ニューヨーク留学から、アフィリエイト黎明期の会社へ
英語を学べる環境を求めて入社
弊社を立ち上げる前は、バリューコマースという会社に約5年間在籍していました。日本で初めてアフィリエイトサービスを開始した会社で、私が入社したのはまだ事業が立ち上がったばかりの時期でした。最初は営業担当として経験を積み、その後は営業責任者を務め、後半にはYahoo!の資本参加に伴う共同事業の立ち上げ責任者も担当しました。入社のきっかけは、実は英語でした。前年に8か月ほどニューヨークへ留学していて、当時は将来的に貿易関係の仕事に就けたらいいなと漠然と考えていました。まずは英語力を伸ばしたいと思っていたので、帰国後も英語を使える環境、英語が自然と身につく会社を探していたんです。
そこで出会ったのがバリューコマースでした。
ニュージーランド人が創業した会社で、社内には外国人社員も多く、当時から成長が期待されていたインターネット業界の企業でした。入社前に3か月ほどホームページ制作会社で働いた経験があり、その中で独学で勉強したり、簡単なホームページを作ったりした程度でした。ただ、新しい業界に飛び込むことへの抵抗はありませんでした。
母の起業を間近で見て育った
もともと起業への憧れは、中学生や高校生のころからありました。母親が起業し、途中から父親も加わる形で会社を経営していたんです。当時は「起業」というより「脱サラして事業を始める」という感覚に近かったと思います。扱っていたのは、ビジネスフォンやOA機器、電話工事、防犯設備などの事業でした。その姿を間近で見ていて、当時、家族の生活が豊かになっていく変化を感じていました。買えるものが増えたり、家庭の環境が変わったりする様子を見ながら、「会社員として働くよりも、自分で会社をつくり、自分の裁量で動かすほうが楽しそうだ」と自然に思うようになったんです。バリューコマースでは多くの経験を積ませてもらいました。その中で「そろそろ自分自身で挑戦するタイミングなのではないか」と考えるようになりました。
年齢的な節目と、それまで積み重ねてきた経験が重なり、起業を決意しました。
ペット情報サイトから始まった21年
最初はWebメディア事業
起業当初に始めたのは、ペット情報サイトでした。ペットに関する情報を発信しながら、ペット用品の購入につなげ、購入するとポイントが貯まる仕組みを提供するサービスです。現在でいうポイントサイトと情報メディアを組み合わせたような事業でした。そこからアフィリエイト事業へ展開していきました。正確な時期は少し曖昧ですが、半年から1年以内だったと思います。当初のメディア事業だけでは十分な売上を作ることが難しく、「まずは収益を生み出さなければいけない」と考え、それまで経験していたアフィリエイト領域のコンサルティング業務の営業を始めました。対象は100%法人向けでした。2005年当時は、アフィリエイトという言葉自体はある程度認知されていました。ただ、私がバリューコマースに入社したころは、まだ市場そのものを説明するところから始めるような黎明期でしたね。
独立系のまま21年続ける理由
現在もメイン事業は、アフィリエイト広告の運用コンサルティングです。その周辺領域として、自社でSNSクリエイティブを制作し、広告配信まで行うアドアフィリエイトにも取り組んでおり、こちらも成長しています。また、長年取り組んできたSEO領域から派生して、現在はSEOだけでなくAIO、LLMOといった新しい検索領域にも対応しています。規模は大きくありませんが、Web制作も一部手掛けています。さらに、自社開発ではアフィリエイト広告の効率化や、競合企業の広告出稿状況を自動で把握するSaaSも提供しています。アフィリエイトやSEO領域で20年以上続けている会社は、決して多くありません。同じ領域で事業をしていた企業の中には、大手代理店に吸収された会社も多くあります。
その中で、独立系企業として20年以上事業を継続してこられたことは、大きな強みだと思っています。
「最後までやりきる」ことが会社のカルチャー
KPI達成への執着
Web広告運用もマーケティング施策も、根本は同じだと考えています。重要なのは、細かく分析し、必要な施策を最後までやりきれるかどうかです。途中で人手が不足すれば代替案を考える。状況に応じて改善を重ねる。そして最終的な目標であるKPIを達成するまでやり抜く。そこへの執着が、弊社のカルチャーになっています。もちろん、そのためには仕組みづくりやチーム編成も必要です。ただ、最後に成果を生み出すのは「絶対に結果を出す」という意識だと思っています。弊社が「クライアントに圧倒的な成果を出す」というミッションを掲げたのは5〜6年前です。そこから社員全員が成果への意識をより強く持つようになり、この数年間でサービス品質は大きく向上したと感じています。
21年目でも、気持ちは創業5〜6年目
去年、経営幹部との合宿で議論を重ね、「でっかいことやろう!」というスローガンを掲げました。背景には、AIによる大きな変化があります。これまで広告ビジネスはGoogle検索を中心に成り立ってきました。しかし現在は、AIの回答だけで満足し、Webサイトを訪問しないユーザーも増えています。これは、従来の広告モデルに大きな影響を与える変化です。だからこそ、時代に合わせて事業も変えていかなければいけない。現在はSNSやAI領域への挑戦を進めています。また、今後はBtoCサービスにも挑戦し、自分たちが持つマーケティング力を活かして大きく成長させることも考えています。「なぜ私たちがこの事業をやるのか」その問いに答えるためにも、自分たちは何者なのか、何を目指す会社なのかを改めて明確にする必要がありました。そこでビジョンも刷新し、「人と企業に幸せを広げるサービスを創造する」という新たな方向性を掲げました。最終的には、日本だけでなく海外の方にも利用していただけるBtoCサービスの展開も視野に入れています。
