インタビュー

就活もせず、謝罪もせず。それでも前に進んできたのは、「できない自分」と向き合い続けたからだ

就活もせず、謝罪もせず。それでも前に進んできたのは、「できない自分」と向き合い続けたからだ
PROFILE
株式会社CFPコンサルティング 代表取締役
坂牧 毅

不良っぽいと言われる、意外な学生時代

単位を落として秋卒業に

早稲田大学商学部に在籍していた頃、勉強よりもアルバイトに力を入れていました。いくつも掛け持ちしながらお金を稼ぎ、大学には「適度に行き、適度に行かない」くらいの距離感で通っていた。で、1年生の前期はほとんど単位が取れなくて。必修英語を落としてしまったせいで、3月卒業ができないことになってしまったんです。

秋卒業になると、当時は就職活動の時期と合わなくて。必修英語は前期・後期に1つずつしか取れない構造だったので、早い段階で「就活ができない」状況が確定していました。

誘われてフェラガモ・ジャパンへ

当時のアルバイト先は、ラグジュアリーブランドのファミリーセールやイベント運営を幅広く手掛ける会社でした。正社員が極端に少ない会社で、長く続けてお客さんにきちんと認識してもらえるようになると、アルバイトでも現場の担当を任されるような環境だったんです。

そのお客さんの一つが、フェラガモ・ジャパン(Salvatore Ferragamo Japan)でした。当時、業界内では非常に有名なフェラガモ・ジャパンの幹部がいて、「将来自分で会社をやりたいなら、誰でも知っている社名は経歴として悪くないぞ」と声をかけてもらったんです。

起業するつもりは全然なかったんですが、まあそう言われればそうかもしれないと思って。就職活動は一度もせずに、フェラガモ・ジャパンに入社することになりました。

 

外資の壁にぶつかり、転職、そして爆発

意思決定はイタリアにある

フェラガモ・ジャパンでは非常に良い経験をさせてもらいました。仕事にも会社にも、ブランドにも情熱を燃やしていた。ただ、当然のことではあるんですが、商品ラインアップや事業の方向性といった核心的な意思決定は、すべてイタリア本社で行われます。

実績も出していたし、もっとこうしたらいいのに、という思いがどんどん強くなっていった。入社して2年も経たないうちに、上司に「辞めたいです」と話しました。その上司から「実績を積んで、いろいろと意見が通りやすいポジションまで上がれば変わるかもしれない」とアドバイスをもらって、頑張ってみたんです。

「私の意見はカス」とわかった

実際に実績を積んで、いろいろと意見の通りやすい立場で働けるようになって、わかったことがありました。「すごく当たり前のことなんですが、私の意見なんてカスだなって」。だったら経営の意思決定に近いところで働こう、と転職を考え始めるきっかけになりました。

転職先として目をつけたのが、デジタルマーケティング領域。フェラガモ・ジャパン銀座本店の顧客データを見ていると、IT系やデジタルマーケティング領域の若い男性客がすごく買い物をしていることに気づいていたんです。これからの業界だと感じて、韓国最大手のインターネット広告代理店として日本に進出したばかりだったイーエムネット(現在のイーエムネットジャパンの前身)に転職しました。

手帳を投げて辞めた

ただ、外資が嫌で転職したのにまた外資を選んでしまったのは、我ながらアホだったと思います(笑)。とはいえ、入社11か月で一つの部署のトップを任せてもらえるくらいのスピードで成果は出せた。韓国本社の社長と直接やりとりするポジションまでたどり着けたので、転職の目的自体は果たせました。

辞め方はあまりよくなかったんですが。4,000万円ほど回収できなくなった案件の責任を問われて、上司に怒られていたとき、部下との商談同行の時間になってしまった。「アポイントが入っているので、続きは帰ってきてからでもいいですか」と聞いたら、「まだ話が終わってない」と言われて。そこでブチ切れて、手帳を投げて席を離れました。

