テレビの現場で学んだ、社会の仕組みと違和感
大学には行かなかった
学生時代の私は勉強を頑張るタイプではなく、どちらかというと友人との時間を優先する方だったと思います。ただ、大事なことはほとんどテレビから学んできた感覚があって、人の心を揺さぶるものに惹かれていたんですよね。高校卒業後は映像の専門学校に行くために上京、それが映像業界に入るきっかけになりました。小さな制作会社に入って、フジテレビの報道番組に常駐することになったんです。
月1、2日しか休めない日々
当時は今よりもハードルが低かったこともあり、思っていたよりすんなりとこの世界に入ることができました。とはいえ、現場は本当に激務で、1年のうちトータル3週間ほどしか休んでいない時期もありました。テレビ局に泊まり込んで、1週間ずっと局内で過ごしたこともあります。そういう激務のなかで、人付き合いや社会の仕組み、映像業界の仕組みを学んでいきました。同時に労働環境など「この業界、なんかおかしいな」と思う場面もいくつかあって、いつか自分が上の立場になったら、その仕組みを変えられる人間になりたいという思いをアシスタントの頃から持っていました。
22歳でディレクターに
学生時代にサボった分を取り戻そうと必死で頑張っていたこともあり、2年ほどでアシスタントからディレクターに昇進しました。当時としてもかなり早い方だったと思います。大卒1年目の同年代と並べば、自分は22歳くらいでも番組内では立場が上、という状態で死ぬ気で頑張っていました。
30歳、番組に籍を置いたまま起業
30歳になるタイミングで、当時所属していた制作会社を移籍しようと考えた時、番組のプロデューサーから「移籍するなら起業したら?」と背中を押され、ワイズを立ち上げました。プロデューサーからは「起業してもいいけど、まだ番組には残ってほしい」と言われていたので、番組に所属しながら、こっそりと他の仕事にも手を広げていきましたね。
テレビと企業映像、二足のわらじで築いた強み
報道番組は基礎を学べる場所
今は白金に事務所を構え、従業員28名ほどの会社になりました。報道・情報番組を軸にしつつ、企業映像やSNS広告など、映像なら何でも手がける会社になってきたと思います。ワイズは報道・情報番組を軸にしているのですが、報道・情報番組というのはあらゆるセクションの仕事を一人で担う傾向があるので、映像業界の経験を幅広く積むことができて、かつ一番基礎を学ぶことができると思っているんですよね。なので、新卒の人には報道・情報番組からスタートしてもらっています。
新卒採用は始めたばかり
新卒採用を大々的に始めたのは5年ほど前からです。今年は10名ほどの採用を目指していて、今14人ほどが最終選考に残っています。
帰属意識が薄れ、離職につながった時期
「番組の人」になってしまう問題
今は昔に比べると報道・情報番組は週に2日は休めるようになったり、休日に勤務しても代休をもらえるなど、業界の労働環境は劇的に良くなったと感じますが、そんな中でも苦労してきたことで言うと、社員がそれぞれ違う番組に配属されて、ワイズの社員というよりも「番組のスタッフ」という感覚が強くなってしまう課題がありました。厳しい現場の中で頼れる相手も番組の仲間に限定されてしまい、悩みを一人で抱えたまま離職してしまうケースが結構ありました。
若い頃の「この業界、おかしいな」と思ったことを思い出し、社員たちとこの課題について向き合いました。
手当と社内ツールで距離を縮める
そこで、企業理念「遊び心で楽しみを 独創性で驚きを ワイズの映像で新たな発見に出会う」から「遊び心と独創性手当」という制度を作りました。LINE WORKSの掲示板で他の番組で頑張っている社員の活躍を報告してもらい、3か月に1回グランプリを決めて手当を出しています。不満を拾いやすくするために人事担当も置いて、社内の風通しが良くなり、ここ2〜3年で離職率もだいぶ減ったなと感じています。
挑戦できるステージを、もっと増やしていきたい
映像業界が激変する時代に
今の課題は、社員が挑戦できるステージをもっとたくさん作ることです。AIが出てきて何十時間もかかっていた作業が一瞬でできてしまう時代のなかで、世の中に通じるクリエイターを育て、その人たちが目指す方向のステージをきちんと用意してあげたいと思っています。
集客とネットワークづくりが鍵
対応できるジャンルを増やすには、新しい人脈やノウハウが必要です。テレビ業界は紹介がすべてですが、企業映像の分野ではソフトバンクグループやソニーグループ、イートアンドホールディングスなどとお仕事をさせていただいていています。営業のプロの力も借り、地道にネットワークを広げています。
学生へのメッセージ
平均年齢27歳の会社
うちの社員は20代から30代が中心で、平均年齢は27歳くらいです。若手がきちんと意見を言えて、それを会社が汲み取れる会社だと思っています。
可能性しかない世代へ
学生の皆さんは、私から見れば可能性しかない存在です。若いうちの失敗は何をしたところで大きな傷にはなりません。もし映像に少しでも憧れがあれば、うちの会社で一緒にやるメンバーになってほしいですね。
編集後記
今回、山下さんのお話をお伺いして、激務の現場で感じた違和感を、自分が経営者になったときにきちんと仕組みとして解消しようとする姿勢がとても印象に残りました。「遊び心と独創性手当」のように、理念を具体的な制度に落とし込む発想は、私自身も学生団体の運営をするうえで参考にしたいと思います。可能性しかないと言っていただいた学生世代として、失敗を恐れずに挑戦していきたいと、あらためて背中を押していただいたインタビューでした。