インタビュー

中小企業に「社外経営管理部」という選択肢を。

中小企業に「社外経営管理部」という選択肢を。
PROFILE
株式会社 eLectio Raise 代表取締役
木村 英朗

群馬発・eLectio Raiseが描く経理BPOの未来

群馬県桐生市を拠点に、経理BPOやバックオフィス支援、経営管理支援を手がける株式会社eLectio Raise。私たちが目指しているのは、単なる「経理代行会社」ではありません。

大企業には当たり前に存在する経理、財務、総務、経営企画などの管理機能を、中小企業が必要な形で社外から利用できるようにする。その考え方を、eLectio Raiseでは「社外経営管理部」と呼んでいます。AIやクラウドサービスによって経理業務の自動化が進む今、経理BPOに求められる価値も変わってきています。

私が描いているのは、単純作業を代行するだけではない、これからの中小企業を支える経営管理の仕組みです。

経理を入口に、経営管理まで支える

eLectio Raiseでは、記帳、給与計算、請求業務などの経理・バックオフィス業務から、月次管理、資金繰り、経営数値の可視化などまで支援しています。

ただし、外部から企業経営に口を出すことが役割だとは考えていません。会社を経営し、最終的な意思決定をするのは、あくまで経営者自身です。私たちの役割は、経営者が判断するために必要な数字や情報を整え、選択肢を整理し、必要なときに相談できる環境をつくることです。また、税務など専門的な判断が必要な領域については、それぞれの専門家と連携します。自社ですべてを抱え込むのではなく、必要な人や専門家を適切につなぎながら、企業の管理機能を支える。それが、私たちの考える経理BPOです。

中小企業にも「経営管理部」があっていい

大企業であれば、経理、財務、総務、経営企画など、会社を支える専門部署があります。

一方で、中小企業が同じように専門人材を何人も採用することは簡単ではありません。

特に地方では、人材不足が今後さらに大きな課題になると考えています。

だからこそ、

「すべての人材を自社で雇用する必要はないのではないか」

というのが、eLectio Raiseの発想です。必要な管理機能を、必要な分だけ外部から利用する。AIやシステムに任せられる仕事は任せ、人にしかできない判断やコミュニケーションに人の力を使う。こうした仕組みを中小企業にも提供するのが、現在商標登録出願中の「社外経営管理部」サービスの構想です。

将来的には、「経理を外注する」という考え方からさらに一歩進み、「経営管理機能を社外に持つ」という選択肢を、中小企業にとって当たり前のものにしていきたいと考えています。

原点は「相談されたのに、何も返せなかった」経験

私は、最初から会計の仕事を目指していたわけではありません。

工業高校を卒業後、県内の建設会社に就職しましたが、約1年半で退職しました。

時期はちょうどリーマンショックと重なり、その後の再就職活動では10社以上の不採用を経験しました。理由として多かったのが、「資格がないこと」と「経験がないこと」でした。経験はすぐには増やせない。でも、資格なら自分の努力で変えることができる。

そう考え、フォークリフトやMOS、日商簿記検定3級などを取得しました。その中で簿記と出会い、資格取得をきっかけに会計事務所へ入社しました。

そこから、私の会計人生が始まりました。

会計事務所で実務を経験する中で、強く心に残ったことがあります。

経営者から資金繰りや今後の経営について相談を受けても、当時の私は知識も経験も足りず、何も答えを返せなかったことです。せっかく頼って相談していただいたのに、数字をまとめることしかできない。そのことに、強いやるせなさを感じていました。

私は、人の会社に対して外部から「こうした方がいい」と簡単に言えるものではないと思っています。経営判断をするのは、あくまで経営者自身です。ただ、相談していただいたときに、数字をまとめて終わるのではなく、判断するための材料を提供したり、一緒に選択肢を整理したりできる人ではありたい。その思いが、今のeLectio Raiseにつながる原点です。

その後、実務経験だけに頼るのではなく、会計をより体系的に学びたいと考え、カリフォルニア州立大学イーストベイ校の会計・ビジネス分野の単位を取得しました。

実務と理論の両面から学んできた経験も、現在の仕事の土台になっています。

転職を重ねたからこそ、見えてきたもの

その後、私は会計事務所を離れ、一般企業へ転職しました。数百人規模のメーカーでは管理部門に所属し、IPO準備や業務改善なども経験しました。さらに複数の企業で、経理や管理業務に携わりました。転職回数だけを見ると、一貫性がないように見えるかもしれません。

当時から「この経験を積んだら次へ行こう」と明確なキャリアプランを描いていたわけでもありません。それぞれの会社で目の前の仕事に向き合った結果、経理、管理部門、IPO準備、業務改善など、さまざまな経験をさせていただきました。

