に1年10か月ほど勤め、その後IT系に転職して1年半ほど働きました。どちらも2年は経たないくらいで、次に進んでいて。今振り返ると、当時は生き急いでいたといいますか、一日でも早く動きたいという気持ちが強くなっていて、それが2019年という創業のタイミングにつながったんだと思います。

仙台を拠点に、たったひとりで始めた会社

創業したのは私ひとりです。それまでは関東に住んでいたのですが、東北に貢献したいという思いから、仙台を拠点に会社を立ち上げ、システム開発の仕事を始めました。今でこそWebマーケティングやWeb制作、SNSの支援、AIの活用支援、ITコンサルなど幅広く手がけていますが、創業当初はシステム開発だけを支援する会社でした。

誰も知り合いがいない土地で

正直、仙台に来ても東京に来ても、それぞれに苦労がありました。実は私、仙台で働いた経験がないんです。大学こそ仙台でしたが、最初の就職先は福井、次は福島と、まったく違う土地で働いていて、2社目の会社でも仙台ではなく茨城で仕事をしていました。つまり仙台にも東京にも仕事上のゆかりがなくて、まず誰と会えばいいのか、どこから業界の人とつながればいいのかというところから、はじめないといけなかったんですよね。

そこは非常に泥臭くやってきました。インターネットで仙台のIT企業を調べて、片っ端からアポイントを取って、お客様とコンタクトを取ってプレゼンテーションをする。そうやって少しずつお仕事につなげていきました。ひたすら電話をかけたり、メールを打ったりしていましたね。

拠点を広げた理由

生まれ育った地である盛岡や仙台に貢献したいという気持ちは今もありますが、事業として稼がなければ、その思いも実現できません。ITの仕事はやはり東京のお客様が多い状況があったので、仙台や盛岡だけにこだわらず、もう少し幅広く、端的に言えば「稼ぎに東京へ」という判断をしました。東京に来たタイミングでは、会社としてすでに5年ほど経っていたので、仙台の知り合いやお客様から東京の担当者をご紹介いただくこともあり、最初の仙台での泥臭いテレアポとは、また違うかたちでつながりを広げることができました。

派手さより、地道に一つずつ

派手に成果を出すことに、こだわりはないんです。地道にやれることをやる、という感覚がずっとベースにあります。

目の前のお客様と仲間のために

大きなビジョンを大上段に構えるのは、あまり得意ではありません。スタートアップの方々はよく壮大なビジョンを掲げていますが、私の場合は、目の前のお客様や仲間のために何かをしたい、というのが一番の原動力になっています。

会社として近いところで言えば、ITの仕組みや技術を使えば、会社の生産性は上がっていきますし、Webマーケティングなどの技術を使えばお客様の売上も伸ばせます。それをまだ活用できていないお客様は多いので、そうした企業にアプローチをして、弊社の力でお客様の事業を改善し、お客様も弊社も一緒に伸びていく。それが今のビジョンです。

学生のうちに、経営の全部を触ってほしい

この記事を読んでくださる方には、起業したい方も多いのではないかと思います。社長になるということは、会社のすべてをやる能力が必要になってきます。営業から採用、組織構築、会計まわり、そしてお客様に提供できる技術や価値の部分。技術や価値提供のスキル以外のところも、たくさん求められるんですよね。

だからこそ、学生のうちから会計の知識を身につけたり、サークルなどで組織構築を経験したりしておくと、いざ会社を作ったときに、そうした力が生きてくると思います。学生時代はフルタイムでビジネスをするのは授業もあって難しいと思いますが、それでも自分の能力は磨いていけますし、そこで身につけたものは全部、起業したときに生きてくると思うので、ぜひ今のうちから挑戦してみてほしいです。

編集後記

今回、ミライウェブ株式会社の代表取締役・工藤魁さんにお話をお伺いしました。震災という原体験から生まれた東北への思いが、起業という行動につながっていく過程が印象的で、大きなビジョンを掲げるよりも、目の前の人のために地道に動き続けるという姿勢に、経営の本質を見た気がしました。泥臭くテレアポを重ねて信頼を積み上げてきたお話は、これから挑戦する学生にとっても大きなヒントになるはずです。私自身もまだ学生起業の入り口に立ったばかりですが、日々の積み重ねを大切にする姿勢を、あらためて見習いたいと思いました。