会社を作ったのは、お金の話がきっかけだった
創業のきっかけって、実はそんなにかっこいい話じゃないんですよね。もともと私はフリーランスとしてweb制作やシステム開発の仕事をしていて、ひとりで動いていたわけではなく、フリーランスチームを束ねて複数人で動いていました。メンバーはそれぞれ個人事業主で、副業みたいな形でやっていて。
そのなかで一番きつかったのが、お金の面でした。フリーランスはどうしても保険料などを自分で工面しないといけません。法人化すれば、その負担の半分を会社が持ってくれる。当時、会計の知識を少し入れていたこともあって、「これ、そのまま法人化してしまえばいいじゃん」というのが最初のきっかけだったんです。
会社設立の準備を進めるなかで、共同代表制で、もうひとり代表がいます。声をかけてみたら乗ってくれて、そこからスタートしました。結果的には当時のフリーランスチームとはまったく違う形で始まることになりました。
もう一人の代表は、学生時代の師匠
もうひとりの共同代表とは、私が学生時代にエンジニアを目指そうと思ったときからの付き合いです。技術面や業界のことをいろいろ教えてくれた、いわば師匠のような存在でした。一緒に仕事をしていくなかでコミュニケーションを取る機会が増えて、雑談のような流れで「今のメンバーで会社を作ろう」という話になっていったんです。
沖縄を選んだのは、支えてくれる大人がいたから
出身は神奈川で、大学進学で沖縄に来ました。理由は単純に学費が安かったからです。本当は大学の4年間だけ沖縄で過ごして、地元に戻って仕事をしようと思っていました。でも、大学時代にかわいがってくれる大人が周りにたくさんいて、結果的に今もその方たちとは仕事のつながりがあったり、プライベートで会ったりしています。同じ土壌がまったくない場所より、ヒントをくれる大人たちがいる沖縄のほうがいいんじゃないかと思って、結局こちらに残ることにしました。恵まれていたと思います。
受託開発は目的ではなく、メンバーへの思いを届ける手段
弊社は今、役員を含めて社員が十名ほどいますが、そのほとんどが転職・ジョブチェンジ組で、実務未経験からのスタートです。私自身、プログラミングスクールの講師も別でやっていて、社員のほとんどはもともとそこの生徒さんでした。
ジョブチェンジをしてくる方の多くは、家庭がある三十代以上です。そのくらいの年齢になると、覚悟を決めて転職してくる方が多い。だからこそ、弊社が得意な受託開発という手段を通して、手に職をつけてもらいたい。いい開発現場、いい環境を用意して、本人たちが自信を持って「エンジニアとして仕事をしている」と感じられる環境を作りたい。受託開発はあくまでその手段であって、事業に対する思いというより、メンバーに対する思いのほうが強いかもしれません。
AI支援は、業界外の相談から始まった
内製化支援は、最近のAIの普及や発達がきっかけです。私自身、業界のつながりよりも飲食業界など他業種の方とのお付き合いのほうが多くて。そうした方たちから「AIが出てきたら、こういうこともできないの」と相談を受けることがよくありました。できなくはないけれど、みなさんどう作ればいいのか、どう運用していけばいいのかがわからない。だったらそのまま試してみようというのが最初のきっかけです。
AIが出てきたことで、できることは確実に増えています。できることには挑戦していきたいと思いますし、AIを使えばリソースも最小限で済むので、失敗してもそこまで痛手にはなりません。正直、そこまで強い思いだけで始めたわけではなく、通常のシステム開発というよりは、身近な小さな悩みに応えたいという気持ちのほうが強かったですね。
センスとAIの掛け算で、まだ誰も知らない仕事を作る
弊社のメンバーは情報系の学部出身ではなく、もともと現場でシステムを使う側だった人が多いんです。手になじまないシステムができあがって、それを使わされる現場の疲弊を痛感してきたメンバーだからこそ、その経験が今の受託の仕事に生きています。
AIの話で言えば、これまで人にお願いしてきたことは、ここ数年でほぼ完全にAIでまかなえるようになると思っています。では、そのなかで人間に残る部分は何か。私の持論ですが、使い慣れないシステムを使った痛みや、多業種・多業界で培ってきたセンスを、どうAIと掛け算していくかだと思うんですよね。各々のセンスや感性をどう掛け合わせるかによって、まったく新しい仕事や、まだ誰にもわからないようなものができあがる。その感性やセンス、個の力を会社の事業に活かせるような将来を作れればいいなと思っています。
センスは標準化できない、だから今の課題はマネジメント
今の課題感で言うと、標準化できないものだと思っているんです。結局はセンスが必要ですが、それは経験によって生まれる力だと思うんですよね。手を動かすこともそうですし、人に会うことも大事です。私たちの仕事はどうしてもオフィスにこもってパソコンに向かう時間が長いので、外に出る機会が少ない。だからこそ、意識して外に出て人に会うことが大事だと思っています。
そのうえで今の課題は、メンバーの教育やマネジメントです。私自身、周りの人のいい影響に恵まれてきた分、それを自分がやる立場になったときに大変さを感じています。
失敗談を聞くことは、成功談を聞くより価値がある
学生さんへのメッセージとしては、失敗談を多く聞いてほしいということです。成功談やいいことは、大人はみんな話してくれます。でも本当に価値があるのは失敗談だと、今振り返って思います。当時、私をかわいがってくれた大人たちも、結局はみんな失敗談を語ってくれました。
成功談は人それぞれで、運やタイミングなどコントロールできない要素も大きい。でも失敗談は、業界が違ってもパターン化していることが多いんです。だから学生さんでも社会人でも、失敗談を聞くのは大事だと思います。
若いうちに失敗すべきかどうかは、正直難しいところです。必要だとも思うし、しなくていいならしなくていいとも思う。大事なのは、その失敗を失敗のまま終わらせるのか、それとも振り返って次に活かすのか。ひとつの材料として捉えるかどうかの違いです。玉ねぎと同じで、そのまま玉ねぎとして食べることもできれば、カレーにもサラダにもなる。選択肢はいくつもあるんです。
編集後記
今回のインタビューを通して、松田様の「受託もAIも手段にすぎない」という言葉がとても印象に残りました。人を大切にする姿勢が事業の根底に一貫してあり、AI時代だからこそ「人にしか出せないセンス」を磨く重要性を再認識しました。失敗談を積極的に聞くという姿勢は、学生の私自身もすぐに実践できるアドバイスだと感じ、大変勉強になりました。貴重なお話をありがとうございました。