商談から戻ったら、別の上司に支社長室へ呼ばれて。「何の話かわかりますか?」と聞かれて、「辞めろとおっしゃるんですよね」と答えたら、「その通り」と言われた。そのまま辞めることになりました。

 

独立して見えてきた、強みと使命

法律が武器になる

株式会社CFP consulting(CFPコンサルティング)を立ち上げてから、事業として伸びてこられた背景の一つは「法律」だと思っています。医療広告ガイドラインや薬機法(やっきほう)、金融商品取引法など、他の会社が怖がるような領域で、私たちは自信を持って対応できる。

広告媒体の事前審査と必要に応じたリライティングを年間6〜7万件手がけてきたことで、膨大なデータが蓄積されています。審査を通せる会社は他にもありますが、このデータ量は私たちならではの強みです。

AI で LP を自動生成する

その蓄積を活かして開発したのが、AI による LP(ランディングページ)自動生成ツールです。商品ページの URL を入れてワンクリックするだけで、20分ほどで高精度な LP が生成されます。プロンプトを一切入力しなくていい。コンテンツの精度とエビデンスの質にこだわっていて、他社が出せないクオリティをめざしています。

ツール単体の販売に加えて、プロが品質をさらに高める BPO サービス、そしてそれらを活用したデジタルマーケティングサービスという3段階で提供しています。広告のリンク先ページの AB テストも、バナーを作るより簡単な工数とスピードで実行できる。これが他社との圧倒的な差になっています。

地方の中小企業に、世界を売る力を

このツールをなぜ作ったか、という話でいうと、人口減少の問題があります。アメリカを除く先進国の多くは人口減少フェーズにあって、人口が減るということは対面で物を売る機会が失われていくということです。

しかも人口減少は東京やロンドンではなく、地方から起きる。デジタルで物を売る力を持っていないまま対面の機会が損なわれたら、深刻な状況になります。苦手意識があってデジタル販売に着手できていない地方の中小企業が、誰でも高品質なものを手に入れられるソリューションとして私たちが展開できたら。人口が減る国内だけでなく、世界中に商品を届けられるように。それが私たちのビジョンです。

 

できない自分を選び続けること

目標設定から逃げない

一緒に働きたいのは、目標設定から逃げない人です。人間って、目標をクリアに設定することへの恐怖心が働きます。できないかもしれないから、曖昧にしようとする。でもその恐怖を持ちながらも、明確に設定して、1年後の目標から半年後・3か月後・来月・今月と逆算して行動を描き出し、やり切るコミットメントが強い人がいい。

目標に届くかどうか、本当のところは誰にもわかりません。でも、届くつもりで行動をセッティングして、やり切ることに意味がある。

届かなかった経験が価値になる

学生への一言として言えることがあるとすると、目先の報酬にとらわれないほうがいいと思っています。最終的に得られる報酬は PDCA の回転数と関連性が高い。だから、やり切ったのに目標に届かなかった、という経験はとても価値が高いんです。

なぜかというと、「なぜ届かなかったんだろう」という思考が発生するから。その問いを立て、行動を変えていくサイクルが、長期的な所得や社会的地位を決定づけると思っています。

できることをやり続けることは、5年後に価値が損なわれている働き方です。いつもできない自分でいられるように、自ら仕事を選んでいく。できない自分と向き合い、できるに変わっていくプロセスを楽しむ働き方を、ぜひしてほしいと思っています。

 

編集後記

坂牧さんのお話を聞いて一番印象に残ったのは、「できない自分でいられるように仕事を選ぶ」という言葉でした。私自身、学生起業を経験する中で、つい「得意なこと」「うまくできること」に逃げてしまうことがあります。でもそれは、5年後の自分の価値を削っているのかもしれないと気づきました。就活をしていない、謝罪をしなかった、外資が嫌なのにまた外資に入ったなど、経歴に「正解っぽくない」ことがいくつもあるのに、どれも坂牧さんの中では一本のストーリーとしてつながっていて、そこに勇気をもらいました。AI を活用して地方の中小企業の世界進出を支援するビジョン、これからの展開にとても注目しています。