振り返ってみると、その経験はすべて、会計事務所時代に抱いた

「相談してもらったときに、何かを返せる人になりたい」

という思いにつながっていました。

同時に、規模や業種の異なる企業で働いたことで、共通する課題も見えるようになりました。

業務が特定の人に依存している。
同じ情報を何度も入力している。
必要な数字がすぐに出てこない。
経営者を支える管理機能を十分に置くことが難しい。

特に中小企業では、経理、財務、総務、経営管理など、それぞれの専門人材をすべて社内に抱えることは簡単ではありません。

それなら、自分が経験してきたことを生かして、そうした機能を社外から支える仕組みをつくれないか。

そう考えたことが、株式会社eLectio Raiseを立ち上げた理由です。

AI時代だからこそ、BPOの役割は変わる

AIやクラウド会計の進化によって、これまで人が行っていた経理業務の一部は、今後さらに自動化されていくと考えています。私は、この変化を脅威ではなく機会と捉えています。

人が入力すること自体に価値があるわけではありません。

システムで処理できる仕事はシステムへ。
AIで効率化できる仕事はAIへ。

そのうえで、人は数字の異常に気づいたり、経営者の相談を受けたり、業務全体を整理したり、専門家や関係者との調整を行ったりする。経理BPOも、単純な「作業の代行」から、企業の経営管理を支えるサービスへ変化していく必要があると考えています。

eLectio Raiseが「社外経営管理部」を掲げる理由も、そこにあります。

デジタル化しても残る「物理的な障壁」

一方で、実際に経理BPOを提供しているからこそ、AIやクラウドだけでは解決できない課題も見えてきました。その代表例が、紙の請求書や領収書、郵便物です。

どれだけシステムを導入しても、経理に必要な資料が会社の郵便受けや机に届く以上、そこには物理的な作業が残ります。この課題を解決するため、現在eLectio Raiseでは新サービス「らくまるポスト™」の準備を進めています。郵便物や経理資料の受け取りからデータ化・保管までを効率化し、企業側の資料回収にかかる負担そのものを減らしていく構想です。

これは、新しい事業をつくるために考えたサービスではありません。実際に経理BPOを提供する中で、「ここが変わらなければ、本当の意味で経理を効率化できない」と感じた現場の課題から生まれています。いまある経理BPOの課題を解決する一つの手段になり得るサービスです。詳細は、正式リリースを楽しみにしていただければと思います。

自社の成長を、地域の仕事にもつなげる

eLectio Raiseが拠点を置くのは、群馬県桐生市です。現在は群馬県内だけでなく、埼玉県のお客様とも多くお付き合いがあります。地域が異なっても、中小企業が抱える経理や経営管理の課題には共通する部分が多いと感じています。一方で、地方では人口減少や人材不足が進んでいます。だからこそ、すべてを一社で抱えるのではなく、地域にある企業や団体が互いの強みを生かすことも重要だと考えています。eLectio Raise自身が成長することはもちろん必要です。しかし、自社だけが成長すればよいとは考えていません。地域の企業や団体の中で、eLectio Raiseと組むことで互いの強みを生かせる、シナジーが生まれると判断した相手には、積極的に仕事をお願いしていきたいと考えています。何でも自社で内製するのではなく、仕事を地域の中でも循環させていく。それも、私が大切にしている考え方です。

eLectio Raiseが成長することで、自社の雇用だけでなく、地域の企業や人にも新しい仕事が生まれる。そうした形で地域へ還元できる会社を目指しています。

群馬でBPOといえば、eLectio Raiseへ

eLectio Raiseが目指しているのは、単に規模の大きな会社になることではありません。

まずは群馬で、経理BPOや経営管理支援について困ったときに、最初に思い出してもらえる存在になることです。

経営者や金融機関、会計事務所など、中小企業を支える方々から、

「経理や経営管理で困っているなら、まずeLectio Raiseに相談してみよう」

と思っていただける会社を目指しています。

そしてその先には、「社外経営管理部」という考え方そのものを広げていく未来があります。AIやシステムを活用しながら、人にしかできない仕事の価値を高める。

地域の企業や専門家とも連携し、一社ですべてを抱え込まない。そして、中小企業の経営者が本業に集中できる環境をつくる。今後も、群馬・埼玉をはじめとする既存のお客様との関係を何より大切にしながら、桐生を起点に北関東を中心として、eLectio Raiseの経理BPOと「社外経営管理部」という考え方を広げていきたいと考えています。中小企業に「社外経営管理部」という選択肢を。その新しい経営管理の形を、地域から少しずつ広げていきたいと思っています。

編集後記

今回のインタビューを通じて、「経営者から相談されたのに、何も返せなかった」という会計事務所時代の悔しい原体験から、転職を重ねて多様な企業のリアルな課題を吸収し、地域に根ざした事業へと落とし込んでいくまでの一連の流れがとても印象的でした。 とくに、AIやクラウド化が進む一方で現場に残る「物理的な障壁(紙や郵便物)」から目を背けず、現場の実課題から新サービスを生み出していくプロセスは、これからの事業づくりを考えるうえで非常に参考になる部分が多いと感じます。 「社外経営管理部」という新しい選択肢を自ら市場に提示し、自社だけでなく地域全体に仕事を循環させていく姿勢も、地方発のビジネスならではの力強い視点だと思いました。