親会社からグループ入りした会社を任されて
創業者ではないからこそ、向き合わなければならないこと
私は、株式会社グローバルキャストの創業者ではありません。
WBPグループという親会社のもとで、2025年12月にグローバルキャストの株式譲渡を受け、代表を務めさせていただくことになりました。
もともとWBPグループは、外国籍の方を中心に、派遣や紹介を通じて人材不足に悩む企業さまへ人材をご提案してきた会社です。
一方で、現在の日本では外国籍人材の需要が高まっているだけでなく、製造工程の一部や生産管理、品質管理、営業、バックオフィスなど、日本人材へのニーズも引き続き存在しています。
そこで、日本人材を中心とした製造業・物流業への派遣・紹介に強みを持つグローバルキャストをグループに迎えることになりました。
「グローバルキャスト」という名前から、外国籍人材を扱う会社だと思われる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、実際には日本人を中心に、製造業や物流業のお客さまへ派遣・紹介を行ってきた会社です。
私にとっては、単純に新しい会社を経営するということではありません。
すでに長い歴史を持ち、そこで働いてきた人たちがいる会社を受け継ぎ、その会社のこれまでを尊重しながら、これからを一緒につくっていく仕事です。
だからこそ、M&A後の会社づくりには、ゼロから会社を立ち上げるのとは違った難しさがあります。
製造業・物流業を支える、人と仕事の接点
私たちは、物流業や製造業、特に大手企業さまを中心に、人材の派遣・紹介を行っています。
製造業の現場では、働きたい人がいても、勤務地の近くに十分な人口がないケースがあります。そもそも地域に働き手が少ないこともあります。
そうした場合には、全国の求職者の方へ声をかけ、住み込みで働ける環境や寮を弊社で用意し、その地域で働いていただくこともあります。
そして、そこで経験を積んだ後、派遣先の大手企業さまに直接雇用され、さらにキャリアを築いていく方もいます。
一方で、創業当時からグローバルキャストで働き続けているメンバーもいます。
本人の希望があれば内勤へキャリアチェンジすることもできますし、技術者として専門性を高めていく道もあります。
私たちが提供しているのは、単に「仕事」を紹介することではありません。
その人がこれからどう働き、どう成長していきたいのか。
そこまで一緒に考えながら、人と企業の接点をつくっていくことが、私たちの仕事だと思っています。
柔道で知った「人との出会い」の力
一枚の柔道着から広がった世界
こうした、人とのつながりを大切にするようになった背景には、大学生の頃の経験があります。
私はもともと柔道をしていて、大学生の頃、柔道着だけを持ってアジアをバックパッカーで旅していた時期がありました。
何のアポイントも取っていません。
たまたま出会った人に、「柔道をやっている人を紹介してほしい」とお願いして、マレーシアの道場へ連れて行ってもらったこともあります。
英語もほとんど話せませんでした。
それでも、そこで柔道をさせてもらい、自分が旅をしていることを伝えると、今度はベトナムやブルネイ、インドネシアの柔道家まで紹介してもらうことができました。
一人の人との出会いが、次の出会いにつながる。
そして、その出会いによって、自分が想像していなかった世界がどんどん広がっていく。
その経験から、人との出会いには無限の可能性があると感じました。
そして、いつしか私の中に、
「出会った人をすべて笑顔にする」
という信念が生まれました。
今、仕事をするうえでも、この考え方は変わっていません。
クライアントさまも、求職者の方も、社員も、私たちのサービスや会社に何らかの形で関わってくださった方が、少しでも笑顔になってくれたらいい。
そして、その人の可能性が少しでも広がればいい。
それが積み重なっていけば、企業の力になり、社会の力にもなっていくと思っています。
WBPグループやグローバルキャストが大切にしていることも、根本ではこの考え方と重なっていると感じています。
文化の違うメンバーと、同じ方向を向く
M&A後だからこそ必要な「対話」
グローバルキャストは2013年頃に創業し、約13年の歴史がある会社です。
そこには、これまで会社を支えてきたメンバーがいます。
そのメンバーがそのまま私たちのチームに加わり、私は代表を務めることになりました。
当然ですが、グローバルキャストとWBPでは、それまでの企業文化も仕事に対する考え方も異なります。
だからこそ、同じ方向を向いてもらうこと、仕事に対する温度感を合わせていくことには、今も苦労しています。
ゼロから採用して組織をつくるのであれば、自分の判断軸だけで会社をつくっていくことができます。
しかし、M&Aではそうはいきません。
これまで会社とともに歩んできたメンバーには、それぞれの経験があり、それぞれの考え方や思いがあります。
それを否定して、新しい価値観を押しつけても、決して強い組織にはならないと思っています。
だからこそ、この半年ほどは、メンバーとの対話やコミュニケーションを積み重ねてきました。
「私がこうしたい」ではなく、
「この会社をこれからどうしていきたいのか」
を一緒に考える。
それが今の私にとって、大切な仕事の一つです。
