インタビュー

「その人の得意を見つけるのが、僕の役目」―就活もせず映像の世界へ。sukima代表・住田崇が20代に伝えたいこと

「その人の得意を見つけるのが、僕の役目」―就活もせず映像の世界へ。sukima代表・住田崇が20代に伝えたいこと
PROFILE
株式会社sukima 代表
住田 崇

就職活動をせず、映像の世界へ

卒業して半年。「このままじゃ、まずい」

正直、大学時代は将来のことをほとんど考えていませんでした。授業にもあまり行かず、遊んでばかり。就職活動も一度もしませんでした。周りの9割くらいはきちんと就活をしていたので、何もしていなかったのは僕くらいだったんじゃないでしょうか。

なんとか卒業はできましたが、本当にぎりぎりでした。実家は東京で、周囲にはいわゆるエリートと呼ばれるような、堅実な道を進む人が多かったんです。そんななか、卒業後はアルバイトをしながら半年ほど、これといって何もせずに過ごしていました。さすがに「このままじゃ、人生やばいな」と思って。そこで初めて、自分が少しでも興味を持てるものは何だろう、と考え始めました。

始まりは、TBSのアシスタントディレクター

最初に飛び込んだのは、TBSのアシスタントディレクターの現場でした。比較的早くディレクターを任せてもらい、20代の大半をTBSの番組制作に費やしました。当時のTBSには、若い世代が中心になって作る番組が多かったんです。ADを2年ほど経験し、そのままディレクターへ。自分にとっては、とても恵まれたスタートだったと思います。

就職せず、フリーランスとして歩んできた

会社員になったことは、一度もない

僕は大学卒業後から、ずっとフリーランスです。TBSの現場にいた時期も、番組ごとに仕事を受けながら、20代を過ごしました。

個人では受けきれない仕事が増えていった

30代に入ると、仕事の受け方が少しずつ変わっていきました。番組に派遣されて参加するだけでなく、制作そのものを受託する案件が増えたんです。相手もテレビ局だけではなく、レコード会社や広告代理店へと広がっていく。そうなると、個人では受けられない仕事も出てきます。そこで、まずは個人会社をつくりました。今の株式会社sukimaとは別の、ほぼ個人事務所のような会社です。

若い世代に、技術と機会を渡したい

テレビの現場で感じた、若手が上がりにくい構造

今の会社をつくった一番の理由は、自分自身の経験にあります。テレビ業界には、今も封建的なところがあると感じています。若い人が実力を試す機会を得にくく、なかなか次へ上がっていけない。僕は若いうちから仕事を任せてもらえたことで、一気に成長できました。その一方で、力はあるのに機会を得られない人たちも、たくさん見てきたんです。

ちょうどYouTubeをはじめ、インターネット発の映像が大きく広がっていく時期でもありました。作り方も、届け方も、急速に変わっていく。その変化を感じるなかで、自分が現場で身につけた技術を、若い世代へきちんと渡したいと思うようになりました。

sukimaのメンバーは、ほとんどが若手

今のsukimaは、僕ともう一人を除けば、ほとんどが若いスタッフです。新卒で入る人もいれば、別の会社を経験してから加わる人もいます。ただ、この仕事は早く成長すればそれでいい、というものでもありません。人によって伸びるタイミングも違うので、中長期で見るようにしています。

Netflix『デスキスゲーム』の舞台裏

撮影以上に、準備に時間をかけた

Netflixで監督を務めた『デスキスゲーム いいキスしないと死んじゃうドラマ』は、とにかく準備がものをいう作品でした。流れを止めずに撮っていく構成なので、撮影前にどこまで詰められるかが勝負になります。編集も簡単ではありません。膨大な素材のなかから、何をどう生かすか。撮り終えてからも、かなり試行錯誤しました。

企画は、佐久間宣行さんのアイデアです。それを現場で実際の形にしていくのが、僕の役割でした。

世界に届ける前提でつくる

Netflixの作品は、最初から海外で見られることを前提につくります。翻訳への対応も含め、準備しなければならないことが本当に多い。映像や音楽の品質基準はもちろん、コンプライアンスの考え方も、テレビ局での制作とは違います。いつもの作り方を、そのまま持ち込めるわけではありません。

sukimaの現在地と、これから

仕事はある。だからこそ、次を考えたい

会社として、いま差し迫った大きな課題があるわけではありません。ありがたいことに、仕事にも困っていない。ただ、今ある仕事を続けるだけではなく、新しい感性を持つ人と組むことで、まだ見たことのない面白いものをつくれないか。そこはずっと考えています。

AIで、まだ見たことのない笑いをつくる

業務を効率化するためだけのDXには、正直あまり興味がありません。それよりも、AIをクリエイティブにどう使えるかが気になります。sukimaは特にお笑いを得意としているので、AIと笑いを掛け合わせたら、どんな表現が生まれるのか。まだ答えがないからこそ、考えること自体が面白いですね。

学生へのメッセージ

20代は、できるだけ多くのものに触れてほしい

学生の皆さんには、人との出会いや文化など、できるだけいろいろなものに触れてほしいです。特にクリエイターを目指すなら、その経験が自分の感度を育ててくれます。僕は、人生の方向は20代でほぼ決まると思っています。そこで夢中になれるものに出会えるか。どれだけ深くのめり込めるか。それが、やがてその人にしかない強みになっていくんじゃないでしょうか。

自分では気づけない「得意」がある

自分で得意だと思っていることと、他人から見て「それ、いいね」と言われることは、案外ずれているものです。誰かが評価してくれるのは、その人自身にはないものを、自分が持っているからかもしれない。そうやって周りの反応から自分の得意を見つけ、それを好きなことと掛け合わせられたら、進む方向が少しずつ見えてくると思います。

会社のスタッフを見るときも、同じです。僕らの仕事では、何でも平均的にできることより、何か一つに尖っていることのほうが武器になる。だから、その人の得意な部分を見つけて、できるだけ伸ばしたいと思っています。僕自身も若い頃、映像作品を一つの「パッケージ」としてまとめるのがうまい、と周りからよく言われました。でも、それは自分ではなかなか気づけなかった。だから今は、経験を積んだ側として、若い人がまだ気づいていない得意を見つけてあげることが、自分の役目だと思っています。

編集後記

今回、住田さんには、就職活動をせずに映像の世界へ飛び込んだ頃のことから、Netflix作品の舞台裏、20代をどう過ごすかまで、率直に語っていただきました。なかでも印象に残ったのは、「自分の得意は、自分では気づきにくい」という視点です。学生である私自身が日頃考えていることとも重なり、自分を見るときには、周囲からの言葉も大切な手がかりになるのだと感じました。貴重なお話を、ありがとうございました。