インタビュー

箱根路を走れなかった悔しさが、アスリートを支える一着になった

箱根路を走れなかった悔しさが、アスリートを支える一着になった
PROFILE
レジットワン株式会社 代表取締役
田村 圭

楽天モバイルで叩き上げられた新卒時代

メガベンチャーを目指して楽天へ

明治大学を卒業して、新卒で入社したのは楽天でした。学生の頃から、いつか自分で会社をやりたいという思いがあって、就職活動のときにメンターに相談したところ「メガベンチャーがいいのでは」とアドバイスをもらい、楽天やDeNA、リクルート、Yahoo!、ソフトバンクなど何社か受けたなかで、楽天に決めました。

とにかく現場で叩かれた日々

入社後2〜3か月ほど新卒研修を受けて、そこから楽天モバイルに出向になり、法人向けSIMカードの営業を2年半ほどやりました。楽天モバイルは「つながらない」というイメージが強かった時代で、せっかく契約いただいても、あとから「つながらない」というクレームが来ることも珍しくありませんでした。5件受注したら4件はクレームが来るような感覚で、契約が入っても入らなくても、社内外どちらからも厳しい声をいただく毎日でした。

トークがうまかったわけではなく、いまも話すことにそれほど自信があるわけではありません。それでも、とにかく現場に出してもらって、トライアンドエラーを重ねさせてもらったおかげで、経験値だけは人一倍積むことができたと思っています。当時の上司にはいまでも感謝しています。

副業から生まれたレジットモバイル

転職先で副業として法人を設立

楽天モバイルでの経験を積んだあと、当時のお客様だった会社から声をかけていただき、そちらに転職しました。そこで1年半ほど働いたのですが、副業も可能な会社だったこともあり、途中で自分の法人だけ先に設立しました。設立から半年ほど経ったころに、レジットモバイルという法人専用の格安SIMサービスを立ち上げ、本格的にこの事業に取り組むようになりました。

携帯番号ひとつでつまずいた集客

レジットモバイルは、NTTドコモ回線を使った法人向けのMVNOサービスで、ソフトバンクやドコモ、KDDIといった大手キャリア、あるいはマイネオやIIJといったMVNO各社が競合にあたります。

去年の12月にLPをつくってリスティング広告をかけ、本格的に集客をはじめたのですが、最初の1か月は問い合わせがまったくのゼロでした。広告費もそれなりにかけていたつもりだったので、「このまま終わってしまうのかもしれない」と、正直かなり苦しい時期でした。

見直してみると、原因はLPに載せていた問い合わせ先の電話番号でした。会社の固定電話がなかったため、自分の携帯番号をそのまま載せていたのですが、いま思えばそれが不信感につながっていたのだと思います。番号を外したところ、問い合わせが一気に増えるようになりました。たったひとつの情報でここまで結果が変わるのかと、あらためて実感した出来事でした。

箱根路を走れなかった経験がRunvoxを生んだ

出走できなかった悔しさ

会社を設立した当初は、いまのようなサービスを想定していたわけではありませんでした。ただ、大学時代は駅伝部の長距離ブロックに所属していて、結局、箱根駅伝には出走できませんでした。だからこそ、いまも第一線で活躍している選手の方たちへのリスペクトはとても強くて、なんらかのかたちでランナーの力になりたいという思いは、創業当初からずっと持っていました。そのアイデアが最近ようやくかたちになり、リリースしたのがRunvox(ランボックス)です。

審査制だからこそ担保できる回答の質

Runvoxは、マラソンや陸上競技に特化したQ&Aアプリで、いわばこの分野に特化した知恵袋のようなものです。一般的なQ&Aサービスは誰でも回答者になれる分、回答の質を担保しにくいという課題があります。Runvoxでは、回答者を審査制にしていて、過去の競技実績などを申請してもらい、弊社で確認したうえで合否を判断しています。

回答者は実績に応じてS・A・Bのランクに分かれていて、Sランクには1500mで日本記録を持つ、私の大学時代の先輩にあたる方や、駅伝の強豪校として知られる城西大学の櫛部静二監督にも参画いただいています。

マネタイズより、まずユーザー獲得

2026年7月28日にリリースしたばかりで、いまはまだ2週間ほどしか経っていません。マネタイズはしばらく考えておらず、まずはユーザーを増やすことを優先しています。赤字を掘ってでも、いまはとにかく多くの方に使っていただくことが先決だと考えています。

全アスリートに貢献できる会社にしていきたい

小学生の頃から野球をやり、そのあと陸上、大学では駅伝部と、ずっとスポーツに携わってきましたが、プレイヤーとしてよい結果を残せたわけではありません。だからこそ、スポーツをする人たちへのリスペクトが人一倍強いのだと思います。

今後は、まずレジットモバイルをしっかり伸ばして、1社でも多くの法人の通信費を削減し、浮いた分を事業投資に回していただけるような会社にしていきたいと考えています。あわせて、Runvoxを土台にして、陸上だけでなく野球やサッカーなど、さまざまなスポーツへと事業を広げ、あらゆるアスリートに貢献できる会社にしていきたいです。

学生へのメッセージ

自分もまだまだ発展途上なので、偉そうなことは言えませんが、大切なのはたくさん考えて、たくさん行動することだと思っています。挑戦していると、周りから否定的な意見をもらうこともありますが、そうした声に振り回される必要はありません。自分が信じた道を、自分の意思で信じて進んでほしいと思っています。一緒に、これからの日本をつくっていけたらうれしいです。

編集後記

今回のインタビューを通じて、現場でとことん経験を積むことの大切さを実感しました。田村さんが楽天モバイル時代に叩かれながらも成長し、その経験を糧に事業を立ち上げていく姿は、いま挑戦を迷っている学生にとって大きな刺激になるはずです。とくに、箱根駅伝に出走できなかった悔しさをRunvoxという形に昇華させたエピソードが印象的でした。私自身も、まずは行動してみることを大切にしていきたいと感じました。