M&Aという形でグループに入ったからこそ、いかに親会社とのシナジーを生み出せるか。
これは、今のグローバルキャストにとって一番大きな課題だと思っています。
グローバルキャスト単体でやっていくのであれば、わざわざグループに入る必要はありません。
だからこそ、私自身も含めて、グループのメンバー全員が「どうすれば一緒になることで、もっと強い会社になれるのか」を意識していく必要があります。
まだまだ、その意識が十分に浸透しているとは思っていません。
それでも、今のメンバーには、言葉では説明しきれないような「根拠のないワクワク感」があるように感じています。
仕事を楽しそうにしている姿を見ると、代表として素直にうれしく思います。
これまで積み重ねてきたものを大切にしながら、新しいものを掛け合わせていく。
その先に、これまで一社ではできなかったことができるようになる。
M&Aの面白さは、そこにあるのだと思います。
「世界中の人の役に立つ」という指標
300億円の先にあるもの
WBPグループ全体では、2029年に売上300億円という指標を掲げています。
現在は35億円ほどなので、これから3年間で約10倍を目指すことになります。
数字だけを見れば、大きな目標です。
ただ、私たちにとって300億円という数字そのものが目的ではありません。
その数字の裏側に、
どれだけの人に貢献できたのか。
どれだけの人を笑顔にできたのか。
があると考えています。
売上は、その結果としていただく「対価」にすぎません。
だから300億円という数字は、私たちがどれだけ多くの人と関わり、どれだけ多くの人の役に立てたかを測るための、一つの指標だと思っています。
私たちのビジョンは、「世界中の人の役に立つ」ことです。
出会った方、そして私たちの会社と何らかの形で関わってくださった方に対して、どうすれば役に立てるのか。
それを考えながら、一つひとつ事業化や子会社化を進めています。
「何か人の役に立ちたい。でも、何をすればいいのかわからない」
そういう人にこそ、まずは私たちの会社に来てもらいたいと思っています。
グループ内にはさまざまな事業があります。
興味を持てる仕事がきっと見つかると思いますし、もし今の部署が合わなければ、異動することもできます。
まだ会社にないサービスであっても、それが世の中や世界中の人の役に立つと思うのであれば、新卒で入社した社員であっても事業化に挑戦できる。
そんな会社にしていきたいと思っています。
学生へのメッセージ
自分の信念を大切にする
学生の時間は、自分のやりたいことや可能性を改めて考えられる、人生の中でも数少ない時間だと思います。
だからこそ、その一日一日を大切にしてほしいです。
仕事を選ぶときも、私は本当に自分の信念や正義に従うのが一番いいと思っています。
「大企業だから」という理由だけで会社を選ぶ必要はありません。
どの会社にも、それぞれの思いや信念があります。
その会社が自分にとって心の底から「いい」と思えるのか。
それによって、将来の生き方や働き方は大きく変わってくると思います。
私自身、就職活動をしていたときには大手企業からお声掛けいただく機会もありましたが、最終的にはメガベンチャーのような会社を選びました。
会社の規模が大きくなくても、自分の信念さえぶれなければ、
「自分がこの会社をいくらでも大きくしてやる」
くらいの気持ちで取り組むことができます。
たとえ業界そのものが縮小していたとしても、その業界にロマンや興味があるのであれば、その業界を自分たちの手で変えるくらいの気概を持って飛び込んでもいい。
大切なのは、外側からの評価や周囲の目ではありません。
自分自身の心に手を当てて、
「自分はどう生きていきたいのか」
を考えることだと思います。
ファーストキャリアだからこそ、どんな会社であっても、良い意味で「利用してやる」くらいの気持ちで挑んでもいいと思います。
就職活動をするなかでは、自分が「なぜ、そこまで頑張れたのか」という成功体験を書き出してみるのもおすすめです。
大切なのは、何をしたかだけではありません。
なぜ、それをしようと思ったのか。
何が自分をそこまで動かしたのか。
その行動のもっと前にある「発端」や「モチベーションの源泉」を掘り下げてみる。
そこがわかると、自分が本当に大切にしているものが見えてきます。
そして、それが社会人になってから、自分らしく働くための軸になるのだと思います。
編集後記
今回お話をうかがって、最も印象に残ったのは、「出会った人をすべて笑顔にする」という一貫した信念でした。
柔道着一枚を持って海外を旅した学生時代の経験から、人材事業、M&A後の組織づくり、そしてグループが掲げる300億円という目標まで、一見すると別々に見える話が、すべて「人との出会い」という一本の軸でつながっていました。
特に印象的だったのは、M&Aによって会社を受け継ぐことを、単なる経営権の取得として捉えていない点です。
これまで会社を支えてきた人たちの思いや文化を尊重しながら、新しい価値観を掛け合わせ、これまで以上に多くの人の可能性を広げていく。
その難しさと向き合いながらも、そこに「ワクワク」を感じている姿が印象的でした。
「自分の心に手を当てて、どう生きていきたいかを考える」。
就職活動に悩む学生にとって、この言葉はもちろん、これからキャリアを考えるすべての人にとっても、心に留めておきたい言葉なのではないでしょうか。