インタビュー

「まあいいや」で終わらせない。三島から未来を仕掛ける2代目社長が、学生に伝えたいこと

「まあいいや」で終わらせない。三島から未来を仕掛ける2代目社長が、学生に伝えたいこと
PROFILE
株式会社シード 代表取締役社長
西島英弘

「会社を条件だけで選ぶのではなく、経営者が何を考え、何を実現しようとしているのかまで学生に伝えたい」

今回の取材の趣旨をそう説明すると、株式会社シード代表取締役の西島英弘さんから、逆にこんな質問が返ってきた。

「経営者の思いを知ることで、学生はどう変わると思いますか?」

取材する側だったはずが、気づけばこちらが考えさせられていた。

西島さんが学生に伝えたいのは、単なる就職活動のノウハウではない。

自分の頭で考えること。
自分の人生を自分で決めること。
そして、考えたことを行動に移すこと。

三島を拠点に、広告、建築、商業施設、店舗運営など、さまざまな領域で新しい事業を仕掛け続ける西島さんに、これまでの歩みと、これから社会へ出ていく学生へのメッセージを聞いた。

最初から「社長になる」と決めていたわけではない

株式会社シードは、西島さんの父が創業した会社だ。

幼い頃から父が経営する姿を見て育ったため、「いつか家業に関わるのかもしれない」という意識はあったという。

ただ、最初から会社を継ぎたいと思っていたわけではない。

大学では土木・都市計画を学んだ。

当時思い描いていたのは、世界を舞台に、自分の手で街をつくることだった。

「ディズニーランドのような場所を、自分のペンでつくってみたいと思っていました」

そんな西島さんが家業を継ぐ覚悟を決めたのは、大学3年生の頃だった。

父親との衝突や、自分自身の将来について考える時間を経て、最終的には「継がされる」のではなく、自分の意思で経営者になる道を選んだ。

ただし、大学卒業後すぐに家業へ入ったわけではない。

まずは外の世界を知るため、静岡新聞・静岡放送に入社した。

約8年間、会社員として経験を積んだ後、2012年にシードへ入社。2020年に父から経営のバトンを受け取り、代表取締役に就任した。

「事業承継」という言葉が注目される現在、西島さん自身も、まさにその当事者の一人だ。

就職氷河期に、あえてメディアの世界へ

西島さんが就職活動をしていたのは、いわゆる就職氷河期だった。

しかも専攻は土木。

そこから新聞社やテレビ局などのメディア業界を目指す学生は、当時としてはかなり珍しかったという。

フジテレビの最終選考まで進み、静岡新聞・静岡放送をはじめとするメディア企業から評価を受けた。

本人は笑いながら、

「理系の土木専攻で、学ランを着て面接に来る人間なんてほとんどいなかったから、目立ったんでしょうね」

と振り返る。

華やかに聞こえる一方で、入社後に見たメディアの世界は決して楽なものではなかった。

西島さん自身は営業職だったが、身近にいた記者たちは夜遅くまで取材を続け、早朝から警察署へ足を運ぶこともあったという。

それでも仕事を続ける背景には、「世の中に埋もれている事実を伝える」「おかしいことを正す」という使命感があった。

その姿を見て、西島さんは一つのことを学んだ。

会社を見るとき、給与や休日といった条件だけでは、その仕事の本当の価値は分からない。

何のためにその仕事をしているのか。

その組織には、どんな使命があるのか。

それを理解することの大切さだった。

広告、建築、運営。異なる仕事をつないで未来をつくる

現在、西島さんが率いるシードの事業は、一言では説明しにくい。

大きく分けると、広告・マーケティング、建築・設計、そして店舗などの直営事業がある。

一見すると、まったく違う仕事に見える。

しかし西島さんの中では、すべてが一つにつながっている。

キーワードは、

「三島から未来を仕掛ける」

だ。

例えば、ある場所に人を集めたいとする。

そのためには広告だけではなく、そもそも「人が行きたくなる場所」をつくらなければならない。

どんな施設にするのかを考える。
設計する。
どんな店舗に入ってもらうのかを考える。
出店者を探す。
施設が完成したら広告やイベントを企画する。

さらにシードの場合、自分たちで飲食店などを出店し、施設の運営にも関わる。

企画して終わり。

建物をつくって終わり。

広告を出して終わり。

ではない。

最初の構想から、その場所が実際ににぎわっていくところまで関わり続ける。

一般的には複数の企業が担当する仕事を、横断的につないで考えられることが、シードの特徴だ。

また、現在では一般的になった公共施設などの「ネーミングライツ」についても、大手広告会社とともに早い段階からその仕組みの導入に携わるなど、地方企業でありながら新しい仕組みに挑戦してきた。