次の成長も、あくまで通過点
現在は、会社を次の成長ステージへ進めることを直近の目標としており、今はそこに集中するため、事業の再編やリソース整理を進めています。来年には一つの節目に到達できると考えており、2030年に向けた飛躍的な事業拡大を目指しています。その先には、グループ会社化、M&Aなども含め、より大きな挑戦をしていきたいと考えています。
私自身54歳になり、残された時間を考えたとき、前年比1.3倍~1.5倍という延長線上の成長を続けるだけでは物足りないと感じました。
「もっと大きな挑戦をしたい」
21年間会社を続けていますが、気持ちは今でも創業5~6年目のベンチャー企業のような感覚です。まだまだ挑戦できることはたくさんあると思っています。
学生のみなさんへ
内定はゴールではない
就職活動で会社を選ぶとき、数百人、数千人規模の会社と、数十人規模の会社では、得られる経験は大きく異なると思います。もちろん、大企業には大企業の良さがあります。安定性があり、仕組みが整っていて、多くの優秀な人と働ける環境もあります。一方で、自分自身の力で会社や事業を動かしているという実感は、得にくい場合もあるかもしれません。大きな組織の中では、自分の仕事が会社全体に与える影響を感じづらいこともあると思います。一方で、数十人規模の会社では、一人ひとりの行動が事業の成長に直結します。自分のアイデアや努力によって会社が変わっていく。自分自身が会社をつくっているという実感を持てる。その面白さは、大きな組織ではなかなか経験できないものだと思います。もちろん、すべてが整っているわけではありません。仕組みが不足していたり、まだ改善すべきことが多かったりすることもあります。ただ、それを「足りない」と感じるのではなく、「自分たちで作っていける」と前向きに捉えられる人には、大きな成長の機会になると思います。会社選びでは、単純に「大企業だから」「ベンチャーだから」という基準だけで決めるのではなく、自分が将来どう生きたいのか、何を大切にしたいのかを考えてほしいですね。そのうえで、自分の理想を実現できる環境はどこなのかを考えてみてほしいと思います。実際に働いている社員から話を聞くことも大切です。表面的な情報だけではなく、その会社で働く人が何を感じ、どんな想いで仕事をしているのかを知ることで、より自分に合った会社を見つけられると思います。内定をもらうことがゴールではありません。入社後、大変なことがあったとしても、仕事を楽しみながら成長できる環境を見つけることが大切だと思います。もちろん、入社前に100%理想の会社を見つけることは難しいかもしれません。だからこそ、会社を選ぶ段階では、しっかりと会社について調べ、実際に働いている人の話を聞き、自分が何を大切にしたいのか、そこでどんな経験をしたいのかを自分なりによく考えることが大切だと思います。そのうえで最終的に「ここで働こう」と決めた会社であれば、「まずは目の前の仕事を楽しもう」と決めて全力で取り組むことで、新しい面白さや、自分が本当にやりたいことが見えてくることもあると思います。弊社でも、自分自身の人生理念やビジョンを考えるワークを実施しています。自分が目指したい未来と、会社の目標や方向性を重ね合わせることで、仕事への向き合い方も変わってくると考えているからです。仕事を通じた成長が、自分自身の人生の目標につながる。そんな状態をつくることが理想だと思っています。
もし学生時代に戻れるなら、海外の美大へ
もし学生時代に戻れるなら、海外の美術大学に行ってみたいですね。もちろん、やりたいことは他にもたくさんあります。ただ、大人になってから改めて感じるのは、自分は何かを作ることや、美しいものを追求することが好きなんだということです。例えば資料を作るときでも、ただ情報を整理するだけではなく、「もっと見やすくしたい」「もっと美しく表現したい」と自然に考えてしまう。そういう感覚は、昔から自分の中にあるものだと思います。現在の仕事にすべて活かせているわけではありませんが、デザインや美的感覚への興味は今でも強くあります。また、昔から変わらない思いとして、英語を使って国境に関係なく仕事をしたいという気持ちもあります。ビジネスとして考えるなら、AIや金融など、大きな成長が期待できる分野もあると思います。ただ、自分自身の興味や好奇心を軸に考えるなら、海外の美大で学ぶという選択肢は、今でも魅力的に感じます。結局のところ、年齢を重ねても「自分は何をやりたいのか」を考え続けることが大切なのだと思います。会社経営も同じで、現状維持ではなく、常に新しい挑戦を探し続ける。 振り返ると、創業した当初は「自分が何をやりたいのか、何を作りたいのか」に本気で向き合いきれておらず、どこかふんわりとしていた部分もありました。ですが、そこから自分自身としっかりと向き合い続けた結果、ようやく目指すべき世界観が見えてきました。今はその世界観を会社の経営に落とし込み、覚悟を決めて走っています。だからこそ、21年目にして「今が本当の創業期」を迎えたような感覚があるんです。ここからが本当の勝負です。これからも、大きな挑戦を楽しみながら続けていきたいと思っています。
編集後記
「気持ちは5〜6年目の創業ベンチャー」という言葉が、取材のあいだずっと頭に残っていました。21年続く会社の代表が、前年比1.3倍では物足りないと言い切る。その熱量の源が、危機感だけでなく「つまらないから」という素直な感情だったことに驚かされます。
自分も小さくビジネスをかじっている身として、仕組みが整っていない環境を嘆くのか、作り上げる側に回るのか。そこが分かれ目なのだと突きつけられた気がしました。内定をゴールにせず、自分が何を大切にしたいかから逆算する。就職活動を控えた同世代にこそ読んでほしいお話です。