インタビュー

「言えない」を「伝わる」に変える薬事の伴走者になるまで

「言えない」を「伝わる」に変える薬事の伴走者になるまで
PROFILE
京都薬事広告ラボ株式会社 代表取締役
橋本 圭子

化粧品メーカーで見つけた「壁」

営業・広報・薬事を経験

大学を卒業してすぐに化粧品メーカーに入社しました。最初は営業として配属となり、その後、広報部、そして今の仕事につながる薬事の部門へと、3つの部署を経験しています。新卒で入社してから退社するまでは13年ほど、この会社にお世話になりました。

良い商品なのに言えない壁

薬事の部門では、広告表現のチェックや表示の確認を担当していました。化粧品メーカーのいろいろな部分に関わるなかで感じていたのは、良い商品であっても広告規制が厳しくて言いたいことが言えなかったり、お決まりの表現になってしまったりする「壁」があるということです。杓子定規なルールチェックだけでなく、商品の魅力を最大限に伝えられるようにしたいという思いが、日々のなかで少しずつ強くなっていきました。

コロナ禍を経て、起業という選択肢へ

仕事と家庭の両立に悩んだ

表向きのミッションとしては、企業が考える商品の良さを最大限にアピールしながら、広告規制を守ったうえで消費者に適切な情報を届ける、この一見相反する二つを両立させることを目指しています。ただ、その背景には、結婚して子どもができたタイミングとコロナ禍が重なったことがあります。在宅ワークが広がっていくなかで、仕事と家庭の両立にはとても悩みました。

コロナ禍で下がったハードル

会社員ではなく自分で起業するという選択肢に挑戦してみたいという思いと、このミッションなら自分にもできるかもしれないという少しの自負があり、起業に至りました。今の会社を作ってからは2年目、個人事業の時代を含めると2023年からなので3年目になります。もともと独立願望はうっすらとありましたが、これだというものが見つからずにいました。ただ、コロナ禍でZoom(ズーム)のようなツールが浸透し、AIも発展したことで、オフィスを借りて何かを揃えないと飛び込めないという印象が薄れ、ゼロ円からでもスタートできる時代になったと感じたことが大きかったです。

薬機法と景品表示法のプロフェッショナルとして

規制と魅力を両立させる

日本の広告には、薬機法や景品表示法という規制があります。言い過ぎてはいけない、嘘をついてはいけないという規制があるからこそ、消費者は適正に商品を選択できます。ただ、この規制のせいで、すごい技術を持った日本の企業でも、良さが十分に伝えられていなかったり、届けたい人に届いていなかったりする場面が多くあります。営業や広報の経験があるからこそ、様々な立場の人が抱える課題や思いを理解できると自負しており、会社が持つ商品ひとつひとつの良さをしっかりヒアリングしたうえで、それを伝える表現を提案し、法規制も守るという両立させたコンサルティングが強みです。単なるリーガルチェックではなく、どうしたらもっと商品が売れるのか、どうしたらお客さんにもっと買ってもらえるのかというところまで、深く関わらせていただいています。

顧客の声が一番の近道

今はAIに聞けば何でも答えが返ってくる時代ですが、勉強すればするほど、お客さんのことをどれだけ知れるかが大事だと感じています。机上の空論やAIとの壁打ち、一般的なデータに頼るのではなく、自分たちが持っている顧客の声や感想に耳を傾けることこそが、商品の良さや改善点を知る一番の近道です。クライアントには、そうした提案をよくさせていただいています。

一人で走った創業期

ホームページも自分で作った

振り返ってみると、そこまで苦労したという実感はあまりありません。もともと楽観的な性格で、なんとかなるだろうと思えるタイプですし、人に甘えるときは甘えられているのかなとも思います。ただ、最初の1年目、2年目は初めてのことばかりで、手当たり次第に動いていた時期でした。お金がなかったので、ホームページも自分で一から作ったりしましたし、お客様に知ってもらうまでにも時間がかかりました。

仲間探しが一番大変だった

最近は業務委託の方と一緒に仕事をする機会が増え、人と関わるといろいろなアイデアが湧いてきますが、完全に一人だったときは、仲間探しも含めて大変でした。

コンサルから制作まで、一気通貫で

制作まで一気通貫で

今後は、制作物のコンサルティングから始まった事業の幅を広げていきたいと考えています。こういう広告を作りたい、なおかつ法規制を守った売れる広告にしたい、というご要望を丸ごと引き受けられるように、コンサルティングに加えて制作までワンストップで対応できる体制を目指しています。そのためには仲間も必要なので、少しずつ増やしながら、対応範囲を広げていきたいです。

学生へのメッセージ

ワクワクの羅針盤を信じて

検索すればすぐに答えが見つかる時代で、得か損か、どちらにメリットがあるかは簡単にわかります。ただ、自分の中にしかないワクワクする気持ちは、自分にしか見つけられません。私はこれを「羅針盤」と呼んでいますが、自分のワクワクの羅針盤が向いている方向に進むことが、とても大事だと思っています。心から楽しめる仕事のほうが絶対にいいですし、成果にもつながると信じているので、そのワクワクを大切に、その気持ちのまま進んでほしいです。

編集後記

今回、橋本さんのお話をうかがって、規制という「守るべきもの」と、商品の魅力を伝えるという「届けたいもの」を両立させる視点に強く惹かれました。就職活動をしていると、つい損得で進路を決めがちですが、橋本さんの「ワクワクの羅針盤」という言葉は、私自身の指針にもしたいと感じました。貴重なお話をありがとうございました。