同じ仕事が一つもない。だから難しく、面白い

西島さんに「仕事の難しさは何ですか」と聞くと、

「一つとして同じ仕事がないことですね」

という答えが返ってきた。

毎回、違う会社、違う場所、違う課題と向き合う。

前回成功した方法が、次の案件でもそのまま使えるとは限らない。

だからこそ、一つひとつ考え、新しい答えをつくる必要がある。

また、広告、建築、商業、運営など、それぞれの領域には専門知識が必要になる。

人材がスペシャリストとして育つまでには時間がかかる。

その難しさがある一方で、それこそが会社の強みになっていると西島さんは考えている。

「毎回新しいことにチャレンジするので大変です。でも、それをやり切ることが一番面白い」

地方にいるから、地方の仕事だけをする。

西島さんには、そんな発想はない。

むしろ地方だからこそ、新しいものを生み出す。

三島から日本へ。

そして世界へ。

「地方から未来を仕掛けて、ここから世界企業をつくりたい」

その言葉の根底には、会社を大きくすることだけではなく、「一緒に働く社員を幸せにしたい」という思いがある。

会社を「条件」だけで選ばない

話は、学生の就職活動へと移った。

就職活動では、企業名、給与、福利厚生、休日数など、分かりやすい条件に目が向きやすい。

もちろん、それらも大切だ。

ただ西島さんは、それだけで会社を決めることには慎重だ。

「その会社の経営者が何を考えているのか。会社がどこへ向かおうとしているのか。それも見た方がいいと思います」

会社には、それぞれ文化がある。

経営者が大切にしている価値観も違う。

その考え方と自分自身の目指すものが大きく違えば、条件が良くても、入社した後に違和感を覚える可能性がある。

逆に、会社の考え方に共感できれば、そこで働くこと自体が自分自身の成長につながっていく。

「どの会社なら得をするか」ではなく、

「自分はどうなりたいのか」

そこから会社を選ぶ。

学生に経営者の考えを知ってほしいという今回のメディアの趣旨に、西島さんが強く共感していた理由も、ここにあるのだと感じた。

答えをすぐ検索できる時代だからこそ、「考える力」が差になる

西島さんが学生に最も伝えたいことの一つが、

「自分の頭で考えてほしい」

ということだ。

今は、分からないことがあればスマートフォンですぐに検索できる。

これは、とても便利なことだ。

一方で、答えを知る前に「自分ならどう考えるか」という時間は、以前より少なくなっているのではないかと西島さんは考えている。

特に、新しいビジネスや、まだ世の中に存在していないものを生み出そうとするとき、検索しても答えは出てこない。

必要になるのは、想像する力や構想する力だ。

西島さんは、それを筋力トレーニングにたとえる。

「筋肉と同じで、考える力も使わないと鍛えられないんです」

何かを見たときに、

「なぜこうなっているんだろう」

「もしかすると、こういう理由なのではないか」

と一度自分で考えてみる。

人と会話するときも、相手が何を考えているのかを想像する。

そうした小さな積み重ねが、社会人になったときの思考力につながるという。

「まあいいや」は、自分で決めることを放棄する言葉

そしてもう一つ、強く印象に残った言葉がある。

「『まあいいや』に逃げない方がいい」

やるのか。

やらないのか。

西島さんは、どちらを選んでもいいと言う。

大切なのは、自分で決めることだ。

「今日はやらない」と決めるなら、それも一つの意思決定だ。

しかし、

「まあいいや」

と考えること自体をやめてしまうと、少しずつ他人に判断を委ねる癖がついてしまう。

その例として出てきたのが、

「今日、何食べる?」

という日常的な質問だった。

そこで「何でもいい」と言うのではなく、

「ラーメンが食べたい」

「寿司か焼肉がいい」

と、自分の中から一つの答えを出してみる。

一見すると小さなことだ。

でも、自分で決めるという習慣は、仕事でも人生でも同じだ。

大きな決断が必要になったときだけ、突然意思決定ができるようになるわけではない。

普段の小さな選択の積み重ねが、自分の人生を自分で選ぶ力になる。

花火は、画面ではなく現地で見る

最後に西島さんが学生へ伝えたのは、

「とにかく行動してほしい」

ということだった。

例えば花火。

スマートフォンでも、テレビでも見ることができる。

きれいな映像も残っている。

でも、実際に会場へ行けば、音が体に響き、空気が震え、その場にいる人たちの熱気を感じる。

画面越しでは分からないものがある。

それは仕事も、人との出会いも同じだ。

会いたい人がいるなら、会いに行く。

興味のある場所があるなら、行ってみる。

やってみたいことがあれば、挑戦してみる。

学生には、社会人よりも比較的自由に使える時間がある。

だからこそ、

「思ったら、まず動いてみてほしい」

と西島さんは話した。

編集後記

今回、株式会社シードの西島さんにお話をうかがいました。条件ではなく思いで会社を選んでほしいという言葉には、経営者としての実感がにじんでいて、とても印象に残りました。「まあいいや」に逃げず、自分の頭で考え、決めるというお話は、就職活動を控える身として、身につまされる内容でした。頭で考える力を鍛えることの大切さを、あらためて実感する機会になりました。

取材前、「社長へのインタビュー」と聞いて、会社の事業や経営について教えていただく時間になると思っていました。しかし実際には、こちらが質問するだけではありませんでした。

「あなたはどう思いますか?」「学生にそれを伝えることで、どうなってほしいんですか?」

西島さんから何度も問いを返され、自分自身が考える場面がありました。今回の取材で特に印象に残ったのは、考えること。決めること。行動すること。という3つです。将来どんな会社に入るのか。どんな仕事をするのか。どこで暮らすのか。これから学生である私たちには、さまざまな選択があります。正解を探すことばかりに意識を向けるのではなく、まず自分で考え、自分で決めてみる。そして、興味を持ったなら行動する。「まあいいや」で終わらせず、小さなことから自分の人生を自分で選んでいきたい。そう思わせてもらえた取材でした。