製薬会社の営業から、AIの世界へ
起業に興味があった学生時代
私、小林と、共同創業者で代表を務める佐々木という人間がいるのですが、厳密には私が最初に創業して、その半年後に佐々木が入ってきました。それで肩書きとしては共同創業者という形にしています。
大学時代は理系の学部に通っていて、その中で起業やスタートアップに挑戦する人たちを集めた専門プログラムにも所属していました。なので大学時代から自分で授業のようなものをおこなったり、ピッチセッションに参加したこともあり、もともとそういう分野にはとても興味がありました。AIも趣味で触っていましたが、当時は医療や製薬のような領域にずっと興味があったので、大学卒業後は東京でアステラス製薬株式会社という製薬会社に就職しました。そこでMRとして2年半ほど働いていたのが、まずの経歴になります。
愛知に戻り創業を決意
2023年から2024年ごろ、ようやくAIの画像生成や動画生成が日本に入り始めたタイミングで、もともとの知り合いだった佐々木と、この領域は面白いよねという話をするようになりました。まだやっている人も少なく、今後AIの動画がトレンドになっていくだろうという読みもあり、製薬会社を退職して地元の愛知に戻り、AI関係の会社を創業しました。最初はAIの画像や動画を制作する会社として始めたのが、いまにつながる経緯です。
3本の事業の柱
画像・動画をAIで制作
もともとは商品の宣材写真をはじめ、ありとあらゆる画像を作っていて、たとえば愛知県内アパレル企業様のAI人物モデルをずっと作らせていただいたり、チラシやオンラインショップ向けの画像を制作してきました。自動車会社さんのホームページ用に、撮影をせずロケ地のような写真を作らせていただいたこともあります。また、愛知県内喫茶店チェーン店様が期間限定で商品を発売された際には、メニューや看板に載せる画像も作らせていただきました。現在も愛知県内の観光施設や市バスの広告など、さまざまな画像を手がけています。
動画では、そのアパレル企業様のCMや、愛知でおこなわれたカーレースイベントのSNS向け動画なども制作しました。 もともと私が製薬会社で営業をしていた経験を生かし、案件をいただきながらこの事業を伸ばしてきました。
クリエイティブ研修事業
弊社では、クリエイティブの領域に特化した生成AI研修事業もおこなっています。よく研修を専門にされている会社さんも多いのですが、一般的な使い方や資料作成といった内容ではなく、広報やマーケティング、映像制作、広告代理店、制作会社など、よりクリエイティブな現場でAIの活用を進められる研修にしています。
研修を行いながら受託制作もする会社は、なかなかありません。内製化を促進すると仕事が減るのではないかと言われることもありますが、そこがむしろ強みだと思っています。現場でクリエイターとして作りきれない部分や、そこに時間を割けない部分を弊社が担うという棲み分けです。
絵コンテAIツール「StoryBuilder」
3つ目の事業が、絵コンテを作るAIのSaaS「StoryBuilder」です。映像や広告を作る際には、動画制作に入る前に、どの画像でどんな動きがあって、ナレーションはどんな内容で、時間は何秒かといった内容を横の表にまとめる絵コンテ資料が必ず発生します。もともとそれをAIで効率化したいという思いは創業時からありました。
いまはチャットGPTなどで動画の構成を考えることもできますが、人間が構成を考えることに意味があったり、よりクリエイティブなものが出てくるという声を、お付き合いのある映像制作会社さんからいただいていました。そこで、アイデアは人が考えて撮影も人がおこなうことを前提に、その間にある資料作成やイメージのすり合わせという面倒な作業だけをAIに置き換えられないかと考えたのが着想です。5か月ほどかけて、いろいろとヒアリングを重ねながら、AIも駆使してこのツールを開発しました。取締役の佐々木がもともと大手自動車関連の会社でAIを組み込んだシステムを開発していたこともあり、開発力もこの事業の強みになっています。
これからのビジョン
3つの軸を伸ばしていく
これからのビジョンとしては、まずこの3本の事業を成長させていきたいと考えています。映像制作や画像制作については、現場で作る感覚を磨き続けるためにも継続していきます。
AIをもっと当たり前に
私自身まだ26歳ですが、若い世代にとってAIはプライベートでも当たり前に使うものになりつつあります。一方で、いまの会社を支えている30代から60代の方の中には、情報漏洩や著作権が心配だという声もまだ多くあります。しかしAIはプロだけが使えるものではなく、誰でも使えるものなので、より多くの人にとって当たり前のものになり、それが効率化や新しいビジネスにつながればと思っています。研修事業では、AIの強みだけでなく安全性の面も理解してもらいつつ、可能性をより知ってもらいたいです。映像制作や広告代理店だけでなく、ドラッグストアチェーンの販促部署やペットホテルのマーケティング施策など、画像や動画を扱う部署であれば、業界を問わず広げていきたいと考えています。
絵コンテ市場の覇権へ
そして、いまいちばん伸ばしたいのが絵コンテのSaaSです。海外には少し事例がありましたが、日本ではSaaSとして絵コンテを作るサービスはまだあまりありません。まずは絵コンテそのもの、そして今後は構成を考えたり、動画まで作れるようにしたりといったアップデートを重ねながら、この市場で覇権を取っていきたいです。会社としても、売上や雇用をもっと大きくしていきたいという思いがあります。AIの進化のスピードに負けないよう、若さと行動量で他を圧倒できるように成長させていきたいです。
学生のみなさんへ
行動の差が結果を分ける
これは少し余談になりますが、自分には明確な原体験があります。LifeFit(ライフフィット)というジムをご存じでしょうか。いま全国にどんどん広がっているトレーニングジムで、代表の加藤恵多さんは、実は自分の高校の同級生です。高校では3年間ずっと同じクラスで、大学の頃も一緒に遊んでいました。ただ、加藤は大学3年生の頃からパーソナルジムを立ち上げ、いまでは全国チェーンとなり上場準備を進めるほどの会社になっています。
学力や頭のよさだけで見れば、当時は同じくらいだったかもしれません。でも、明確に違ったのは行動したかどうかです。大人になってから、その差を悔しく感じると同時に、とてもリスペクトもしています。
失うものは何もない
大学生の方にとって、AIを使うのはもう当たり前のことだと思います。だからこそ、経営者目線でひとつだけお伝えしたいのは、行動してみてほしいということです。自分も学生時代はモチベーションが高いほうでしたが、飲みに行ったりアルバイトをしたり、ごく普通の学生でした。将来こうなりたいという夢はありながら、なかなか行動には移せていなかったと感じています。
頭の中で考えていることと、実際に行動してわかることの情報量の差は、とても大きいです。大学生であれば失うものはほとんどありません。バイト代やお小遣い稼ぎ感覚で、小さな事業を作ってみるだけでも、AIと対話しながら考えているだけではわからないビジネスの仕組みが得られます。事業に限らず、やりたいことや夢がある方は、ぜひ行動してみてください。最初は失敗すると思いますし、自分自身も失敗だらけです。行動して学んで、また次に生かす。そのくり返しでよいのではないかと思います。
編集後記
今回、26歳という若さで3つの事業を展開されている小林さんのお話をうかがい、とても刺激を受けました。とくに印象的だったのは「描いていることと、実際に行動してわかることの情報量の差は大きい」という言葉です。学生生活の中で夢や目標を思い描くことはあっても、なかなか行動に移せないのが実情だと思います。だからこそ、失敗を恐れず一歩踏み出すことの大切さを、あらためて感じました。私自身も学生起業に関わる身として、行動量を増やしていきたいと思います。