中国資本の代理店で磨いた、結果にこだわる映像編集
新卒で入ったのは2社目にあたる広告代理店で、2022年から2024年ごろまで在籍していました。社内にはデザイナーもいましたが、自分でも中身がわかっていないと発注する側として面白くないと思ったんですよね。Adobe(アドビ)のようなツールを使えたほうがディレクションの精度も上がると考えて、そこは独学で身につけていきました。
この代理店は外資、なかでも中国系のクライアントが多くて、ガジェット系やゲームアプリ関連の案件をよく担当していました。そういうクライアントは、いわゆるインパクトのある編集を求めてくることが多かったんです。私自身もともと特撮が好きだったこともあって、ただ動画を編集して出すだけでなく、エフェクトや表現にこだわった映像を出すことに落ち着いていきました。
案件の獲得については、私自身が営業して取ってきた部分もありますが、そもそも母体が中国外資の代理店で、本社が上海にあったんですよね。日本向けの窓口として使われる流れがあったので、そこでお客さまにも出会えていました。
属人性の高さと向き合い、100点ではなく80点でいいと決めた
映像制作の現場でずっと課題に感じていたのが属人性の高さです。私ができるのはいいとしても、案件に入るメンバーによって仕上がりにばらつきが出てしまう。AIやCGも日々進化していくなかで、メンバーみんなのスキルや品質への目線をどう担保していくかは、今もずっと向き合い続けているテーマです。
そこで意識を変えたのが、全員が100点を出す必要はないという考え方です。私たちは映画会社の制作部隊を目指しているわけではないので、CGやAIはお客さまの結果を出すための一つのツールでしかない、というふうに目線をシフトしました。メンバーに対して「もっときれいな指示を作れないのか」と求める必要がなくなったんです。
その代わり、広告であればCPAのような結果が出ているかどうかを、映像表現の一部分だけでなく全体で見るようにしました。加えて、スキル面はテンプレート化できることに気づいて、After Effectsの社内制作事例をどんどんテンプレートとして保存しています。そこから「こう使えばいいのか」とメンバーが参照できるようにしたことで、品質のばらつきもかなり解決できるようになりました。
ビジョンは「広告代理店をぶっ壊す」こと
5年後、10年後に目指しているものを一言でいうと、広告代理店をぶっ壊すということです。制作の現場にいると、AIやCGはプロンプト一つできれいな映像を作れるようになってきています。プロダクトのCMに使うにはまだ課題もありますが、いずれ人力でなくてもよくなる領域は増えていくと考えています。
そうなったときに代理店が価値を出すべきなのは、制作そのものではなく、メーカーが自分たちの好きなように発信できる環境を作ることだと思うんですよね。そこで今取り組んでいるのが、クリエイティブ制作と広告配信の結果を一括で見られるダッシュボード型のプロダクトです。予算配分の判断材料を示したり、必要であれば弊社で制作して渡したりする仕組みになっています。
Meta、X、LINE、Google、SNSなど媒体をまたいで一括対応していて、SEO記事についてもGoogleサーチコンソールやGA4のデータをもとに、順位が落ちているクエリを見つけてリライト案を自動で作成する機能も持たせています。採用するとそのままCMS(コンテンツ管理システム)に反映される仕組みです。
すでに家電メーカーにも導入いただいていて、費用対効果の面でも手応えのある結果が出てきています。媒体ごとに個別最適化するのではなく、SNSも広告もメディアもすべての情報をAIに投げることで、精度の高い提案につながるというのが自分の考え方です。逆にいうと、代理店に月に数十万円、数百万円を払うことに合理性がなくなってきていると思っていて、それがメーカーの粗利を下げている一因にもなっていると感じています。だからといって代理店の配信メソッドすべてを否定するつもりはなくて、そのメソッドだけを提供して、メーカーが自分たちのものづくりに全力を注げるように応援できたらいいなというのが、今の自分のビジョンです。
採用は18歳のメンバーも活躍中
採用については今のところそこまで困っていなくて、今年もN高から新しいメンバーが入ってきました。18歳での入社でしたが、もうクライアントの前に立ってどんどん活躍してくれています。
学生に伝えたいのは、スキルより人間力
制作や広告代理店の仕事をしてきた立場から言うと、大事なのはスキルよりも人間力だと思っています。人間力とは何かを言語化すると、かわいがられる能力だと考えています。
具体的には、身近なところでは先輩に気に入られること、そしてインターンなどに出て社会人の方にもかわいがってもらうことです。ただし、何でもかんでもゴマをするという意味ではありません。自分についていたら得だと思ってもらえる人に、全力でかわいがられに行くというイメージです。打算的に聞こえるかもしれませんが、人間関係というのは結局、この人と関わったら得だと思ってもらえるかどうかが本質だと思っています。CGの技術や計算のようなハードスキルはAIに聞けば済む時代になってきているからこそ、これから差がつくのは人間力だと考えています。
編集後記
今回は合同会社TeamHENSHIN代表の村上瞭さんにお話をうかがいました。22歳という若さで代理店から独立し、自身の課題感をもとにプロダクトの構想まで語っていただく姿から、常に「本質は何か」を問い続ける思考の芯の強さを感じました。人間力という言葉を、かわいがられる能力とまで言語化して語ってくださったのも印象的で、学生の私自身、身の引き締まる思いです。貴重なお時間をいただき、ありがとうございました。